フイナムとスタイリストが考える。あのスターがサングラスを掛け替えたなら。| HOUYHNHNM SUNGLASSES CLUB フイナムとスタイリストが考える。あのスターがサングラスを掛け替えたなら。| HOUYHNHNM SUNGLASSES CLUB

時代時代を彩ったあのミュージシャンや
映画・ドラマで人気を博したキャラクター。
それぞれの人柄やスタイルととも
印象的なサングラスが目にこびりついて離れない。
でも、そんなスターたちのサングラスを、
いまの感覚でスタイリングするなら
どんな一本を選ぶでしょうか。
スタイリストの荒木大輔さんと
あれやこれやと言い合いながら、一緒に考えてみました。

Illustration_Hisayuki Hiranuma
Text_Shogo Komatsu
Edit_Shun Koda

PROFILE

荒木大輔

1976年生まれ。スタイリスト熊谷隆志氏に師事した後、2001年に独立。メンズファッション誌を中心に、広告、俳優、ブランドカタログなどのスタイリングを手掛ける。自身もサングラスを愛好している生粋のサングラスラバー。

フイナム:まず聞きたいんですけど、荒木さんはアイウェアを使ってスタイリングする時や自分で掛ける時、どう選んでいますか?

荒木:アイウェア次第でコーディネートの雰囲気が変わるので、遊ぶのか、落ち着かせるのかをまず考えますね。靴を選ぶ感覚と同じかもしれない。

フイナム:アイウェアがコーディネートの最後の決め手になるんですね。

荒木: そうですね。ここ数年、アイウェアの需要がすごく高まっているように感じているんですよ。メガネをファッションアイテムとして取り入れる人が圧倒的に増えたし。スタイリングする時は、必ずメガネもサングラスも準備しています。

フイナム:特にメガネは市民権を得ましたね。では、アイウェアのイメージが強い偉人を意識してスタイリングを組むことってあります?

荒木:もちろん、ありますよ。誰々っぽいって、オマージュの要素をプラスしてみたり。例えば、フレームが太いオーバルのサングラスは、絶対的にカート・コバーンのイメージですからね。それを意識せざるを得ないっていうか。

フイナム:今回はその固定観念を覆すような企画なんです。アイウェアのイメージが強い偉人が、「いまサングラスやメガネを選ぶなら」と想像していただいて、どれが似合うかを荒木さんと話せたらと思ってます。では、ちょうど話に出たカート・コバーンから。

01
カート・コバーン

荒木:カートが掛けているホワイトのオーバルのサングラスは、〈クリスチャン・ロス〉のアイウェアですよね。

フイナム:それをパジャマシャツやモヘアのカーディガン、ダメージデニムに合わせてテイストをMIXしているのは、今っぽい感覚なのかな、と思います。

荒木:そうですね。仕上がってる。でも、正直そのスタイルが正解かと言ったら、そうとは言いきれないんですよね。カートのキャラクターがあるから成立しているのであって、自分に置き換えたらかなり難易度高いんですよ……。でも、その違和感を狙っていたのかもしれないですよね。本人はそんなこと気にしてなかったのかもしれないけど、かなりの上級テクニック。見事にファッションアイコンをつくり上げましたよね。

フイナム:確かに。自分に置き換えたら、このサングラスのチョイスと、そのスタイリングは難しいです。いまカートにサングラスを合わせるなら、どれがいいですか?

