vol.82
ポスト オーバーオールズが示した店作りの真髄。
「洋服」と「内装」と「人」が紡ぎ出す1つの空間。
アメリカのヴィンテージウェアに魅了された日本人の青年が、自らニューヨークへと渡り、服作りを始めたのが1992年。それから20年弱。今では、自らを魅了したヴィンテージウェアを凌駕するコレクションを展開するまでにいたった〈ポスト オーバーオールズ〉。先頃オープンした待望の路面店では、ヴィンテージのイメージを払拭したクリーンな内装で多くの来場者の期待を良い意味で裏切ってみせた。その内装を手がけた渡辺修氏(グーファクトリー)とポスト オーバーオールズを主宰する大淵毅氏が語る「店作り」について。
20周年を目前に控えて東京出店を決意した理由。
ーまずはショップオープン、おめでとうございます!
大淵:ありがとうございます!
ー早速なのですが、まもなく20年を迎えようとしている〈ポスト オーバーオールズ(以下ポスト)〉が何故、今東京にお店を出そうと思ったのですか?
大淵:自分で言うのもなんですが、ポストはとても世界観が理解しにくいブランドだと思うんです(笑)。日本人がアメリカでファクトリーを設けていて、しかもパッと見はアメリカのワークブランドで、といった具合に。
ー確かに......。とはいえ、これまでは積極的にブランドの詳細や世界観をアピールしてこなかったですよね。
大淵:それでも良いのかなぁ、と思って淡々と物作りをしていましたね。ただ、最近になってブランドの性質上、この世界観をきちんと理解してもらうことも必要なのかな、と思うようになったんですよ。年齢を重ねたからですかね(笑)。
ーその結果、東京での出店に繋がったわけですね。青山学院の近くという立地もブランドショップとしては珍しいのでは。
大淵:実は場所選びは慎重に考えました。味わい深く、飽きの来ないのがポストの特徴だと考えると、渋谷や原宿ほど若くもないし、中目黒だとファッション性が強過ぎる。作っている僕らが自然体でいられる場所、それがこのエリアなのかなと。
ー渡辺さんはポストに対して、どんな印象を持っていましたか?
渡辺:10年以上前に神戸のセレクトショップのディスプレーを手がけたときに、そこでコーナー展開されていたのがポストだったんですよ。アメリカの片田舎のワークブランドだと思っていたら、日本人が作っていると聞いて驚いたのを憶えています(笑)。
ー大淵さんは何故、グーファクトリーに内装をお願いしたのですか?
大淵:店の話が出る前から、お願いするならグーファクトリーだなと(笑)。というのもウチの東京のスタッフが渡辺くんと旧知の間柄で、僕自身プライベートでも交流がありましたからね。渡辺くんのことは信頼していたので、オファーするときは具体的な案も出さず...。
ーえええええっっ!!
渡辺:そうなんですよ(笑)。とはいえ、これまでのお付き合いで人となりもわかっていたし、馬も合う。だからそんなにビックリするようなオファーだとは思いませんでしたよ。
大淵毅 (写真・左)
1962年東京生まれ。ヴィンテージのワーク、ミリタリーウェアに対する深い造詣をベースにした確固たるプロダクトメイキングで人気を博す〈ポスト オーバーオールズ(POST OVERALLS)〉の主宰者。
www.postoveralls.com
渡辺修 (写真・右)
1964年東京生まれ。1987年に装飾家沖山潤氏と出会い、装飾の世界へ。1998年にデコレーション会社「PATROL」在籍時の同僚であった持丸操氏とともに「GOO FACTORY(グーファクトリー)」を設立。
www.goofactory.com
オープンを記念して製作したカバーオールは〈エンジニアド ガーメンツ〉との共作。