FEATURE |
INDIVIDUAL OLD CLOTHING STORE 「SCENE」が示す、古着店のあり方。

img002.jpg

Left : Yosuke Ito(SCENE) Right : Kentaro Higaki(Stylist)

濃いこと、面白いこと、リアルを嘘の無いように表現していく。

ーまず「SCENE」の話をする前に、伊藤さんと檜垣さんの出会ったのきっかけを教えて下さい。

檜垣:渋谷にあった古着店「ゴーゲッター」です。

伊藤:まだ檜垣さんがスタイリストの二村毅さんのアシスタントを務めていたときでしたね。

檜垣:そのとき、実はほとんど会話をしてなくて、二村さんから独立したあと、洋服のリースで行くようになってから伊藤さんと話をするようになりました。

伊藤:2008年、僕が「ゴーゲッター」の店長になったのをきっかけに、バイイングを始め、割と自由に店のことを任されるようになりました。そういう流れのときに、檜垣さんがリースに来てくれるようになって、少しずつ仲良くなっていきました。その後、檜垣さんがフォトグラファーの松本直也さんを連れてきてくれて、松本さんも来てくれるようになりました。

ー原宿でずっと独自のスタンスを築いていた「ゴーゲッター」が、今年の2月に閉じると聞いたときは驚きました。伊藤さんがインスタグラムの投稿で「より濃い事、面白い事、リアルを嘘の無い様に表現していく為に どう考えても古着が好きでたまらなく これからも古着を好きで居続ける為に この決断に至りました」と書いているのが印象的でした。

img003.jpg

伊藤:実は、去年の夏ごろ、会社と話をして、これからの方向性に完全に同意することができませんでした。かなり自由にやらせてもらってはいたので、本当に良い経験になり、本当に感謝しているんですが、店の移転計画やその後の方針など、逆に自由ではないこともあって、それは僕の進みたい方向と違いました。僕はずっと古着が好きで、好きだからこそずっと関わってきました。もちろん責任は伴うんですけど、やっぱりやりたいことしかやりたくない、やりたいことじゃないとできない性格なんです。おそらく、しんどいこともあるけど、やりたいこと、古着でちゃんとやるために、好きな古着に嘘をつかないために自分の店を出そうという決断に至りました。

ー檜垣さんは「ゴーゲッター」に何度も行っていたと思いますが、閉店することを聞いたときにどう思いましたか。

檜垣:こういう言い方は失礼かもしれないですけど、良かったんじゃないって思いました。伊藤さんが自分の店をやるっていうのは、今までとは違った考えも出てくるし、正直難しい面もあると思います。「ゴーゲッター」ではやりたいことが全部できなかったと思うし、とくに商品を見て感じていた部分もあるので、自分の店を出すって聞いたときは本当に良いことだと思いました。

ー伊藤さんは店を出すにあたって誰かにアドバイスを求めたりしましたか。

伊藤:最初は、店を出そうと思っても、何をしたらいいのかまったく分かりませんでした。古着店の知人や先輩などいろいろな方と話をするなかで、以前から尊敬している、原宿の古着店「ベルベルジン」の社長の山田さんと会う機会がありました。店を出すにあたって、準備する内容やその段取り、お金……具体的に説明してくれたのがとても有り難かったかですね。そこで初めて店を出すことに対してリアリティを持てるようになりました。

img005.jpg

ー今回取材をするにあたり、とくに気になったのが店を出した場所です。古着店の多い原宿や中目黒ではなく、なぜオフィスやマンションが立ち並ぶ渋谷・桜丘町を選んだのでしょうか。

伊藤:中目黒や祐天寺は初めから選択肢にありませんでした。「ゴーゲッター」のあったキャットストリート周辺は商業施設ができ上がっているので、とくに魅力を感じていなかったんですけど、僕が最も来ることの多い街、渋谷に店を出したいという思いは何となくずっと持ち続けていました。探しているなかで、桜丘町の物件が出たので、改めてこの辺りを歩いたときに、古さと現代的な要素が共存しているところをすごく気に入りました。

ー桜丘町は、古着店を始め、ほぼアパレルショップも無いから、客は他の店に寄って「SCENE」に来るという流れになり辛いですよね。

伊藤:今っぽい感じに順応しようとする店だったら原宿が良いと思うんですけど、別にそういうことは考えてなかったので、渋谷駅から数百メートルの距離であれば、何もなくても来たかったら来てくれるだろうという考えでした。それでも「ゴーゲッター」のときのお客さまが引き続き「SCENE」に来てくれたのは、本当に有り難かったですね。

ーオープンしてから数ヶ月経ちましたが、伊藤さんが思い描いたように来ていますか。

伊藤:商品の面では、自分のなかでも意外性のあるものが反応いいです。前の店でもビッグサイズのものはやっていたんですけど、売れ残っても良いと思って買付けてきた、デザイン的にぎりぎりのものも反応があります。逆に世間一般的に売れそうなものに反応が無かったり、予想外のことも多いので、今までよりも服のセンスやファッションに対する自分の中での美意識が高いお客さまが増えたように感じます。

img007.jpg
 |