荒木:こういうのもいいね。

Oliver Peoples「TK-3」

フイナム:〈オリバーピープルズ〉のダブルブリッジですね。

荒木:カートの髪や肌の色に馴染みやすいレンズカラーだと思います。ツーブリッジは、今のファッション感覚に合っていると思いますし。

フイナム:そうですね。これをカートが掛けていても違和感はないです。

荒木:でもこっちもいいね。

Oliver Peoples「BOUDREAU LA」

フイナム:クリアフレームって、最近人気ですよね。

荒木:フレームもレンズも、トランスペアレントが流行っているんですよ。いま、マスクを付けて外出しなきゃいけなくなったから、なおさらクリアのほうが馴染むと思うんです。

フイナム:マスクに濃いカラーのレンズだと怪しくなっちゃいますからね(笑)。

荒木:クリアレンズだと、だいぶモダンな雰囲気になりますね。

フイナム:レンズ越しに目が見えて、印象が変わりました。〈クリスチャン・ロス〉のサングラスよりも個性が強くないから、現代的でファッショナブルな感じがします。

荒木:そうそう。あと、このスタイリングで言えば、帽子のインパクトが強くて、要素が多いから、レンズとフレームがブルーのワントーンによって、0.5くらいの引き算ができたと思います。

フイナム:確かに。クリアフレームでワントーンっていうのがいいですね。そして、ブルーがブロンドの髪色と合っています。

荒木:ブルーって万能だと思うんですよ。僕もブルー系のレンズやネイビー系のフレームを持っていますが、意外と掛けやすくて。僕の場合、モノトーンのシンプルなスタイリングが多いから、サングラスの色味でポイントを作っています。

02
『タクシードライバー』のトラヴィス
(ロバート・デ・ニーロ)

フイナム:次は、ロバート・デ・ニーロが演じた、映画『タクシードライバー』のトラヴィス。

荒木:M65を着て、モヒカンのヘアスタイルにメタルのスクエア型を掛けたスタイルが印象深いですよね。

フイナム:やっぱりカッコいい! トラヴィスのサングラスを付け替えるなら?

荒木:ラウンドのサングラスは似合うと思うけど、あんまり印象が変わらないかも。そしたら、これかな。

Ray-Ban「STATE STREET」

フイナム:〈レイバン〉の一本ですね。べっ甲(ハバナ)風のデザインなので、シックで大人びていますよね。

荒木:フレームが太くて、しっかりと存在感がある。

フイナム:クラシックだけどモダンな印象ですね。

荒木:シンプルに見えるけど、重厚なフレームが効いているから面白そう。これはインパクトが強いように見えるけど、実際に掛けてみるとしっくりと馴染むもんですね。

フイナム:荒木さん、似合ってますよ!

Ray-Ban「STATE STREET」

荒木:あ、色違いでグリーンもある。M65がグリーンだから、同色のフレームで合わせたほうが似合いそう。

荒木:カッコいいですね! 洒落てる。

フイナム:M65とカラーを合わせたのもいいし、モヒカンとマッチしています。

荒木:このサングラスのデザインがいまの気分にマッチしているんじゃないかなと思います。「STATE STREET」は、主張が強いデザインだけど、ハズシってほど外れずコーディネートに収まるから、他のアイテムと調和させるのがいいんじゃないかな。

フイナム:このカラーリングとサイズは、似合う人が多いような気がします。

荒木:そうですね。フレームが大きいから、顔の形とか大きさを気にしなくてもよさそうです。

03
ジョン・レノン

フイナム:じゃあ、次はメガネで。ジョン・レノンはどうでしょう?

荒木:メガネからサングラスに変えるなら、これくらいハズしてもおもしろいと思う。

OAKLEY「EYE JACKET REDUX」

フイナム:一気にスポーティになりますね! ジョン・レノンがランニングしている時は、こんな感じのサングラスを掛けていたかも(笑)。

荒木:いま、このくらいスポーティなモデルをファッションに落とし込んでいる若い世代が多いですし。ジョン・レノンも洒落た感じになると思います。

フイナム:荒木さん自身がこれをコーディネートで使うなら、どう取り入れますか?

