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HIP CINEMA

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アサダアツシ Atsushi Asada

放送作家で脚本家。子供番組からゾンビものまで幅広く活躍。仕事や近況に関してはTwitter@slantsenseで。

不安こそサスペンス映画における最大のご馳走 。

サスペンス映画の楽しみ方というとまず挙がるのが“犯人当て”。昔もいまもそれがサスペンス映画の王道に変わりないが、他にも多彩な楽しみ方ができるのがこのジャンルの魅力。例えばおすすめしたいのが“放置プレイ系サスペンス”(8本のなかでは『鳥』『ゾディアック』)。なぜ犯人は犯行に及んだのか? 一体何が目的だったのか? 事件はどんな結末を迎えたのか? など、本来なら納得行く説明がされて観客は安心して映画を忘れることができるのに、それが一切なく放置されるので心が宙ぶらりんのまま。当然見終わったあとも疑問は頭のなかで膨らみ続け、やがて不安へと変わる。しかしこの不安こそサスペンス映画における最大のご馳走なのだ。存分に召し上がれ。

ゾディアック

アメリカで実際に起きた未解決事件を映画化した作品。しかし本作は犯人探しより“犯人探しに取り憑かれた男”がメイン。殺人事件は人を惹きつけ魅入られると2度と戻ってこれない、そんな底なしの恐怖が味わえる。¥2,381(BD)、ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント。ブルーレイディレクターズカット。

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トールマン

あの悪名高い『マーターズ』の監督ということでホラー映画とタカをくくって観たら全く予想しなかった(できなかった)展開とラストに茫然自失。“タカをくくって観たら想像の遥か斜め上だった系映画”のベスト1! ¥3,800(DVD)、キングレコード、Blu-rayも発売中。

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ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金

天才的頭脳の犯罪者を描いたサスペンス映画は数あれど、本作は何も考えず即物的に罪を重ねる偏差値ゼロ犯罪者が主人公。あまりにバカすぎて逆に警察も動きが読めずなかなか逮捕できない、実話というのも吃驚。¥1,429、パラマウントジャパン、発売中。

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愛してる、愛してない

この題名で主演が『アメリ』のオドレイ・トトゥだから甘酸っぱい恋愛映画かと思ったら大間違い。本作はまさしく“裏アメリ”。こじらせ女子がこじらせ過ぎて遂には“捻じ曲がり女子”となり...ラストは絶叫必至。廃版。

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眼には眼を

不可抗力で患者を死なせてしまった医師がその家族から復讐される話。復讐といっても直接危害を加えられるのではなく、ジワジワと心理的に圧迫されながらやがて究極の絶望を与えられる。ラストシーンはトラウマ必至 。¥3,800、マーメイドフィルム。©1956 STUDIOCANAL

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5人の囚人が自由を求めてひたすら穴を掘り続ける、それだけの話なのに全編緊張の連続。静まり返った刑務所のなかで看守にバレないように作業を進めるシーンは観てて息がつまり心臓が痛くなる。予想外のラストに絶句。¥3,800(BD)、アイ・ヴィー・シー、4月24日発売

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妻は告白する

山で遭難した際、夫のロープを切っ て助かった妻が実は計画的犯罪だったのではと嫌疑をかけられる法廷サスペンス。見どころは妻を演じた若尾文子。貞淑な妻が叶わぬ愛に狂う女へと変わる姿は壮絶。¥2,800、KADOKAWA 角川書店。©KADOKAWA 1961

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ある日突然鳥が大群で人間に襲いかかってくる、ただそれだけの話だがこれが滅法怖い。何故襲うのかは一切描かれない、数が多すぎて解決方法もない。とにかく映画を観てる間も終わったあともずっと不安が続く。¥1,429、NBC ユニバーサル・エンターテイメント。

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