vol.3
時しらず ディレクター 市之瀬智博
ハイ・ストリートの向かう先、時しらずディレクター、市之瀬智博という個性
ハイファッションとストリートの融合を標榜し、常に周囲の耳目を集めてきた「時しらず」。展開を代官山店のみに縮小し、原点回帰を目指す同店ディレクターの市之瀬氏に話を聞きました。
今までは急ぎすぎてたのかも知れない
―様々な媒体で「時しらず」の生い立ちというか、出店までのストーリーは語られてきたと思うので、今回は今後のことを中心に聞いていければと思います。まずは、各地方にあった店舗をクローズドして代官山店のみになったことについてなんですが、元々そんなに手広くやるのは本意でなかったとかあるんですか?
市之瀬智博(以下市之瀬、敬称略):いや、店舗を広げたかったんだよ。やっぱり広げなきゃならないものだし。ただ1年毎に出すようなペースだったから、振り返ってみると急すぎたのかも知れないってのはあるよね。
―それはどんな理由で?
市之瀬:まず渋谷、そんで名古屋だったんだけど、すぐに大阪ってなったからね。事業計画もあったし1店舗で利益を上げるのかハコを増やすのかみたいな選択肢だったから。会社に迫られたってのもあるかな...。
―今回は一応、ノーカットで行くんで。何なら校正もナシで。
市之瀬:出た無修正! まあいいよ。どんどんやってちょうだいよ。
―地方店のカラーというか乗りってのは、その土地に合わせた感じにしたんですか? 仕入れやら商品構成とかも含めて。
市之瀬:今にして思うと失敗だったのかも知れないけど"東京をそのまま持って行く"っていうスタイルで行ったんだ。でも、地方は地場が強いんだって学ぶことになったよね。品揃えでもサービスでも空間作りでも負けてないって自負はあるんだけど、国産の主力ブランドとかは今まで買ってた店に行くっていうお客さんが多かったんだと思う。俺はそれが取れると思ってたの、変な意味じゃなくてゴソッと。〈ノンネイティブ〉とか〈サスクワァッチ〉とか〈ホワイトマウンテニアリング〉とかが好きな人がもっと来てくれると読んでたんだけどね。
―じゃあ地方はショップとの関係性がより密接なんですね。
市之瀬:お客さんも今までのお店を裏切れないじゃん。そういうのはあるよね。まあでも、徐々にだけど浸透しつつあった感触もあったし、今となっちゃ勿体ないっていう思いが強いかな。
―期せずしてスタートラインに立ち返るというか、代官山のみで今後はやっていくことになりました。今までと何かを変えていくのか、それとも変えないでいくのか教えて下さい。
市之瀬:ここ数年はネット上での売り上げも無視できないよね。リピーターも多いし。やっぱ1店舗しかないとなると、ネットで買ってくれるお客さんのことを今まで以上に意識していかないとなっていうのはある。実店舗はプロモーション的な旗艦店としての役割もしっかりやっていかないといけないから。そういった意味では、商品構成的な面でオリジナルの拡充っていうのは必須になってくる。逆に変えない部分は意地とかコンセプトってところだよね。