荒木:とにかく自由に組み合わせること。カテゴリーとかセオリーとかを考えないほうがいいですね。MIXさせたスタイルに合わせるとハマると思います。

フイナム:なるほど。おっしゃる通り自由な感覚でコーディネートを楽しんでいる人が増えましたよね。これだったら、ジャケットと合わせて、サングラスとの振り幅を広げたら、いまっぽくなりそう。

荒木:とにかく個人的に、これを掛けているジョン・レノンを見てみたい! すごくカッコよくなると思う。もしジョン・レノンが生きていて、彼のスタイリングをやらせてもらえるならフィッティングで一旦掛けてもらいたい。好きそうなアイウェアをもちろん持って行くけど、これも一応(笑)。

フイナム :「好みじゃないと思うけど、とりあえず一回だけ!」みたいな(笑)。

荒木:そうそう(笑)。

 

フイナム:スポーティなジョン・レノン、いかがですか?

荒木:似合ってると思います! でも、本当にジョン・レノンがこれを好んで掛けていたら、音楽性が違っていたかもね(笑)。

 

フイナム:ハードな音楽を作りそう(笑)。柔らかな印象から、ガラッと変わりましたね!

荒木:アイウェアを替えるだけで、与える印象がここまで変わるのは面白い。

 

フイナム:そうですね。自分の印象をコントロールできるから、なりたい自分に変身できるのも、アイウェアの魅力だと思います。では、これを掛けたジョン・レノンなら、どんなコーディネートにしますか?

荒木:例えば、黒のカチっとしたスーツに、バンドカラーの白シャツを合わせたノータイ。初期のビートルズみたいな感じ。そこに、〈オークリー〉の「EYE JACKET REDUX」のスポーティな要素が混ざって、カッコいいと思います。

 

フイナム:想像できます。確かにカッコいい。

荒木:日本人がそのコーディネートをやったら、内田裕也さんみたいになりそう。

 

フイナム:確かに! エッジが効いたスタイルになってカッコいいですね。

04
『レオン』のマチルダ
(ナタリー・ポートマン)

フイナム:女の子はどうでしょう? 『レオン』のマチルダ(ナタリー・ポートマン)。かわいいですよね。オーバーサイズのMA-1とチョーカー。そしてラウンドのサングラス。1994年に公開された映画ですけど、スタイリングに古さを感じません。

荒木:完璧なコーディネート。超かわいいです。今もマチルダを意識している女の子多いですもんね。

フイナム:イメチェンするなら、どんなサングラスですか?

荒木:ラウンドタイプだから、オクタゴンとかも良さそうだけど。これかな。

Ray-Ban「OCTAGON」

Ray-Ban「NINA」

フイナム:キャットアイですね。

荒木:マチルダは強い女性なので、キャットアイのエッジが効いた感じがマッチすると思います。

フイナム:キャットアイは女性的な印象が強いですけど、メンズが掛ける時に注意することってありますか?

荒木:フレームに厚みがあって、目尻の角度が上がりすぎていないものを選ぶと、すごくカッコよく仕上がるんです。僕もよくメンズモデルのスタイリングに使っています。

フイナム:サングラスを替えてみたマチルダがこちらです。

荒木:やっぱりかわいい。

フイナム:個人的にですけど、キャットアイのほうが好みです。狙いどおり、芯のある女性らしさが際立ちましたね。

荒木:このサングラスに替えても違和感がないし、現代でも十分に通用するスタイリングかと。帽子はなくてもいいかもしれませんね。

フイナム:帽子を外したら、なおさら、いまっぽくなりそう。

05
松田優作

フイナム:日本人はいかがでしょう? 『探偵物語』のときの松田優作。探偵とは思えないほど、キャラが立っています。

荒木:探偵なのに、赤いシャツに白ネクタイってめちゃくちゃ目立つ(笑)。

フイナム:確かにそうですね(笑)。『ブラックレイン』に出演したときもサングラスでしたが、このときとは全然印象が違いますね。

荒木:そっちもカッコいい。角刈りとサングラスが似合っているんですよ。『探偵物語』のサングラスを付け替えるなら、これかな。

フイナム:意外! ゴーグルタイプですか。

OAKLEY「Sutro (Asia Fit) Origins Collection」

荒木:意外性があるけど、似合いそう。面長な顔の形とヘアスタイルに合っていると思います。キャラクターが強いから、これくらいインパクトのあるサングラスでもいいんじゃないかな。

フイナム:すごくスポーティですね。軽いし、ズレ落ちにくいから、探偵としては使いやすいかもしれないです。ベスパに乗るときにぜひ使って欲しい。

フイナム:想像以上にハマっていますね!

