Number 29
東麻布 エルカミニート

悪童絶賛のアルゼンチン料理。

アルゼンチンの悪童と言えば、もちろんそれはマラドーナのことで、そのマラドーナが絶賛したアルゼンチン料理が東麻布にあるという。興味を掻き立てられた僕等は、最寄りの大江戸線赤羽橋駅から徒歩5分、大通りから少し中に入ったところで12年、店先に大きなアルゼンチン国旗を揺らすレストラン、エル・カミニートにお邪魔させていただいた。

南米の中でも、特に先住民インディオ色が薄く、ヨーロッパのような印象があるアルゼンチン。通算約10年間アルゼンチンに住まわれたという浅井シェフのお話によると、やはりインディオの人口比率は2%程度。後はスペイン系が約4割、イタリア系が約6割を占める、移民の国というのが実体とのこと。それだからか、普通にメニューにパスタやピザが名を連ねる中、アルゼンチンらしさとは、どんなものなのだろう。

「とはいえアルゼンチンも南米は結局南米で、みんな明るいよ。それで銀行なんかですら、すぐ誤摩化そうとするんだよ(笑)。料理はヨーロッパの影響もあるんだけど、とにかく肉。味付けも濃厚で、南米の他と比べても、ある意味独特かもしれないな」
80年代後半のスーパーインフレ時、日本の7倍の国土に約1億頭もの牛がいたというアルゼンチン。元々はフランス料理を目指しながら、アルゼンチンの日本大使館に辿り着いて4年間働き、その魅力に魅了され、その後も帰国を挟みつつ6年間を過ごした浅井シェフ。
「昔は六本木とか、アルゼンチン料理が東京にできたりするんだけど、大抵力を入れてるのがタンゴで、肝心の料理が高くてマズいの。それなら、『オレがアルゼンチンで食べてた料理を出そう』ってね」

湧き出るように、料理のお話からサッカーに政治、お詳しかった都内ラーメン事情の話までしてくださった浅井シェフ。御本人の姿に陽気なアルゼンチン人気質を垣間見つつ、肉の旨味と、それと勝負して負けないコクの、葡萄の風味香る現地ワインの向こう側に、温かな家庭の味が詰まっていて、腹だけでなく、心も満たされた。

東麻布 エルカミニート
住所:東京都港区東麻布1-12-11
TEL:03-3582-9380
営業時間:18:00〜22:00(月〜土)
定休日:日曜日・祝日









マラドーナをはじめ、アルゼンチン要人達の写真等が飾られた店内。
隠れ家的で、落ち着く店内。
豚の血のソーセージ。見た目に反して食感は柔らかく、とにかく美味い。これにもチミチューリがとても合った。
本当の家庭料理、ポレンタ。トウモロコシの粉と牛乳、上にトマトソース。
お酢をベースに野菜をきざんで油と混ぜる、自家製チミチューリ。何にかけても美味しかった。
マテ茶。食物繊維が豊富でカフェインも少量含み、お通じにいいとのこと。
雑誌、広告、CDジャケット、ドキュメンタリーなどで世界各地のディープな場所やモノ、人を中心に紹介することで有名な写真家。ダライラマ14世を写真に収めたことでも知られる。
惜しまれ休刊したSTUDIO VOICE誌で、約4年間、計44回続いた秘境を巡る連載「SACRED PLACES」(青幻舎)の刊行、もう少しかかる気配。その他、この連載「白眉の食事」等、諸々書籍化を控え、基本家に籠る地味な日々。