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初・渋谷直角の岡本仁案内。

2012.03.08

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「やっぱり旅も、人だと思います。」

―何回も言ってることかもしれないですけど、そもそも鹿児島には、最初は仕事で行ったんですか? それとも遊びに?

岡本:遊びに。中原くんが鹿児島に、今は別の名前になって違う人がやってるんだけど、「DWELL」ってお店を作ったの。で、関わりのある人たちが鹿児島に行って、面白かったよってみんな言うから、「俺も行きたいな」って思って。そしたら中原くんが、「この時期に来てくれると、ちょうど僕もいるから案内しますよ」って言われて、それで行ったのが最初。

―まだランドスケープに入る前ですか?

岡本:そうだね。それでいろんなところを教えてもらって、楽しいなあ、って。僕は中原くんがいる時に行ったし、中原くんがいない時は彼の友達が案内してくれたりして。だから自力で調べたって感じでは全然ないし。そういう意味でもいろんな人が手伝ってくれた本にしたい、っていうのがあったんだよね。

―その、向こうの人たちが色々連れてってくれる感じって、たとえばDJとかで地方に行ったりすると、そのイベントのオーガナイザーさんがもてなしてくれたり、色々連れ回してくれるじゃないですか。それに似た感じですか?

岡本:うん、最初の2~3回はそういう感じだったね。

―でも、岡本さん、あれからメッチャ何回も来るぞ!? みたいな(笑)。

岡本: だんだん相手にしてくれなくなるというか(笑)。みんな仕事が普通にあるからね。だから、前作と今作の違いがあるとしたら、今回はもう慣れて、さすがに一人で回れるようになったんで、一人で歩いたり、銭湯行ったりして。動けるところをまわったりしてることが書かれてますね。

―僕、鹿児島行ったことないんですけど、この本に出てくる、なんてことない感じの飲み屋とかパン屋とか、普通の旅行じゃ行けないじゃないですか。

岡本:うん。知らなきゃね。

―そういう、旅行先の土地土地を満喫したいのに、どうしても表面をなぞって終わり、みたいなことが多いでしょ。それを思うと、結局、旅行も場所じゃなくて、人なのかなあ、って思ったんですよね。

岡本:だと思うね。やっぱ、その街が楽しいかどうかって、そこに知ってる人がいるかいないか、知ってる人と趣味が合うか合わないかって、すごい大きいじゃないですか。僕は幸いにも中原くんがいたので、彼にいろんなお店や人を紹介してもらって。元々の好みが合うから楽しいでしょ。それでブログに「楽しい楽しい」って書いて。

―元々はそれで生まれた本ですもんね。

岡本:普通の旅行はさ、案内人いないのが普通だから。で、案内人の顔が見えるガイドブックってあんまりないじゃない。

―そうですね。

岡本:普通は100軒のお店が載ってて、全部褒めてあって、全部同じようなことが書いてあるから、結局どれにしたらいいかわかんなくて、あんまり有益な情報が載ってる感じの本ってあんまりないじゃない。たとえば3泊4日なら10軒もまわれば充分だし、その10軒の好きな理由っていうのが、キチンと伝わるように書いてあって、そこに共感してもらえれば、案内人のいない人にとってのガイドブックになるんじゃないか、なればいいな、って思ったんだよね。

「鹿児島にはわかりやすい故郷感がある。」
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―人に恵まれたこともあると思うんですけど、鹿児島の街が他と比べて特別、っていうのも、やっぱりあったんですか?

岡本:うん。仲のいい人がいて、その人が案内してくれる、っていう意味では、福岡にもいるし、京都にもいるし、って感じなんだけど。鹿児島が特別だったのは、本にも書いたけど、向田邦子が小さい頃に鹿児島に2年くらいいて、その時のことを書いてるエッセイがあるんですよ。「故郷って思えるところがない自分にとって、鹿児島はすごい自分の故郷のように思える」って書いてあって。僕もまさにその通りっていうか、同じ感じがあるんですよ。鹿児島のわかりやすい故郷感が、ストレートにグッと来るっていうか。

―へえー。たとえば、どういう?

岡本:僕は北海道の夕張出身で、炭坑の街なのね。でも今は、僕の通ってた小、中、高と、全部廃校になって、駅もなくなってる。小さい頃の友達もほとんど住んでない。しかも今は石炭掘ってないから、風景も変わっちゃってるの。石炭掘ってる間は非常に人工的な街だったんだけど、石炭掘るのやめたらまた自然に戻るわけ。僕がいた頃は川で石炭洗うから、川が真っ黒なんですよ。でも今は普通にきれいな川が流れてて。だから自分が見てきた景色が、もうないわけ。

―はい。

岡本:でも鹿児島って、いつ行っても桜島があって、噴煙がワーッてなってるから、戻ってきた、って感じがすごくあるのね。あと、鹿児島に行くと、植生とかも違うし、民族的なルーツも違う気がするんですよ。南から北上してきた民族の子孫、って感じがするのね。でも鹿児島より北に行くと、大和民族ばかりっていうか。そこに線引きがあって。

―手塚治虫の『火の鳥・黎明編』の、ヤマトとクマソみたいな...。

岡本:そうそうそう。もしかしたら鹿児島は、東南アジアの最北端なんじゃないか、っていう話をよくするんだけど。鹿児島から南は別の国になってて、琉球とか薩摩とか違う民族がルーツで、っていう感じが、少しエキゾチックに感じるんですよ。まあ、ちゃんと検証してるわけじゃないから、俺はそう思う、ってだけなんだけど(笑)。

―故郷でもあり、異国でもある、と。

岡本:うん。行けばわかると思うんだけど。直角が行っても、もてなしてくれると思うよ(笑)。

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