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vol.10

UNION WORKS

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靴修理を通して見える
ユニオンワークスのフィロソフィー

靴好きなら知らない者はいないといわれるユニオンワークス。代表の中川氏が一代で築き上げた靴修理のプロショップです。無類の英国好き、革好きとして知られる氏に靴のことを中心に話を伺ってきました。

どうしても、イギリスものに惹かれてしまう。

―レザーシューズといえば、ジーンズなどと同じようにオーナーの意向が反映されるというか、長い期間を共にしてこそその本質が分かるものだと思います。今日は靴のことを色々とお聞かせください。

中川一康さん(以下中川、敬称略):分かりました。まず、乱暴に言ってしまうと革靴には2種類しかないんです。それは修理をしながらずっと履き続けるべきものとそうでないもの。安価で買えるものはできることが限られてしまいますから。やはり良いものは何でもそうですが、それなりの値段がしてしまいます。履いてみれば顕著に差は出ますが、何より見た目から漂う重量感が違ってきますよね。

―中川さん個人が靴に興味を持ったきっかけはどういったものだったんでしょうか?

中川:小さい頃に見た映画の「小さな恋のメロディ」という作品が大きな影響を与えてますね。出演者が自分と同じくらいか若いくらいなのに、身のこなしや服装、ライフスタイルなどを見てぶったまげた記憶があります。そのインパクトをどこかで残しつつ、中学くらいからはブリティッシュロックに傾倒していきました。そして高校に入って〈リーガル〉の靴を見て取ったのが初めてです。縫ってあるちゃんとした靴との出会いですね。

―まずはイギリスの洗礼を受けてといった流れなのでしょうか?

中川:というより、結果的に引き寄せられたのかも知れません。大学くらいの時に洋服屋とかに買い物へ行っても、何気なく手に取ったものがイギリス製ということが多かったもんですから。所謂ウェザーウェアが僕は好きなんです。〈ベルスタッフ〉や〈バーブァー〉といった伝統的なものに惹かれますね。ハイテク素材やゴム引きとかじゃなく、あのワックスドコットンの質感や匂いは男らしいじゃないですか。匂いといっても実際にするあの匂いではなく、着ることで漂う雰囲気や空気感といった意味ですが。どうしたってイギリスものに惹かれてしまうのかもしれないです。

―では、実際に入手した時は相当嬉しかったんじゃないでしょうか?

中川:学生時代は絵に描いたような苦学生でしたので、実際に手に取るのはもっと後になりました。初めて買ったのは〈ロッドソン〉なんですけど、いまだに当時の嬉しかった記憶は覚えています。履き心地とか云々より、精神的にすごく満たされましたよね。帰宅まで待ちきれずに、途中で喫茶店に立ち寄って履き替えました。靴は三次元的なものですので、服のように畳んだりできないじゃないですか。フォルムや質感などをじっくり眺めて感動してました。

―やはり本格的な革靴は違うなと感じました?

中川:最初はやっぱり固いし痛いんです。靴擦れもしますしね。でも、どんどん使い込んでいくと、革がしっかり応えてくれるんです。それに長く履いていると鈍かった光沢がどんどんとピカピカになっていくんですよ。総じてイギリスの靴に対しては「仲良くなる」という感覚を僕は使っています。なかなか仲良くなってくれない時もありますが、しっかりと馴染んでしまえば、これ以上ないくらい最高のフィット感を得ることができるんです。

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何ともいえないダンディズムを醸し出している中川氏。話す雰囲気は非常に柔和なので、初めての人でも緊張する心配は無用。

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入ってすぐのカウンター兼ショーケース上にはリペア用のパーツが置いてあります。ヒールだけを見てもバラエティが豊かで、修理の仕上がりにも期待値が上がっていきます。

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