Number 7
神田 勝漫

無駄と遊びを省き、いいところをいいように。

とんかつ屋の佇まいが好きだ。無駄を削ぎ落とし、簡潔、清潔、質実剛健。言葉にして書けばただ豚肉を揚げるだけの料理に、どうしてここまで味の差が生まれるのだろう。関東の食べものとされる豚料理。ある意味最も素材も腕もためされるであろう美味いとんかつを食べようと、店を構えて30年、淡路町は勝漫さんにお邪魔した。

早速見せていただいた豚肉の塊は、素人目にも美味さが伝わってくる逸品。
「今のチーフで3代目なんだけどね、初代は厳しい人で、肉屋さんが納得いかない肉を持ってくるとぶん投げ返してたらしいのよ。納得行く肉屋さんに落ち着くまで何軒も代えて、今はもう最高。でも未だにその肉屋さんも、そう、お米屋さんもビクビクしながら持ってくるかな(笑)」
それだけで安心できるようなエピソードである。チーフが続ける。
「初代は日本橋のかつ吉さんで修行なされて独立された流れで、揚げ油は植物油にゴマ油をブレンドしたものを使っています。私は出来るだけ初代の味に忠実に、『昭和の御馳走』をイメージして揚げさせてもらっています」

若くして亡くなってしまった"男が惚れる男"だったという初代の味。最近チーフが2代目から3代目に引き継がれたが、その味は今も店に出ているという初代のママが管理人として、しっかり護られている。
「普通のロースかつで1500円とってるからね、手抜きできないでしょう? でもこの値段も開店当時から変わってないわけだから、当時はとんかつっていったら本当に御馳走だったのよね。若者は一口かつから始まって、出世したら特ロース食べに来な、って」

そのまま食べても美味しいくらいの高級パン粉もケチるなというのが初代からの教え。どれもが甲乙つけ難い美味さを誇るロース、特ロース、特ヒレ、大かつ丼など、各々のお気に入りを求め店に繰り返し来るお客さんで、勝漫は支えられている。店の名付け親、故はらたいらさんは何を求めて店に来ていたのだろう。

神田 勝漫
住所:東京都千代田区神田須田町1-6-1
電話番号:03-3256-5504
営業時間:11:00〜14:30、17:30〜20:30(月〜金)、11:00〜14:30(土)
定休日:日曜日・祝日









豚は茨城の方から。付き合いの長いお肉屋さんが、一番いいのをまわしてくださるとのこと。
左からロース、特ヒレ、特ロース。ロース派も一度はヒレを是非。
ゴマ油がブレンドされた美しい油。
切る音を合図にご飯をつぎ、赤出しを用意。
キャベツが山でレモンは三日月。
大かつ丼は玉ねぎでなく長ねぎを、卵は若鶏卵の小さいのを2つ使用。
雑誌、広告、CDジャケット、ドキュメンタリーなどで、世界各地のディープな場所やモノ、人を中心に紹介することで有名な写真家。ダライラマ14世を写真に収めたことでも知られる。
プロボクサーを目指しトレーニングに集中するため、書き仕事に絞り中の活性家。ブログ形式になり、高頻度で更新を続けるmadfoo.jp"独壇場"で説明し難い日々を報告中。