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vol.6

栗野宏文

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栗野さんに聞く、ファッション遍歴とショップの今後

日本はもちろん、世界的にもファッション界の権威として知られる栗野氏。
着こなしやマインドを含めた氏の動向は常に注目を集めています。今回は駆け足でファッション遍歴を中心に話を伺いました。

ファッションの目覚めは、スクリーンから

―今日は栗野さんのルーツというか、ファッション遍歴について教えていただこうと思います。

栗野宏文さん(以下栗野、敬称略):しっかり話そうとすると3日くらいはかかってしまいそうなので、今日は要約してお話しさせてもらいます。

―そうですね。それでは、まずファッション自体に興味を持ったのはいつ頃なんでしょうか?

栗野:中学の1年や2年くらいまでは全く興味なかったんです。昔の子供ですしね。ただし、映画が好きだったんで、よく母親と鑑賞に行きました。いわゆる冒険活劇が好きで、そういった作品に出てくる主人公の姿を見て格好いいなぁと思ったのがきっかけだと思います。分かりやすく噛み砕くと、今の子たちがウルトラマンとか仮面ライダーに憧れるのと同じですね。

―お洒落をするという概念ではなく、スクリーンの中のヒーローに憧れるという部分で服装を真似し始めるという流れでしょうか?

栗野:はい。自分の場合は50年代から60年代に子供時代を送ったので、西部劇や西洋チャンバラの勧善懲悪モノが全盛期でした。まだモノクロの時代ですから正義の味方は白い服で悪い連中は黒い衣装、それ以外の端役は中間色といった感じなんです。記号的に見てもその単純さが今見ても非常に面白いですよね。

―やはり白い服を着た正義の味方に惹かれたんですか?

栗野:最初のとっかかりはそうですよね。ただ、ある段階を境に、実は黒い服を着た悪役の方が格好いいんじゃないかとか、主人公の脇で渋い役割を担っている中間色の人のほうがオイシイ立場なんじゃないか、という視点が出来てくるんです。まぁ、僕はその頃から天の邪鬼というかひねくれ者になったのかも知れないですね。

―印象に残っている作品などがあれば教えてもらいたいと思います。

栗野:勧善懲悪モノを経て、それこそ色々なジャンルの作品を楽しみました。実は映画と関係したエピソードがあって、中学2年の時に「ミクロの決死圏」という血管の中に入って細菌と戦う云々というのを友達と鑑賞しに行ったんですが、たまたま劇中の演者のような白いシャツ、白いパンツを着て白いスニーカーで行ったら、派手だね!と友人にビックリされました。で、帰りに近所の商店街にVANショップができたから寄ってみようという話になったんです。

―友達と洋服を買いにいくことは良くされてたんですか?

栗野:いえ、そういったお洒落なショップには行ったことはなかったと思います。その時に初めて'自分で選んで服を買う'という行為を知ったんですね。'お洒落を楽しむ'という概念を認識したのは、その時なんだと思います。

―その後はVANを通してアイビーやトラッドの方向へと向かったのでしょうか?

栗野:そこからが少し他の人と違うのかも知れないのですが、単純にアイビーやトラッド好きという風にはならなかったんです。それらは僕にとっては'デザインされた服'なんですね。それまでレギュラーカラーしか知らないところへボタンダウンというものが出てきた。つまりひとつのデザインなんです。中学3年くらいからアルバイトを始めて、高校に入学してからはバイトしては服を買ってという繰り返しです。〈VAN〉のコートやTシャツ、〈JUN〉のシャツ、〈ミツミネ〉のダッフルなどを買ってましたね。

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