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変容を続けるアニマル・コレクティヴ --これは最高のライブセットだ、なんて思ったことはない--

2012.08.06

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「自分の作ったものにもっとプライドを持てるようになったね」。

-これだけ長い付き合いがあるんだから、その関係は薄れないと思うよ。僕だって、みんなが来ると何も変わってないような感じがして、楽しいし嬉しくなる。僕らが20代前半に作ったニューヨークのアーティストたちのコミュニティは、みんな一緒に大人になったんだなって。

エイヴィ: 2000年代前半からニューヨークをベースに音楽を作っていたし、みんなそこで育って、リスペクトしあって、自分の周りを囲む独特な世界を作っていったからね。ニューヨークではいろんなバンドや音楽が常に作られているから、"僕ら"と"ニューヨーク"という意味ではつながりは薄れているかもしれないけど。

ジオロジスト: こういった質問のときに警戒するのは、「ニューヨークの音楽シーンとつながりを感じますか?」という場合だね。僕はその度に「誰のことを話しているんだろう?」と聞くようにしてる。つまり、僕らがそこで活動していたときのことや人、シーンでないとコメントできないからね。

パンダ: それはあるかもね。僕たちの思っているニューヨークの音楽シーンというのは、他の人が考えているそれとはかなり違うだろうから。

ディーケン: 僕らは家のないバンドのようなもので、今でも「ボルチモアのバンド」なんて言われ方をする場合もあるんだけどそうじゃない(笑)。なぜなら、現に何年も住んでいるバンドや音楽家たちは、僕らとはまったく関係なくシーンを築いているからね。そうやって、その地で頑張ってきた人たちと繋がっているかと言われたら、違うだろ? 僕らはボルチモアで育っただけだし、ニューヨークだって同じで、僕らはそこに何年か住んでいただけだよ。

ジオロジスト: 例えば、トッド.Pやシークレット・プロジェクト・ロボットとか、モンスターアイランド(編集部注:ウィリアムスバーグにあるアート・スペース)みたいな場所でライブを始めたわけではないからね。あの界隈は僕らもみんな仲いいけど、そこから来たバンドかと言われれば、ちょっと違う。

ディーケン: あのシーンのように、自分たちの町のなかで何かを作り上げた人たちはリスペクトするね。なぜなら彼らはかなりのエネルギーを費やして、そのコミュニティを作るために頑張っているはずだからね。一方で、僕らは転々としているわけだし。

-とはいえ、自分たちの住んでいる場所が音楽に影響を与えることはあるよね?

全員: もちろん。

エイヴィ: 僕はとくにそう感じる。ニューヨークから引っ越して、自分がまったく住んだことのない西海岸の環境に移ったのは、新しいインスピレーションを受けたかったからに他ならない。その影響はこれから期待したいけど、ニューヨークを出て1年半ボルチモアに住んでみて、そこで受ける独特な影響は感じたね。

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-ボルチモアでは他のバンドのライブは行ったりしてたの?

エイヴィ: 時々ね。ただ、見たいライブがそんなに多くなかったのと、住んでいたのが森の中だったから、ずっと静かな生活をしていたよ。ガーデニングをしたり(笑)。

-でも、確かエイヴィはボルチモアでソロライブをやっていたよね。

エイヴィ: それがそんなこともなくて(笑)。全部で2〜3回かな。2008年の間、ニューヨークの北の方にバンドのメンバーみんなで住んでいた家があって、そこでソロライブはけっこうやったけど。ボルチモアでは、全然。

-これはジオロジストとパンダへの質問になるけど、2人は自分の家族を持っているわけじゃない? その辺りが自分たちの音楽に与える影響ってどう感じている?

ジオロジスト: "生命とは神秘的なもの"って考えるようになったのは、子どもができてからというわけじゃないな。それはすでに音楽に対して感じていたことだし。

パンダ: それより家族を持つと混沌としたかな。

一同:

ジオロジスト: 家族を犠牲にするときがあるから、自分のやっている音楽活動が家族にどういう影響を与えているのかは真剣に考えるようになったね。だって、3ヶ月間音楽を作るのに集中したいとか、ツアーがあるから1ヶ月間留守にするとか、なかなか普通じゃないからね。だから、僕は自分の作ったものにもっとプライドを持てるようになった。現実的な答えで悪いけど、それが現実だよ。

-いやいや、とんでもない。仰る通り、僕もそれが現実だと思うよ。自分の音楽を作り続けて行くうえでいつも考えることだ。例えば、20代の頃の「バンドをやって何か試したい」という考え方とは違う音楽作りへの姿勢があるわけだよね。実際、ライブ後に若い子たちと一緒にパーティに行ったりすることも減ったし。

ジオロジスト: 明日仕事があるからとか、そういう理由で断ることは増えたよね。とはいえ、二日酔いでスタジオに行くこともなくはないけど(笑)。

ディーケン: 僕は子どもがいないけど、30代に入ってから音楽を作るのが仕事であるということを、ものすごく幸運なことだと捉えるようになったかな。

-なるほどね。僕らぐらいの歳にもなると、少しずつ自分の音楽活動にも歴史ができ始めてきているからね。このまま試し続けるのか、自分の好きな音をどう他の楽器に移していくのか、そのあたりのフィーリングの伝え方は新しいチャレンジになっていくと思うんだけど。

エイヴィ: そうだね、音楽をどう作っていくのか、色々と試しながら時間を過ごしてしまうと立ち泳ぎしているような状態に陥ってしまう。自分にとってどうインスピレーションを与えるか、それが家族を持つという体験なのかどうかはその人次第かもね。

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