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杉作J太郎映画製作業 / 男の墓場プロダクション局長1961年生まれ / 漫画家、雑誌編集者を経て現在映画製作集団〈男の墓場プロダクション〉局長。監督作品に「任侠秘録人間狩り」 「怪奇!幽霊スナック殴り込み」「やる気まんまん」。現在「チョコレートデリンジャー」(吾妻ひでお原作、松本さゆき主演)撮影中! 別名義でラッパーとしても活動。このコラムのタイトルはその大サビのライムから。

杉作J太郎のすべて幻

杉作J太郎
映画製作業 / 男の墓場プロダクション局長

1961年生まれ / 漫画家、雑誌編集者を経て現在映画製作集団〈男の墓場プロダクション〉局長。監督作品に「任侠秘録人間狩り」 「怪奇!幽霊スナック殴り込み」「やる気まんまん」。現在「チョコレートデリンジャー」(吾妻ひでお原作、松本さゆき主演)撮影中! 別名義でラッパーとしても活動。このコラムのタイトルはその大サビのライムから。

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私はこれがこわかった!

2010.05.19

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ブログ。すっかり間があいてしまった。

「私はこれがこわかった!」

これは2007年のプロ野球日本シリーズ、第5戦。1対0で迎えた9回表、優勝を目前にした中日ドラゴンズ、落合監督が、そこまでひとりの走者も出さないパーフェクトピッチングを展開していた山井を突如降板させ、マウンドにリリーフの岩瀬を送った際、ラジオ中継解説の関根潤三さんが語った言葉である。

あと1イニング頑張れば史上初の日本シリーズ完全試合達成であった。

信じられない展開に球場は騒乱状態になった。

ぼくはそれを環八走る車のカーラジオで聴いていたが、危うくハンドルを切り損ねそうになった。マイクが拾うことのできる音量を超えたのか声とも騒音ともつかない音がガーッとスピーカーから流れてくる。

日本シリーズ第5戦。誰がこのような展開を予想しただろう。まさかここで完全試合が達成されそうになろうとは。誰も予想してなかったし、予想できることではなかった。

誰もが史上初の快挙が成し遂げられようとしている状況に固唾を飲んでいた。

おや、落合監督が出てきました。なんでしょうか。交代ですか? まさか。まさか! 投手交代です。岩瀬! 岩瀬をマウンドに送ります! 降りますか? 山井がマウンドを降りますか? 交代です! なんとここで投手の交代です!

言葉はもちろん正確ではないが、おそらく実況のアナウンサーはそう絶叫していた。騒乱状態の球場。ぼくもアタマの芯が痺れた気がした。そのとき、関根さんはうめくように言ったのだ。

「私はこれがこわかった!」

関根さんはこのような展開を予想していたというのだろうか。ぼくは信じられない状況プラス信じられない関根さんの言葉にアタマがぐらぐらした……。

あれから2年半がすぎたが、そのときの関根さんの言葉は声色、リズム、すべてがアタマの中に刻まれている。刻み込まれたままだ。おそらく生涯、忘れることはないのではないか。そう思う。

関根さんの言葉を変な意味には考えていない。ただ、そのとき、関根さんは本当にそう感じたのだと思う。長いプロ野球経験を持つ関根さんだからこそ言えた言葉であり、それを聞けたぼくは幸せだ。本当はテレビで見ていたかったなあと思いながらカーラジオを聞いていたが、この言葉が聞けて幸せだといまも思う。

今回、このブログは頻繁に更新していくはずだった。更新できると思っていたし、更新したかった。が、この信じられない間のあきようである。誰がこんな状況を予想しただろうか。

「私はこれがこわかった!」

関根さんの言葉がアタマの中に蘇る。世の中、なにがあるかわからないが、やはりそれは関根さんの言うとおりで予測できないことではないのだ。

というわけで、今回は奇妙な更新になりましたが、次回はフツーに更新できることを自分自身に願います。今回、フツーに、
「昨日、夜中にアニメ『一騎当千XX』見てたらおもしろすぎて寝そびれた……」
みたいなことはやはり書けなかった。今回はこれでしかたがなかったのだなと思う。

だが、まさか。もしも。またこの次、間があいたら。

関根さんの言葉は深いものがある。

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