荒木:多分、しっかりとキャラクターが確立しているから、このくらいインパクトの強いサングラスでも成立するんだと思います。

フイナム:なるほど。本当にカッコいいですね。

荒木:あと、フレームとネクタイが白でリンクしているのもいいですね。

フイナム:正直、スーツとハットに合わせて成立するのは優作さんだからこそだと思うんです。このサングラスを日常的な着こなしに合わせるなら、どうすればいいでしょう?

荒木:僕らが着用するなら、シンプルな装いに合わせたほうがいいと思います。

フイナム:サングラスを主役にするんですね。

荒木:モードに寄せながらハズシで使うとまとまるはず。

フイナム:それなら僕でも合わせられそうです。

06
マイケル・ジャクソン

フイナム:じゃあ、最後にマイケル・ジャクソンをお願いします。80年代、全盛期のマイケル。

荒木:マイケルは悩みますね! この年代の彼に合わせるなら、インパクトのあるものか、めちゃくちゃ真面目系にするか。どっちだろう……。

フイナム:悩ましいところですよね。

Oliver Peoples「CARY GRANT 2 SUN」

荒木:ブロータイプだとインテリっぽくなって、印象がガラッと変わりますね。実際に掛けているところを見てみたい。

フイナム:これは〈オリバーピープルズ〉のもので、イギリスの俳優ケーリー・グラントのモデルだそうです。マイケルが掛けても、クラシックな印象になってダンディな雰囲気が増しますね。

荒木:顔の形に合うから、似合うと思うけど、もともとの彼にあるイメージと真逆だから、ギャップがあって面白いと思います。

フイナム:最近、ブロータイプのサングラスってスタイリングで使うことはありますか?

荒木:これはクラシックな雰囲気があって使いやすいけど、今だったら、もっと遊びを効かせたタイプのほうが使う頻度が多いかな。でも、あと少し経ったら、またクラシックなモデルの気分になると思います。

フイナム:このマイケル、渋くていいですね。

荒木:ジャズミュージシャンっぽくなりました。

フイナム:ジョン・レノンと同じく、このアイウェアを好んでいたら音楽性が変わりそう(笑)。

荒木:少し落ち着いた曲になりそうだね(笑)。

フイナム:このクラシックなサングラスでも、きらびやかな衣装と合っています。

荒木:そうですね。この年代のマイケルなら、こっちのサングラスでもアリ。

フイナム:Beforeのサングラスはスターらしさを感じますけど、〈オリバーピープルズ〉の「CARY GRANT 2 SUN」に替えると男らしさが増したような気がします。

荒木:クラシカルでカッコいいですね。しっくり合ったと思います。

フイナム:6人のスターのアイウェアを掛け替えていただきましたが、いかがでしたか?

荒木:最初は無茶振りな企画だなって思いましたけど(笑)、選んでみると楽しかったし、イラストにしてもらって見てみると、意外とハマっていてよかったです。

フイナム:たくさんのサングラスの中から想像して選ぶのが楽しかったですね。

荒木:それぞれのキャラクターが完成しているから、アイウェアを替えてみようなんて発想がありませんでした。イメージに固執せず考え直すことは大事って、改めて感じられてよかった。

フイナム:まさにその通りですね。不変的な良さはもちろんありますけど、何事もステレオタイプな考えに縛られず、柔軟な発想を持って楽しむことが大事なのかもしれません。

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