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INDIVIDUAL OLD CLOTHING STORE 「SCENE」が示す、古着店のあり方。

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他にはない “すっぱい” 感じのものが揃っている。

ー檜垣さんは「SCENE」の品揃えをどのように見ていますか。

檜垣:前の店よりもぎゅっと凝縮されていると思います。僕は服を買うためにリサイクルショップを回ったりするんですけど、リサイクルショップは意外と良質なものがたくさんあって、しかもそれが安く手に入るんですよ。だけど、「SCENE」はリサイクルショップや他の古着店ではなかなか手に入らないものが揃っています。ある意味、それって代えのきかない古着店でもあって、他にはないすっぱい感じのものが揃っているからつい買っちゃうんですよね(笑)。

ー檜垣さんらしい表現ですね(笑)。インターネットでたくさんのものや情報が手に入る時代に、古着店を続けて行くことって難しいことではないですか。

伊藤:人と違うことをやりたいって思うんですけど、違えば何でもいいって訳ではなくて、違うもののなかから本当に自分が良いと感じているものを出さないと意味がありません。アメリカで買付けをしている古着店はたくさんありますし、まったく同じ服が違う古着屋にあることもありますが、良い意味で勘違いして言うと、服は同じだったとしても僕が選んで、買付けた服を置いている店は絶対に「SCENE」にしかないので、そこに責任と楽しみを持ち、お客さまにも足を運んでもらいながら、他の古着店と違いを作っていくことが大切だと思っています。

ーどのような頻度でアメリカへ買付けに行っていますか。

伊藤:今のところは、2ヶ月に1度の頻度で、期間は3週間ぐらい。半分は決まった場所に行っていて、残りの半分は行ったことのない場所に行くようにしています。

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ー「SCENE」で扱っている古着の特徴として、デザイナーズブランドのものもありますよね。あえてそういったものも取り扱うようにしているのでしょうか。

伊藤:買い付けるときに、ブランド名が優先という訳ではなくて、まずデザインに反応してから、タグを見てブランド名を知るという流れですね。だからデザインに反応しなくて弾いているものもたくさんあると思うし、ブランド名はおまけのようなものとして捉えています。あと、〈ヘルムート ラング〉は以前から好きだったし、デザイン的にも優れていると思うので、意識的に集めたりしています。

ー以前から檜垣さんもデザイナーズブランドの古着に注目していると思いますが、それは何かきっかけがあったのでしょうか。

檜垣:実は2、3年前に「ゴーゲッター」で、伊藤さんが僕に似合いそうなコートがあるって見せてくれたものがきっかけです。〈マリテ+フランソワ ジルボー〉だったんですよ。懐かしいなと思って、そこからブランドものの古着に注目するようになりました。つい先日も、松本さんの実家に泊まって、古着を探すためにリサイクルショップを二人で回っていたんですよ(笑)。

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左は、ヘルムート ラングの1980年代のレザージャケット。右は、アンディ・ウォーホルが亡くなったときの記事をプリントした’80年代のTシャツ。

ー檜垣さんも伊藤さんも流行とは関係なく、他とは異なる角度からファッションを捉えているように感じます。例えば、ストリートだったり、ビッグサイズのものだったり、そういういったものはシーンとして広がり始めていると思いますか。

伊藤:90’sのストリートファッションに注目が集まっていることもあって、そういうテーストを取り入れているブランドは確実に増えていると思います。でも、そういうブランドのものを買っている人が、古着で似たようなデザインのものがあっても手に取ることって少ないと思います。そういう人は服ではなく、ブランドを重視してると思いますけど、僕はそこを求めていません。着たときに表面に表れない部分は、どうでも良いというか二の次ですね。

ー確かに90’sを感じさせるスタイルの人たちが増えてきている感じもするし、徐々にそういうテーストのものを作っている若手ブランドも増えていると思います。伊藤さんは自分でブランドをやろうとは思わなかったんですか。

伊藤:実は、「ゴーゲッター」で服を作ったことがあって、檜垣さんも買ってくれましたよね。自分が着たいものを作っていましたが、当然数を売らないといけなくて……。よく来るお客さんや友人など、自分に近い人たちが着るようになったら、今度は自分が着たくなくなってしまって(笑)。

ー向いてないですね(笑)。

伊藤:だからといって商売目的で割り切って、服を作れるタイプでもないので、向いてないっていうのはそのときに経験させてもらいました。古着だったら、基本的には1枚のものを、100人スルーしても次の1人が買ってくれれば問題ないので、僕はそっちをやりたいって思いました。

ー最後に、今後、目指していることなどがあれば教えて下さい。

伊藤:しばらくは今のスタンスのまま続けたいと思っています。こうなりたいというよりは、純粋に服を見ていて良いなって思える感覚を見失わずにいたいって思っています。

檜垣:いずれ伊藤さん、松本さんと3人で何かできたら良いなと思っています。

伊藤陽介
「SCENE」オーナー。1982年静岡生まれ。2007年から「ゴーゲッター」で働き始め、翌年から店長とバイヤーを務める。’15年、同店の休止をきっかけに退職し、同年7月、東京・渋谷に「SCENE」をオープンさせた。サイズ感やブランド古着など、ほかとはテーストの異なる商品構成が、ファッションが好きな人たちから支持を集めている。

檜垣健太郎
スタイリスト。1982年愛媛生まれ。2003年からスタイリストの二村毅氏のアシスタントを務める。’06年に独立後、ファッション誌やカタログ、広告、俳優、アーティストのスタイリングなど、性別を問わず幅広い分野で活動。’13年よりマネージメント事務所のlittle friends managementに所属。http://littlefriends-management.com

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SCENE
住所:東京都渋谷区桜丘町14-5 渋谷サニーヒル101号
営業時間:13:00〜21:00
電話:03-6416-1257
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