HOME  >  CULTURE  >  FEATURE

CULTURE_FEATURE

  • OLD
  • NEW

Interview with Dirty Projectors ダーティー・プロジェクターズ〜追求する不完全さ〜

2012.12.12

このエントリーをはてなブックマークに追加
cf_dirty_projectors_main.jpg

前作『ヴィッテ・オルカ』で世界中の音楽ファンを虜にしたダーティー・プロジェクターズ。キャリア通算5作目にして、バンドはひとつの到達点に登り詰めたと誰もが思ったかもしれない。しかし今年7月、彼らが発表したニュー・アルバム『スウィング・ロー・マゼラン』は、2012年最大の衝撃として、またしても世界を驚かせた。進化を遂げる彼らが追い求める「不完全さ」とは何か。

Edit_Yohei Kawada

Dirty Projectors ダーティー・プロジェクターズ
2002年結成。アメリカ・NYはブルックリン出身の6人組バンド。幾度かのメンバーチェンジの後、デイヴィッド(Vo、G)、アンバー(G、Vo)、ブライアン(Ds)、ヘイリー(Vo)、エンジェル(Vo)の現在の編成に。2009年、通算5作目となるアルバム『ヴィッテ・オルカ』でその評価を世界的なものにすると、翌2010年に初来日。今年7月、待望のニュー・アルバム『スウィング・ロー・マゼラン』をリリースし、10月には朝霧ジャムと来日単独公演を大成功させた。

「まさにアイスクリームの味が変化していく部分を表現したい」

-先日の「朝霧ジャム」でのステージはいかがでしたか?

デイヴ: 会場がスゴく美しい景色で、ほんとうに素晴らしいステージだった。日本のオーディエンスは、僕らの音楽を本当によく聴いてくれているのが分かったしね。ただ、若干時差ボケが残っていて、体調だけは優れなかったよ。演奏は良かったんだけどね。

-実際、今日のライブ(※インタビューは10月9日(火)に開催された渋谷O-EASTでの公演の直前に行われた)もチケットはソールドアウトで、開演前にもかかわらず多くのお客さんがライブハウスの前に溢れていましたよ。

デイヴ: (満面の笑みでうなずく)

-そういえば某インタビューで、あなたが「メジャー」と「インディーズ」の境界線はもはや存在しないと語っていたのを思い出します。

デイヴ: ああ、確かに。90〜00年代はメジャー対インディーという構図がはっきりとあって、企業的なものに対する、歴史が脈々とあるインディー文化、という立ち居値だったわけ。でも、ソーシャルメディアが一般化したことで、もはやそんなものは関係なくなってしまった。インディーでも派手にやってる連中はいくらでもいるし、すべて簡易でフラットな状態にあると思うね。

-アーティスト自身のプロモーションのやり方も多様化してますからね。

デイヴ: ただ、自分たちとしては、そういったことは正直どうでもいい。昔のインディーな精神に基づいて音楽を続けたいだけで、例えば、こういうインタビューひとつとっても、できるだけコミュニケーションを取って、自分の口で語るのが大事だと思っているよ。

-そのような精神を持ったバンドが高く賞賛されている一方で、メジャーなものがパッケージングされて、もの凄い勢いで消費されているという現状はやはり健康的とは思えないですけどね。

デイヴ: それに関してはもう一つ、どうしても言いたいことがあるんだ。

cf_dirty_projectors_sub01.jpg

-なんでしょうか。

デイヴ: これは本当かどうか分からないけど、ある時期のバンドがアイスクリームのフレイバーのひとつだとすれば、今のお客さんはその味を求めてライブに行くし、物を買うんだと思う。それに対して、80年代や90年代というのは、ひとりのアーティストやバンドが何年か掛けてどう成長していくのか、変わっていくのかを見ていたと思うし、それが楽しみ方のひとつだったわけ。

-なるほど。

デイヴ: もう少し細かく言うと、今はこの味が食べたい、この曲が聴きたいと、なんでも選ぶようになってしまった。同じバンドでも、それぞれの味で細かく分けられていて、それを消費者は選んで買っていくんだ。あくまで僕の感想だけどさ...だけど僕らは、まさにその味が変化していく部分を表現したいし、見てもらいたいし、共有したい。だから常にアルバムごとの変化を心がけているし、あくまで自分たちはそうありたいんだ。

-その「変化」というのは、『Swing Lo Magellan』で如実に感じました。今までよりも緻密でタイト、そしてよりシンプルな音作りに徹しているような印象を受けたのですが、あなたたち自身、多くの発見に気づいた作品だったのではないかと思うのですが。

デイヴ: ありがとう。作曲という行為はいつも発見の連続なんだ。だけど、何かを発見しそこを目標に進んでいくと、また新たな発見をしてしまって、そこを目標にさらに進まなきゃならなくなる。それは創作活動で最も困難な部分だ。達成したと思った目標が、またさらに遠くなっていく。でも、それこそ自分の人生の宿命だと感じるようになったけど(笑)。

-(笑)。そういった意味では、今回1ヶ月間、山奥に籠ってアルバム作りに専念したことは、精神的な部分で良い影響を与えていると言えそうですね。

デイヴ: 様々な面に影響を与えていると思う。ひとつは、完全に世間から隔離されることで、ものすごく純粋なところから創作のアイデアや意欲が湧いてきたということ。もう一つは音響的な面で、木造の山小屋でレコーディングをしたんだけど、その建物がもたらす音だね。例えば、ドラムはすごくタイトで、密な感じに仕上がっているんだけど、そこに木造ゆえの温かみが加わったりね。空間的な要素というのは、すごく音に影響してくるね。

1  2

CULTURE FEATURE TOP

  • OLD
  • NEW