「作ることは活動であり、それらには独自の価値がある」。そう考えるのは、英国の伝統的なワークウェアをベースにしたメンズウェアブランド〈ワーク ノット ワーク〉。英国のクリエイティブ集団「TOMATO」のサイモン・テイラーがディレクションを務め、独自の目線で仕事着とファッションをミックスし、着る人の個性を紡いできた。仕事着としての〈ワーク ノット ワーク〉の魅力とは? ブランドと関係の深い三人の「作る人」に話を訊いた。
Photo_Shin Hamada
Text_Mayu Sakazaki
坂口直顕
帽子職人、帽子ブランド〈サラヴァ〉デザイナー。国内帽子アトリエにて職人に師事し、帽子製作を学ぶ。制帽やオーダーメイド帽子、舞台衣装の帽子製作に携わった後、2013年にオリジナルブランド〈サラヴァ〉をスタート。〈ワーク ノット ワーク〉店舗では毎年ポップアップイベント「ハット ノット ハット」を開催し、別注アイテムなども製作している。
仕事着も、道具のように身体に馴染ませていく。
「帽子職人になったのは、身近に靴を作っている友人がいたから。ものづくりに興味を持ちはじめて、自分で作るなら帽子だろう、と思った。帽子っていわゆる画竜点睛というか、仕上げにかぶって初めて完成する世界観がある。何か、不思議な力のようなものを感じていたんです。それから職人の世界に入って10数年たちますが、やはりずっと身体を動かして作業するので、仕事着は動きやすいものがいい。すっきりしていて頑丈で洗えて、サスティナブルなもの。どんどん年季が入っていくというか、道具と同じで自分の身体に馴染ませていくような感覚かもしれません」
〈ワーク ノット ワーク〉の精神に惹かれるんです。
「〈ワーク ノット ワーク〉の店舗では何度かポップアップイベントをやらせていただいて、一緒に帽子も作りましたね。大量に作るのではなく、自分の目の届く範囲でこだわったものを作ろうというアーツ&クラフツな精神が、僕が作れるものとちょうどピタッと合った。とても自由なのに、一本芯が通っているというか、職人気質。出来上がったものに自然と品格が表れてくるブランドだと思うので、そういうところが大好きなんです。僕自身も、自分の手で作った商品は、品が宿るものであってほしいなと思うので」
遊び心があって贅沢な、大人のワークウェア。
「〈ワーク ノット ワーク〉には、仕事着として着ているようなラフなものから、仕事が終わって1枚羽織ればそのまま社交の場でバチっと決められるようなものもある。今日着ているようなスーツラインも堅苦しくなくて、ベレー帽なんかを合わせられるんですよね。男心をくすぐるというか(笑)、洋服で遊ばせてもらっているという感じ。布地のこだわりなんかも色々なアプローチがあって、いつもハッとさせられるんです。他にもチェックやモノグラムのセットアップ、コットンセーターや麻のパンツを何年も着ています。普遍的で長く使い続けられるデザインというのも、ワークウェアとして魅力的ですよね」
温故知新という美意識。
「帽子の素材っていうのは昔から割と決まってしまっていて、冬はウールやアンゴラ、夏だったらストローや綿。もっと素材から開発したり、新しいアプローチができたらと思っているんです。時間もお金もかかりますが、面白いものが出来上がるかもしれない。〈ワーク ノット ワーク〉の生地使いを見て影響を受けることも多いです。また一緒にものづくりができるならば、例えば過去のコレクションの裏地に使われた生地を帽子に組み込んだりしてみたい。ワークウェアもそうですが、古いもの、伝統のあるものには美意識がありますよね。そういうことが感じられるブランドなんだなあと、改めて思います」
HOME SPUN 2 BUTTON JACKET ¥60,000+TAX
WORK NOT WORK×BROWN’S BEACH COVERT CLOTH WORK VEST ¥32,000+TAX
HOME SPUN SLIMFIT TROUSER ¥26,500+TAX
KIDS LOVE GAITE DOUBLE MONK SHOES ¥48,000+TAX
坂口直顕さんの仕事道具。
「お師匠さんから譲っていただいた小林アイロンという、今はもうなくなってしまったメーカーのものをずっと使っています。布に霧吹きをかけて当てていって、蒸して柔らかくするんです。電気のスチームアイロンをアナログでやるような感じですね。これとミシンは、僕の生命線です(笑)」
「これは、布地を裁断するときに使う革すき包丁です。傷まないように手入れをしながら使います」
「型入れという作業をするときに、腰のあたりがすごく汚れるので、エプロンをすることも多いですね」
WORK NOT WORK URBAN RESEARCH 阪急メンズ大阪店
住所:大阪市北区 角田町7番10号 阪急メンズ館 5F
電話:06-6313-8757
WORK NOT WORK URBAN RESEARCH 静岡店
住所:静岡市葵区 鷹匠1-1-1 新静岡セノバ1F
電話:054-266-7164
※9月11日オープン
WORK NOT WORK URBAN RESEARCH KITTE丸の内店
住所:東京都千代田区丸の内2丁目7番2号 JPタワー KITTE丸の内1F
電話:03-6269-9170
WORK NOT WORK URBAN RESEARCH マルヤガーデンズ店
住所:鹿児島県鹿児島市呉服町6-5 マルヤガーデンズ 1F
電話:099-295-0111
WORK NOT WORK
「TOMATO STUDIO」のサイモン・テイラーによるクリエイティブディレクションのもと、2012年に誕生したブランド。2013年に初のフラッグシップショップがKITTE丸の内店内にオープンし、2014年にアーバンリサーチ表参道ヒルズ店にコーナー展開、2015年に鹿児島マルヤガーデンズと続く。そしてこの夏、8月29日に阪急メンズ大阪店がオープン。9月11日には新静岡セノバの1階にもオープンも控えている。