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Only One. トッド スナイダーとタイメックスの蜜月

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〈タイメックス〉は、アメリカンスタイルの象徴。

- 今でこそ、あなたと〈タイメックス〉の縁の深さは誰もが知るところですが、初めてブランドと出会ったのはいつ頃なのでしょうか?

〈タイメックス〉は、僕の父や祖父が仕事でも家でも常に愛用していたので、子どもの頃からとても身近な存在でした。

- その時計を譲り受けて使っていたとか?

残念ながら、そういうわけではないんです。実は、大学を卒業するまで腕時計を付けたことがなくて(笑)。それまでは特に時間を気にすることなく生きてきたので、単純に必要なかったんですよね。でも、社会人になってからはそういうわけにもいかないので、自ずと興味を膨らませていきました。加えて、ファッションに携わるようになってからヴィンテージウォッチの魅力に取り憑かれてしまって、以来、いいものに出会っては個人的にも蒐集するようになりました。もちろんその中には〈タイメックス〉のものもありますよ。

- コレクションは何本くらいあるんですか?

パッと思いつかないくらいたくさん(笑)。でも、ヴィンテージウォッチはフェイスが小さいので、自分で身に付けるためというよりは資料として所有しています。普段使っているのは〈ロレックス〉と、今も着けている〈タイメックス〉の時計がメイン。その日の気分やスタイルに合わせて、この2本をローテーションしています。

- あなたにとっては〈ロレックス〉と並ぶ選択肢になっているんですね。

おっしゃる通り、自分にとってはどちらも重要な存在なんです。特に〈タイメックス〉に関していえば、アメリカンスタイルを見事に象徴している上、とても機能的であると同時に何とも言えない味わい深さがある。僕もアメリカ人なので、余計にそういった部分に魅力を感じてしまいますね。

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- ちなみに今着用されているのは?

2007年頃、僕がまだ〈Jクルー〉に在籍していた時に「リカーストア」のために制作したモデルです。〈レッドウィング〉のブーツや〈コンバース〉のジャックパーセルといった、アメリカを象徴するアイコニックなブランドとコラボレーションしたいという想いがあって、〈タイメックス〉もそのひとつでした。アメリカブランドの時計というと〈タイメックス〉以外思いつかなかったんです。例えば、〈ハミルトン〉は元々はアメリカのブランドですが、今は製造拠点をヨーロッパに移していますし。他にヨーロッパで〈タイメックス〉に対抗し得るブランドがあるかといえばそうでもない。僕にとっては、本当にアイコニックでオリジナルな存在なんですよ。

- どんなところにこだわったんですか?

全部です(笑)。というのも、これは完全なるテーラーメイドで、型から全て作ってもらったスペシャルなモデルなんです。この時計ひとつのために、タイメックスの人たちがあらゆる手を尽くして、細かなパーツに至るまで僕の希望を叶えてくれました。ケースの色から形、数字の色やフォント、あとは箱や中に付属の説明書まで、すべてゼロから作りました。それぞれのパーツに対して「こうでなくちゃ」という明確なヴィジョンがあったので、僕のオーダーを忠実に形にするのに相当苦労したそうです(笑)。

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- ヴィンテージウォッチにも遜色ない雰囲気を感じます。

さっきも言ったように、ヴィンテージウォッチが本当に好きなんです。でも昔の時計は、ケースが小さいものが多い。僕が特に好きなのは40〜50年代のミリタリーウォッチなんですけど、その時代の要素を取り入れながら今日的に使いやすいモデルを目指しました。

- そこまでこだわると、制作にも結構な時間がかかったんじゃないですか?

5,6回のミーティングを経て、トータルで1年半くらいかな。ちなみこれを作っている時に一番議論となったのは、〈Jクルー〉のロゴを入れるか入れないか。〈Jクルー〉はあくまでファッションで知られていて、時計ブランドではない。だから、“時計といえば〈タイメックス〉”というリスペクトの意味も込めて、個人的にはロゴは入れたくなかったんです。よりオーセンティックでピュアで、オリジナルなものにしたかった。アメリカでも日本でも、いまだにこの時計を着けている人をよく見かけるので、その判断は間違っていなかったんじゃないかな。

(次ページ)〈トッド スナイダー〉としての関わり方。

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