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新大久保 昔のふるさと

犬だからって先入観が邪魔しちゃもったいない。

とはいえ犬肉を食べるのは初めてのことだった。見つけたのは好きな新大久保、近くにレストランの隣接してない落ち着いた雰囲気と、何度か前を通るたび明らかに美味そうな外観が気になり、最終的には他ではありそうで見かけない、カムジャタンと似た鶏ジャガイモ鍋のメニューに惹かれて入った韓国家庭料理の店「昔のふる里」だ。

気さくな店のお母さんに話を聞けば、やはり、日韓合同開催だったワールドカップを期に乱立した新大久保の韓国料理屋群よりもずっと前、14年前から店を構える界隈でも老舗の部類に入る店とのこと。遡れば、今は韓国に帰ってしまったお義母さんが最初に歌舞伎町に開いた店もあるという。店内のメニューに、これまた普通の店ではなかなか見かけないどじょう汁を見つけ、嬉しくなる。

「犬肉料理は相手の体を思いやる韓国流の思いやりに、とても適した料理。食べれば元気が出る、日本料理に置き換えるとすっぽん料理みたいな感じかな」なるほど。
「動物愛護の人とかでいろいろ言う人いるけどね、昔からある文化だから。食べる赤犬は牛や豚と同じように食用だし、私犬も飼ってるし(笑)」というわけで蒸し肉と鍋の両方をいただいた。

肉を事前に4時間茹でる時、まるで赤ちゃんを見るように目を離さず、まんべんなく火が通るように茹でるとのことで、肉の柔らかさにまず驚く。滑らかに溶ける角煮のような感じ。蒸すのは大量のエゴマの葉、ニラ、ネギと一緒で、それらのおかげか特に匂いもしなかった。にんにくしょうが、お義母さんが韓国で作って送ってくれるという秘伝のミソ、ゴマの粉とゴマ油を合わせたタレが絶妙で、自分でも驚くほど抵抗なく、美味い美味いと胃に入る。鍋も美味かったが、個人的には蒸し肉が気に入った。

因みに昔のふる里は、どじょう汁もどじょうは韓国のものの方が身の味が濃いと、本国から取り寄せるこだわりを持つ。犬は日本のすっぽんのように値もそれなりに張るのでやはり少し特別ではある。が、これからしばらくは、新大久保に行けばついついここに足が向いてしまいそう......。

新大久保 昔のふるさと
住所:東京都新宿区大久保1-13-16
電話番号:03-3232-8223
営業時間:17:00〜3:00、16:00〜0:00(日・祝)
定休日:なし




企業秘密だらけの厨房まで入れてくれたお母さん、感謝!
これが犬の肉。見た目は全然普通。
本場のマナーで小皿も充実しております。
雑誌、広告、CDジャケット、ドキュメンタリーなどで、世界各地のディープな場所やモノ、人を中心に紹介することで有名な写真家。ダライラマ14世を写真に収めたことでも知られる。
最近は書き仕事ばかりの活性家。説明し難い日常はmadfoot.jp"独壇場"にて報告中。25日にDJ@青山OATHで、STUDIOVOICE、KINGの連載も是非。酒を止めたら人格に変化が!