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WHAT'S UP, LARRY? TSUYOSHI NOGUCHI × SHINGO WAKAGI

2014.04.04

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たっぷりの好奇心と抜群の感性。

野口: いやぁ、でも勉強になりましたよ。あきらめない精神というか、自分のやることに妥協しないというかね。

若木: こうしていくつになっても人生の先輩がいるっていうのはすごくいいですよね。意外とそういう人たちって少ないですから。

野口: でも今回は、本当にすごいなって思ったね。

若木: 俺も40歳を越えちゃって、だんだん一緒に仕事するスタッフも若くなっていくわけじゃないですか? 何か持ち上げられたり、扱いづらいって言われてるって聞いたりして、やっぱりダメだなって思うんですよね...。まだまだ上の人もバリバリでやっているから、若い人たちばかりとやるだけでなく、そんな人たちとも仕事しなきゃいけないとか。だからこういう写真集を見ていたりすると、頑張らなきゃなって思うんですよね。

野口: こういう人たちと仕事していると、アシスタントになった気分になるもんね。イーブンでやっているつもりなんだけど、結局「何? それも自分?」みたいこともやってるし。スタイリングしなきゃいけないわ、カメラ持たなくちゃいけないわ、着替えもさせなきゃいけないわ、みたいな。それにラリー、ひとりで来るしね。

若木: え、ラリー・クラークってアシスタントいないんですか?

野口: うん、連れてこない。すごいでしょ。

若木: フィルムチェンジとかも自分でやるんですか?

野口: うん、自分で。でも、〈ヤシカ(YASHICA)〉の自動巻きは、「お前やっておいて!」みたいな感じ。

若木: まじっすか(笑)。

野口: こっちも忙しいんだからさ(笑)。でも、「ライカは触らなくていい」って(笑)。はい、こちらもそれは分かってます!ってね。

若木: ちょっと難しいですからね。でも、野口さんがフィルムチェンジできるところもなんかすごいんですけど。

野口: 自動巻きぐらいはできるでしょ! いや、面白かったよ。信吾がラリーのポートレイト撮ったのは、20年前だっけ?

若木: そうですね。ニューヨークのソーホー近くのぼろいカフェに呼ばれて、その時は後藤さん(※訳注13:後藤繁雄氏。編集者兼、クリエイティブディレクター)がインタビューして、横でその話を聞いていたんですよね。

野口: 今はトライベッカにあるオシャレなイタリアンのレストランに呼びだされるよ(笑)。

若木: それは面白いですね。そんなちょっとオシャレになったラリー・クラークって、どこのグループにも属さない人じゃないですか。インディペンデントでやっているっていうか。ファッションをやっていても、ファッションの人でもないし、かといって写真の先生として教壇に立って、若い子に教えてるわけでもないじゃないですか。何か孤立しているのに、でも何かオシャレにニューヨークに住んでいるっていうか(笑)。あのバランスっていうか、立ち位置って何なんですかね?

野口: 何なんだろうね、あの歳になってもやっぱりストリート感があるっていうか。かといってラルフ・ギブソン(※米写真家。ニューヨーク在住)とも仲がいいとか。

若木: この最後のクレジット、すごいかっこいいですよね!スペシャルサンクスにラルフ・ギブソンがいるっていうのが。「ラルフ・ギブソンが入ってる!」ってなりますよね(笑)。実際、本人が着ている服とかってどうなんですか? だんだん歳をとっていくと分からなくなっていくじゃないですか。自分の子供のファッションが一番かっこいいみたいなことと勘違いして、突然ビジュアルバンドみたいな格好してくる大人もいますよね。

野口: あの人はスタイルがあるからね。基本ブラックデニムで、Tシャツは〈シュプリーム (SUPREME)〉とか、自分で作ったTシャツ。それに黒のレーヨンのシャツを羽織っていたりとか。で、レザージャケットに〈ボルサリーノ(Borsalino)〉、あとベースボールキャップとか。ブルース・リーのキャップはよくかぶってたね(笑)。基本はスタイルがあって、そこにトレンドじゃないけど、〈シュプリ―ム〉とか〈ステューシー(Stussy)〉を取り入れたりって感じ。

