フォトグラファー水谷太郎が初となる個展「New Journal」を開催!
2013.10.31
永戸: 今回の個展で、どれぐらいプリント売れるだろうね?
水谷: いやいや(笑)。でも、ちょっとおもしろいところだなって思っているのが、「流行写真」のときは、ファッション関係の人たちがたくさん来てくれたんですけど、「Gallery 916」は写真のギャラリーなのでどうなんだろうと。というか、ほとんどは操上和美さんの写真を見に来る人たちだと思うんですよ。で、その800円の入場料を払って、僕の写真もついでに見てもらえるっていう(笑)。
永戸: そうか。あれは太郎くんへの入場料じゃないわけだ。
水谷: そうなんですよ。だから自分的にはそこはすごくおもしろい。僕のことを知らない人が僕の写真を見てどういう風に感じてくれるんだろうと。こいつの作品そこそこ良いし、安いから買ってみようかな? みたいな人が出てきてくれたら、ちょっと嬉しいですけどね。
永戸: それは出てくるんじゃないかな。
水谷: そうですかね。
永戸: と、思うけどね。では次の質問に行きます。太郎くんはファッション・フォトグラファーとして仕事をしているわけですが、撮影する側として東京の今のファッションについてどのように感じていますか?
水谷: そうですね。ファッションって最終的になんなんだろうってことを考えたときに、スタイリストの山本康一郎さんが言っていた「出かけたくなることじゃないかな」って言葉がすごく心に残っているんです。出かけたくなるような高揚感とかを写真を使って伝えられることが、いわゆるファッションとかファッション写真につながっていくのかなっていうのは未だにありますね。
永戸: なるほど。
水谷: だから自分が旅行に行って写真を撮ったりしても、どこかでファッションっぽく見える瞬間があったりして。そういうのがあるから「出かけて~」みたいな願望がいつもあるというか。
永戸: そういう感じに太郎くんの軸があると思うんだよね。例えば、旅だったり、聴いてる音楽だったり、考え方だったり、何かを食べながらラフに歩いてるみたいな雰囲気がね。
水谷: ほんとですか?
永戸: だから旅に行って普通に風景を撮っても、言わなくてもファッションだよっていう雰囲気が漂ってるっていうのは、そういうことだと思う。決して冒険家が撮った写真じゃないよね。
水谷: そうですね。例えば今撮った写真は2013年に自分が見た風景であって、それってすごい写真的だなと思うんです。その瞬間にしかないという点ではファッション的であって、時代性みたいなことと総括するとリンクしていて、自分の中ではすごくダイレクトなことなんです。今ここがおもしろいから行ってみよう、みたいな。
永戸: うんうん。それで今回、白い看板を撮ったり。知床まで行ったり。〈アンダーカバー〉の服を借りて撮ったり。それらが全部作品になっている。ということだと思うんだけど。
水谷: そうですね。
永戸: そこがおもしろいと思うんですよ。人によってはそういうことはしないし、線引きしてただろうし。でも、太郎くんの中では展示しますと言ったらすべてが作品になってしまう。
水谷: うーん。何て言うか、自分の写真を高尚な芸術に昇華させようって気持ちはまったくなくて。さっきの話しとも重複するかもですが、写真を取り巻く環境はもっといろんなメディアというか多角的であっていいと思っているんですね。自分が撮るものは仕事でもプライベートでも自分の写真だし、それは揺るがない。それがどう変化していくのかを客観的に見るのはすごく普通なことなんです。
永戸: うん。でも多くの人は分けてきたんだよね。
水谷: 「流行写真」以降、もっと自由でいいんだって思っちゃったんです。
永戸: そこが明確になっちゃったわけだ。別に俺こういうやつだからいいやって......?
水谷: すごく明確になりましたね。「流行写真」をやったことで、WATARUさん、モーリー(守本勝英)、荒井ちゃん(荒井俊哉)には自分には無いもの見せつけられました。いろんな人がいる中で、こんな自分のスタイルがあってもいいよなって思ったというか。
永戸: "どの方向に行っても良い写真家である"と自ら指針を打ち立てたわけだ。
水谷: なんかそういう風になれたらいいなと思って動いてますね。まあ今後どうなることやらですけど(笑)。
永戸: まあ、ある程度いけると思いますよ(笑)。写真はもう間違いないし、色々な提案もできそうな感じだしね。あとはもう太郎くんの心持ちがここからどうなっていくかでしょう。個展もきっと成功すると思います。
水谷: ありがとうございます。
永戸: でも、ファッションの写真家からは、先に行かれたと思うだろうし、美術写真の人たちも、ちょっと脅威に思う部分もあるかもしれない。だって、いつもいろんな被写体を撮っていて、しかもTシャツの写真だって撮る。バンバン作品を出してきて、ついにこのフィールドにまで来てしまったぞと。
水谷: そのくらいになれたらおもしろいですね。
永戸: きっとなっていくでしょう。
水谷: はい。がんばります。
永戸: 楽しみです。
水谷太郎 フォトグラファー 1975年東京都出身。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、自身の 写真家活動を開始し現在ではファッション雑誌、ファッションブランドの広告 やアーティストのポートレイトなどを中心に活躍。2013年3月、4人のファッシ ョンフォトグラファーによる合同写真展「流行写真」に参加。作品集に『Here Comes The Blues』。be Natural management所属 www.bnm-jp.com
永戸鉄也 アートディレクター 1970年東京都出身。高校卒業後渡米、帰国後96年よりジャケットデザイン、ミュージックビデオのディレクション、広告やドキュメンタリー映像制作等に携わる。作家としてコラージュ、写真、映像作品を制作。個展、グループ展にて発表している。2013年3月の「流行写真」ではクリエィティブディレクターとして参加。www.nagato.org
水谷太郎 写真展『New Journal』
会場_Gallery 916 small
住所_〒105-0022 東京都港区海岸1-14-24 鈴江倉庫第3ビル6F
tel_03-5403-9161
会期_2013年11月1日(金)~11月23日(土)
開館時間_平日 11:00~20:00/土曜・祝日 11:00~18:30
休廊_日曜・月曜
入場料(18歳以上のみ)_一般¥800、学生¥500(Gallery 916 及び 916 small)
gallery916.com
※メインルームの「Gallery 916」では、写真家・操上和美氏による個展 『PORTRAIT』を同時開催。 会場では、今回の水谷太郎 写真展図録『New Journal』を500部限定で販売。