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HIP CINEMA

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大森望 Nozomi Omori

1961 年生まれ。SF 翻訳家、書評家。著書に『現代 SF1000』など。責任編集の『NOVA』で日本SF大賞特別賞、星雲賞自由部門受賞。

SF映画は映画の王道である。

観たこともない情景を銀幕にありありと映し出して観客をびっくりさせるのが、映画という“見世物(スペクタクル)”の本来の機能。だとすれば、だれも知らない遥かな未来や銀河の彼方を銀幕に映し出すSF映画こそ、いちばん映画らしい映画かもしれない。そもそも、フランスのジョルジュ・メリエスが、ジュール・ヴェルヌと H・G・ウエルズの新作SF小説をヒントに、思いつくかぎりの特撮を駆使して、史上初のSF映画『月世界旅行』をつくったのは、1902年のことだった。それから113年経ったいまも、観客は、あんぐり口を開けてスクリーン上の驚異に見惚れるために、劇場に通いつづける。けだし、SF映画は映画の王道なのである。

2001年宇宙の旅

『インターステラー』を観て、あらためて『2001年』の偉大さを実感。キューブリックがSFを正しく理解していたとは必ずしも思えないが、クラークの起用も含め、ジャンルに対するリスペクトがSF的にも傑作を生んだ。¥2,381(BD)、ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント。

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ウォーリー

SF映画もピクサーがつくるとこうなるという見本。細部までよく考えられて隙がない。タイトルロールのウォーリーよりも、最強のツンデレヒロインたるイヴの造形と動きがすばらしい。映画史とSF史に残るロボット。ウォーリー ブルーレイ・プラス・DVDセット、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン、発売中。©2015Disney/Pixar

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バック・トゥ・ザ・フューチャー

『スター・ウォーズ』が宇宙SFの代表なら、こちらは時間SFの代表。タイムトラベル先が、(映画公開の年から)30 年過去の 1955 年という設定も絶妙だった。『2』と『3』を合わせ、3 部作としても完璧な仕上がり。¥1,429、NBC ユニバーサル・エンターテイメント。

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ブレートランナー

未来のイメージを決定的に塗り替えた一本。原作とはまるで感触が違うものの、P・K・ディックの小説がいまも読まれ続けているのはこの映画のおかげ。ディック訳者として、『ブレードランナー』に足を向けては寝られない。¥2,381、ブルーレイ製作 25周年記念エディション、ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント。

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マルコヴィッチの穴

スパイク・ジョーンズの監督デビュー作。世間的にはSF映画扱いされていないだろうが、よくもまあこんなへんなこと考えたなあいうアイデアの冴えは、全盛期の筒井康隆クラス。脚本のチャーリー・カウフマンは天才かも。廃版 。

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機動警察パトレイバー 2 the Movie

押井守のSF映画群から一本だけ選ぶならこれ。ベイブリッジ爆破事件の真相を演歌のカラオケビデオに映り込んだ映像から探るくだりがすばらしい。ここ数年、この映画の生々しさとリアリティがどんどん増してきている。¥1,900、バンダイビジュアル。

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時をかける少女

原田知世をフィーチャーしたアイドル映画として完璧なだけでなく、日本における時間SF、とりわけ“時間ループもの”の人気を決定づけた名作。思えば“聖地巡礼”の習慣も、この映画の舞台、尾道からはじまった。¥2,800、時をかける少女 デジタル・リマスター版』、KADOKAWA 角川書店。©KADOKAWA 1983

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エイリアン

閉鎖空間としての宇宙船に着目したSFホラーの古典。昨年病没したスイスの天才画家 H・R・ギーガーの特異なデザインが強烈なインパクトを与えた。2012年には、前日譚にあたる『プロメテウス』も公開されて いる。¥1,419、20世紀フォックス ホーム エンターテイメント。

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