洋服って溶けてしまえばいいのになって。

―買い物は迷わず即決されるほうですか?

ソニア:そうですね。とりあえず私は、これ可愛い欲しい、この値段でこれなら買える! と思ったら、買っちゃうタイプなんですよ。この前すごく面白いことを言った人がいて、私もその時に本当にそうであればいいのになって思ったことがあったんですけど。

―どんなことですか?

ソニア:洋服って溶けてしまえばいいのになって思ったんですよ。

―溶けてしまえば!?

ソニア:無くなってしまえばいいなって思ったんですよ。例えば食べ物は食べたら無くなるじゃないですか。高いワインとか飲んだりする人は罪悪感ないし、美味しいものを食べて、温泉に泊まったりすると一晩で4、5万無くなるじゃないですか。でも、洋服っていうのは残るから、次に買うときにどうしても考えちゃうでしょう。だから洋服も3年くらいで無くなればいいのになって(笑)。そうすると買い換えなきゃ! みたいな気持ちになるからね。

―確かにそうですね(笑)。

ソニア:まぁそれは無理なんですけどね(笑)。

―東京って場所によって雰囲気がだいぶ変わると思うんですけど、よく買い物をする好きな街はありますか?

ソニア:銀座好きですよ。

―どの辺りが好きですか?

ソニア:まあ、全体的に好きですけどね、銀座は。なんかね、古い感じっていうか色んな人がいるのが好きです。地方のお客さんがいるのもいいし、外国人がいるのもいいし。渋谷はなんか若い人しかいなかったりするじゃないですか。銀座はなんか、若い人もお年寄りも、観光客も色んな人がいて、それが結構面白いなって思ったりして。青山はまたちょっと独特。青山も好きですけど、ここは自分の生活の場所みたいになってるから。銀座は行くとわくわくしちゃいますけどね。銀座に来ちゃったよーみたいな。そういう意味では独特の雰囲気がある街だなって思います。

―物との出会いについてなんですが、私たちは例えばソニアさんの本を拝見して、それを参考に買いに行ったりすることも多いですが、ソニアさんは何かの情報をもとに買い物をすることはありますか? やはりご自分で見つけることが多いのでしょうか。

ソニア:そうですね。自分は常にそういう風に直感的に買い物をしてきたので。それが何でいいんだろうってことは後から追求するタイプなんですよね。ですけど自分でお店を経営していたり、スタイリストっていうお仕事をしていると、やっぱりある種の宿命みたいなのもあって、展示会を回って勉強したり物に触れてみたりとかはしています。でも基本的には、ぱっと見てまず好きか嫌いかですね。どうすればそういう良いものが見つけられるのかってよく言われるんですけど、それは分かんないです。好きで、量を見てればっていうのはあると思うんですよね。本当に洋服が好きで、物が好きで、歩いて見て、目で確かめて。あとは確かめるだけではなく、やっぱりいいなと思ったら、お金を払ってそれを所有してみるっていうのもすごく大切なことだと思いますね。

―自由に使えるお金の額というのは人それぞれ決まっていると思いますが、それをちゃんと使うっていうのはすごく大切なことだと思います。

ソニア:大切ですよー。私、貯金ほどばかばかしいものはないと思ってて。......まぁばかばかしいってことはないですね。貯金も大切だと思います。借金はよくないと思いますけども。例えばですけど、ある映画がある、それをすごい気にはなってるんだけど、自分で見に行かないで、人から話聞こう、みたいな。物を買わないのはそれと一緒だと思うんですよ。人からそれどういう映画だった? って聞いて、それいいね! って言うのと、直接それを見に行くのとは違いますよね。例えばパリに旅行に行った人に話を聞くだけなのと、実際行って見るのとでは違うじゃないですか。

―違いますよね。

ソニア:物も同じで、見て満足する部分もあるかもしれないですけど、毎日の生活の中で実際に使って初めて、本当にその物がどういうものなのか分かる部分もあると思うんですよ。

―確かに!

ソニア:あと、今後は買う側の責任ということを追求していきたいなって思うんですよね。作るほうだけじゃなくて、消費者としてやっぱり、物を買うっていうことはどういうことなのか、世の中のどういうことを自分はサポートしてるのかっていうのを考えたほうがいいと思います。まあ色んな使い方があるんですけど、その中でもお金を出すっていうのはどういう行為かということを消費者としてもっと考えて、買うほうも勉強したほうがいいなと思いますね。

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今回はここまで。後編ではさらに深いソニアさんの買い物観、そして魅力的な男性像について伺っています。近日公開ですので、お楽しみに。

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ソニアさんがプロデュースする初のセレクトショップとして、2003年に代官山にオープンした「アーツ&サイエンス」。ヴィンテージの什器には食器やリネン、アロマ類などのデイリーアイテムを中心に、ソニアさんが実際に使って気に入ったものが並びます。

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2009年1月にはメンズアイテムを取り扱う男女のためのお店「メンズショップ BY アーツ&サイエンス」が待望のオープン。質の高いオリジナルアイテムをはじめ、独自の審美眼で世界中から集められたアイテムが揃います。

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