映画に恋して - Deary days（宮沢香奈）

よく本をいっぱい読んでそうと言われますが、俄然
映像の方が好きで、物語は映画で観ることの方が多いです。
本も好きだし、本当は活字で読んだ方が記憶にも印象にも
残るんですけどね。。

長時間のフライトとか海しかないリゾート地とか
何にもすることのない、しなくて良い時間があったら
一日中、本を読んでみたいなんて思いますが、
今の私にはとてつもなく贅沢に感じます。

"Time is money"


GW中に観たかった映画を2本制覇してきました。
「SPEC」と「SHAME」というとても対照的な作品。

「SPEC」はドラマがとてもおもしろかったので、映画にも期待大！
だったわけですが、どうしても大掛かりな特撮物にコメディーを
てんこ盛りにした感じがして、全然ストーリーに入り込めませんでした。

ドラマからの映画化というのはその集大成なわけだし、
キャストも見せ場も豪華満載にするのは当然なんですけどね。
考えてみたら私は単館系のいわゆるマニアックで地味な作品が
好きだったことを忘れていたわけです。笑

一方「SHAME」は、そういった意味でもど真ん中の作品で、
銀座にある昭和初期を感じさせるレトロな映画館「シネパトス」で上映。
東京では最後の上映とあって、友人と駆け込んで観に行ったわけですが、
いまだに主人公の気持ちをじっくり考え込んでしまうぐらい
深く印象に残った映画でした。




とにかく、セックス依存症の主人公ブランドンを演じた
マイケル・ファスべンダーの演技が素晴らしい。
テーマの通りセックスシーンの多い作品ですが、
最後の方で激しいセックスをしながら、静かに涙を流すシーンは
ぼーっとしてたら気付かないほど自然で、演技ぢゃなかったのでは？
と思うほど。

何より映像アーティストでもある監督スティーブ・マックイーンの
カメラワークに脱帽。全体的に青がかった映像は大都会の孤独と
美しさをとてもよく現しているし、人物を撮るアングルも変わっていて
おもしろい。セリフが少なくても見入ってしまう映像美です。

"愛など必要ない"という人間との深い関わりを拒絶する兄に対し、
"愛だけが必要"というリストカットを繰り返す精神的不安定な妹シシー、

対照的な悲しい兄弟の物語は、シシーがブランドンへ残した留守電のメッセージに
少しだけヒントが隠されているだけで、２人の本当の関係も過去の出来事も
"SHAME"の理由も明かされないまま終わります。



激しく求めれば求めるほど心が空っぽになっていく。
それでもせずにはいられない。止められない。
誰も助けてくれない。誰にも助けてもらいたくない。

大都会に埋もれてしまっていて気付かないだけで、
本当はブランドンやシシーの様な人間は沢山いると思うんですよね。
抱えてる問題はそれぞれだろうけど、悩みのない人間なんていないし、
隠し事のない人間もいない。


うーん。久々良い作品に出会えました。
スティーブ・マックイーン監督作品にはこれからも注目していきます。