規格外の"新人"ハンニ・エル・カティーブのルーツを探る。
2011.12.13

タフな体つきに、着古したミリタリーシャツとインディゴのストレートジーンズ。男臭く、飾り気のないその風貌は彼の音楽そのものの様だった。カリフォルニア出身のハンニ・エル・カティーブは、ここ日本ではまだ馴染みの薄い名前かもしれない。アルバム・デビュー元年である今年、リードシングルの「I Got a Thing」が〈ナイキ〉の世界キャンペーン・ソングに抜擢され、続くシングル「Build, Destroy, Rebuild」は〈コンバース〉のCMソングに起用されるなど、一躍、世界中から最も注目を集める新人のひとりとなった。2012年、要注目のこの男に、その音楽活動のルーツを訪ねた。
Photos_Shota Matsumoto
Edit_Yohei Kawada
Hanni El Khatib ハンニ・エル・カティーブ
カリフォルニア生まれ、サンフランシスコ育ち。幼い頃より、クラシック・アメリカーナや1950〜60年代のポップカルチャーに影響を受ける。2002年、人気ストリートブランド〈ハフ(HUF)〉の立ち上げに参加し、以後、同ブランドのデザイナー/クリエイティブディレクターとして活躍。デビューアルバム『Will The Guns Come Out』は12月21日(水)発売予定。
―まずは、簡単な自己紹介からお願いします。
ハンニ・エル・カティーブ(以下、ハンニ):僕はサンフランシスコ出身で、1年前にL.A.に引っ越したんだ。その間、ずっとレコーディングとツアーをしてきて、数年間は休みがほとんどないくらいライブをしっぱなしだったよ。そしてようやく、アルバムが完成に至り、日本でも12月に発売する予定になってるんだ。
―元々はスケートカルチャーと密接にリンクしたアパレルブランド〈HUF〉のデザイナーをしていたそうですね。ミュージシャンとして活動を始めるきっかけは何だったのでしょうか?
ハンニ:僕は幼い頃から、ずっと趣味として音楽をやっていたんだ。大人になって、ショーやライブ、音楽制作なんかもしていたんだけど、ある時、その忙しさから音楽か仕事か、というどちらかの選択をしなければならない状況に迫られたんだ。そのときは、とてもオフィスのデスクに座って仕事なんかできる状態じゃなかった。そこで音楽の道を選んで、そこからは一度も後ろを振り返ったことはないね。
―その選択は自分にとって難しいものではなかったんでしょうか?
ハンニ:もちろん、難しい選択だったよ。長年、ブランドのクリエイティブディレクターとして企業で働いていたし、そこで自分のポジションもしっかりと築いていたからね。そこから去るというのはすごく難しかったし、経済的にも音楽を続けていくということはとても複雑なことであったのは理解していた。だからこそ、僕は1年間という長いツアー期間を設けて、自分を追い込んでモチベーションを高めたんだ。あとは突っ走るだけだったよ。

―自分の中ではずっと音楽をやりたいという気持ちはあったのでしょうか?
ハンニ:いちばん最初に遊び感覚でレコーディングを行ったときには、まだ特にミュージシャンになろうという気持ちはなかったんだ。でも、ひとたびライブをしたらすごく楽しくて。すごく音楽をやりたいという気持ちになったんだよ。
―そして、決断をすることになると。
ハンニ:そう。去年の...いや、デザイナーの仕事を辞めたのは今年の4月だね。しばらくは、ツアーをしながら、楽屋でコンピューターに向かってデザインしていたよ(笑)。
―今年ですか! ところで、今、おいくつなんでしょうか?
ハンニ:30歳だよ。
―遅咲きのルーキーということになりますね。
ハンニ:そうだね(笑)。とはいえ、30歳だからこそ自分の選択に責任をしっかりと持てるという、良い面もあるんだ。若い頃は何も考えずに選択してしまうことが多いから。「この道を選んだからには、こうしていかなければいけない」という強い考えを持って挑むことができるのは、この歳だからこそなのかもね。