WHAT'S UP, LARRY? TSUYOSHI NOGUCHI × SHINGO WAKAGI
2014.04.04
若木: ラリー・クラークって今いくつでしたっけ?
野口: 1月で71歳になったみたい。
若木: すごいですね。
野口: でも、荒木さん(※注釈11:荒木経惟。1940年生まれの日本を代表する写真家)とかも、すごく元気じゃない? 何なんだろうね、あのエネルギーは。
若木: 本当ですよね。
野口: でも、信吾もそうなるんでしょ?
若木: そうなるのかなぁ?
野口: なんかさ、やっぱり写真家の人だけだよね。
若木: あぁ、そうかもしれないですね。歳をとってもやってる人たちって。でも、アートディレクターも多いですよね。
野口: あぁ、そうだね。現役バリバリだよね、写真家とアートディレクターのセットは。
若木: スタイリングをやっている人たちは、どういう感じになるんですか?
野口: でも、続けている人たちが多いのかな。みんな元気ですよ!
若木: 野口さんもバリバリやってそうですけどね。
野口: でも、ラリーの歳になるまで、あと20年ぐらいあるよ!(笑)
若木: それにしてもこうやって色々な一流のカメラマンの人たちと連絡とって、一緒にファションやろうって言えるのって、なかなか野口さんぐらいしかいないと思うんですよね。それは本当にすごいと思います。
野口: いやぁ、なんか断られて当然みたいなところはあるからね。それに言うのはタダだから、それでOKって言ってくれれば、ラッキー。そこからの積み重ねのような気がするんだよね。だから、お願いしてみるのも無駄じゃないかなって。
若木: じゃぁ断られても、あんまりがっかりはしないですか...?
野口: 断られても、また今度頼んでみようかなって思うぐらい。ちょっと間をあけてダメ元でね。一回でも一緒に撮影できれば、予算がなくても話は聞いてくれるし。例えばテリーに「20ページなんだけど、本当に全部でバジェットがこれぐらいしかなくて」って言っても、撮ってくれたりするし。ラリーもそんな感じ。いわゆるファッションしかやってない人たちは、やっぱりお金にもうるさいんだけど、でも作家の人とかだと動きやすいのかな。ただ、作家の人にファッションを撮ってもらうのは難しいなとも思うけど。
若木: それはどうしてですか?
野口: いや、いい具合にいけばいいんだけど、うまくいかないとどっちつかずの写真になっちゃうこともあるからさ。
若木: 撮影しているときに、服を直しに入れたりするんですか?
野口: 入れる人と、入れない人がいる。荒木さんは絶対に入れないし、「直さなくていい!」って言われる。でも基本みんな直さなくていいって言うかな? でも、ラリーの場合は「ちょっとここ直して!」とかもあったり。こっちに気を使っているんだろうなってのもあるけどね。やっぱり作家の人だと、一回洋服着せて、あまり服のことは気にしなくていいから、自然に撮ってくださいっていうスタンスの方がいいと思うんだよね。しかも、それを何日間もかけてやるほうがいい。やっぱり3日やそこらでやるっていうのが無理があるんだよ。まぁでも、こちらもお金がないから3日間で撮影してっていう話になっちゃうんだけど。
若木: 実際に野口さんは、『TULSA』(※注釈12:ラリー・クラーク初の写真集。オクラホマ州に住む若者たちの日常をドキュメントした)のプリントを持っていますが、その時のテンションとは違うと思いますか?
野口: いや、全然違うでしょ。『TULSA』撮ってるときと、ベジタリアンで酒もやめているときの写真は。本人のテンションは一緒だけど、やっぱりどこか違う部分もあるんじゃない。毒っぽさとかそういう感じではなくて、ちょっと角がとれたのかなって気はするよね
若木: いわゆるこういう"作家"の写真家と仕事で関わっていきたいっていう思いって何なんですかね? プリント買うだけじゃ、もの足りないって感じてきちゃうんですかね?
野口: やっぱりこう、一緒に味わってみたいっていうことかな。どういう風に撮るんだろうとか、本当に好奇心だよね。
若木: その好奇心の強さは、見習いたいですね。
野口: いやいや。もう、それだけでやってるようなもんだからね...(笑)。自腹でチケット代出して、ラリーとやれるんだったら、別にそれでもいいと思うし、ギャラもいらないし。まぁどうにかなるって気持ち。本当にその好奇心だけだね。
若木: 今回、このためにリアルプリントを作ったりもしているんですか?
野口: うん、100枚近くプリントしてるかな。
若木: 時間が経ってくるとやっぱりすごく良くなってきたりするじゃないですか。それは仕事であろうが、プライベートワークだろうが。例えばマン・レイなんかもそうじゃないですか。仕事で撮ってたファッション写真もめちゃめちゃいいですからね。ヘルムート・ニュートンも然り。そういうタイミングが絶対来ますよね。
野口: その頃は、死んでるんだろうな、自分(笑)。
若木: (笑)