vol.24

Craig Atkinson

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日本とカナダの服づくり事情を知り尽くした達人
クレイグ アトキンソンに聞く、本物のモノづくりとは。

自身のブランド〈ウィングス アンド ホーンズ〉、〈レイニング チャンプ〉を展開し、自社工場までも運営する"服づくりの達人"クレイグ アトキンソン。彼が作り上げる服は着心地、シルエットともに秀逸。今回は、その丁寧かつ計算されたモノづくりに隠された秘密に迫ります。

生まれ育ったカナダのライフスタイルを表現したい

―まず、自身のブランドを始められたきっかけは何だったんですか?

クレイグ アトキンソンさん(以下クレイグ、敬称略):カナダでOEM商品の生産や古着の卸しの仕事をずっとやってきました。その期間、様々なブランドから依頼を受けて新しい生地を開発したり、アメリカやカナダから集めてきた古着を日本に卸していたので、そこで培ったモノづくりのノウハウと古着から学んだ知識を活かして、いつか自分自身のブランドをスタートさせたいと思ったのがきっかけですね。

―そこで満を持して、2004年に〈ウィングス アンド ホーンズ〉をスタートさせたと。

クレイグ:そうです。ブランドをスタートさせた当初は、自然と自分の好きなモノから作っていくじゃないですか。だからカットソーのアイテムがほとんどでした(笑)。そこから少しずつ他のアイテムを増やしていって、最終的にトータルでコーディネートできるブランドとしてやっていこうというスタンスでしたね。

―最初は、のんびりしたペースだったんですね。

クレイグ:でも、作っているうちにカナダの特徴を出していきたいと思うようになりました。カナダ人が普段から街の中で着られる様なモノとか、カナダの気候に合ったモノとか。さらに古着のテイストをミックスさせたアイテムを作りたいとか。だんだん欲がでるようになりましたね。あと、カジュアルファッションと言えば、みんなアメリカだと思うじゃないですか。でも僕は、あくまでもカナダのテイストを大切にした服づくりをしていきたいと思っています。

―ずばりカナダとアメリカのファッションの違いは何ですか?

クレイグ:アメリカは、無骨でヘビーデューティなモノづくりという印象が強いですが、カナダのファッションは、ヨーロッパから影響を受けたトラデョナルで洗練された雰囲気を持っています。カナダの生地の生産地のほとんどがヨーロッパに近い東部のケベックやトロントなので、自然とその影響を受けているんでしょうね。

―なるほど。では〈ウィングス アンド ホーンズ〉の名前にもカナダの特徴が入っているんですか?

クレイグ:カナダと言えば大自然だと思うので、その中で生活する動物が持つ特徴を名前の中に入れました。あとウィングス(羽)は天使、ホーンズ(角)は悪魔という意味が隠喩として入っています。これは人間の持つ二面性を表したもの。でも深い意味は無くて、ちょっとした遊び心なんですけどね(笑)。

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シンプルにデザインされたブランドロゴには、カナダの大自然とヨーロッパから伝わったトラディショナルなイメージが詰まっているそう。

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日本では何かとスウェットに注目が集まりますが、ジャケットのクオリティも抜群なんです。今季モデルは、ミリタリーやスポーツの要素が盛り込まれた秀作! ¥59,850

日本人の良いモノを生み出そうとする職人気質が素晴らしい

―日本に長い期間、滞在されていた経験があるとお聞きしました。その期間、日本のファッションには影響を受けましたか?

クレイグ:特にモノの良さとかモノづくりに対する姿勢に影響を受けましたね。もうこだわりが凄い。正直、日本に滞在するまで、全く品質のことは気にしていなかったですね。でも日本人は違いました。みんな服に対して真剣で、ステッチひとつだけで見る目が違う。

―4本針とか、チェーンステッチですか?

クレイグ:そう、4本針やチェーンじゃないとダメだっていうこだわりがありました。そのマニアックな部分を日本からいただきましたね。あと、上質な素材を生み出す技術が、とにかく素晴らしいです。

―それは日本人の職人的な気質に影響を受けたということですか?

クレイグ:そうです。

―ということは、今作られているモノには、その気持ちや技術が反映されているということですね。

クレイグ:必ず入れていますね。要するに、影響を受けたのは日本のファッションスタイルというよりも、日本人の考え方です。もしかしたら、日本人は自国の工場のレベルの高さに慣れてしまって、その良さに気付いていない人が多いのではないでしょうか。僕はカナダを離れてから、カナダの良さに気付いたので、そう思います。

―そんなにレベルが高いですか?

クレイグ:高いですね。

―でもカナダの自社工場も、相当レベルが高いと聞きますが。

クレイグ:技術レベルを高くしないと今の時代、生き残れないですから。そして何より、良いモノを作りたいという気持ちが強いからですね。

―日本で売れるアイテムに特徴はありますか?

クレイグ:僕が作る服はベーシックなので、欲しいと思ってくれるお客さんは、デザインというよりも素材や縫製の良さを気に入ってくれることの方が多いと思います。それが本当に嬉しいです。

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天然素材にこだわり、4本針の編み機で作り上げられた豊かな風合いは言葉を失うほどの美しさ。ここまで完成されたスウェットは、なかなか出会えない代物です。

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