若木: ある意味、バランスがとれているわけですね。

野口: そうそう。でも、移動するときとかのキャリーは、〈ベルルッティ(Berluti)〉のレザーのバッグを2つ持っていたりして。「これって、ベルルッティ?」って言ったら、「いいバックだろ!」って(笑)。そういういいものも好きなんだよね。この間、日本に来たときも、アンティークのステッキを結構買って帰ったしね。

若木: へぇー。なんか荒木さんも独特のスタイルがあるじゃないですか、ロングコートに自分のTシャツに、サスペンダーっていう。

野口: そうだね、森山さんもスタイルあるよね。トレンチコート着てたり。テリーも赤のネルシャツに、〈リーバイス〉の501に〈バンズ〉とかでしょ。面白いよね。

若木: なんか歳だからって、そういう部分を放棄するっていうのがないんでしょうね。ラリー・クラークも、ずっとそのスタイルを続けているっていうか。ある時期がくると、やっぱり辞めちゃったりすることも多いと思うんですよ。もういいかな!?みたいなところだったり。

野口: でも、ちゃんと自分のスタイルを守りつつ、色んなトレンドを入れてる感じだから、いつも見ている人は、あんまり変わらないと思う。

若木: お金があるからって、突然高い物買うと着せられた感は出ますからね、どうしても(笑)。

野口: 今回撮影したサウスセントラル(※ロサンゼルスの西に位置する、低所得階層の街)とかに行くとやっぱり落ち着くというか、やりやすいみたいだよ。

若木: 実際に、今回被写体となってるモデルの子達と仲いいんですか? サウスセントラルでも色々なグループがあると思うんですけど。

野口: 映画のキャストたちとは仲いいみたいよ。

若木: とはいえ、監督と撮られる側、ですよね。どうしてもギブ&テイクの立場っていうか...。撮っている側からするとちょっとやっぱり搾取してるっていうか、結局は自分の作品で出すわけで。彼らはそれに付随して有名になるかもしれないけど、そこまでお金が入るわけでないし、その後の保証はないし...。でもそこって本人たちが頑張れば、上にいけるかもしれない。俺たちはそこの準備はするけど、そこから先はお前らの努力でしょ?みたいな感じじゃないですか。そのピリピリ感っていうか。

野口: なんかね、すごく同等な感じがするんだよね。わざわざラリーの誕生日にニューヨークまで来ていたりとか、常に連絡をとりあっているみたい。何人かはバンドをやっていたり、1人はバーテンやりながら役者をやっていて、今度ガス・ヴァン・サント(※アメリカの映画監督)の映画に出演するとか。みんなまだそこまで有名にはなってないけど、いい感じにやってるみたいよ。あと、たまにラリーのアシスタントやってるやつもいたりだとか。

cf_larry_2014ss_016_thumb.jpg
同じ写真を何度も見ては、構成を頭のなかで練り、入れては外しを繰り返す。

若木: すごく良い関係ですね。彼らにとっては、お父さん以上に年が離れていますもんね。

野口: そうだね。でも仲いいよ、本当に。

若木: そういう関係性を築けるのは、理想ですよね。だからこうした写真も撮れるわけですね。

野口: 勉強になります!って感じだね。責任感っていうかね。今回の写真集も自分の本にしたいから、それなりに自分の名前を使うからって、最後まで責任持ってやるわけじゃない。あの歳で何日も寝ないで、ここでずっとパソコンから昔の写真を引っ張りだして、それをミックスしたり、コラージュしたり...。で、最終的には、ここまでまとめあげてきたからね。やっぱり本当にすごいなって。ここで一緒に作業しているときは、どうなるかと思ってたけど...(笑)。

WACKO MARIA/LARRY CLARK

今年71歳になった、ラリー・クラークの集大成ともいえるビジュアルブック。〈ワコマリア〉の服を着た『ワサップ・ロッカーズ』に出演したキャストたちの撮りおろしや、コラージュ、さらにペインティングに加え、アーカイブの作品もミックス。ラリー・クラークの魅力を余すところなく体感できる一冊となっている。¥5,000+税(WACKO MARIA 03-5708-5278)

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