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コントに、粘土に、寺山修司 片桐仁が止まらない。『粘土道』と『レミング』 パルコ連続出演にかける思い

2013.04.11

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4月5日から始まり、連日多くの行列を生んでいる14年間の粘土道の集大成『片桐仁 感涙の大秘宝展 ~粘土と締め切りと14年~』。バトンタッチするように始まる寺山修司没後30年、パルコ劇場40周年記念公演の『レミング ~世界の涯までつれてって~』。作家としての感性と才能が炸裂する怒濤と感涙の大個展と、役者として寺山修司の世界に挑む演劇界注目の舞台。その中心で走り続ける片桐仁が自らの心境を語る。

Photo_Tomoyo Yamazaki【Toishi Management】
Text_ Ikki Mori
Edit_Satoru Kanai

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作家片桐仁の恍惚と不安

-前回、渋谷のポスターハリスギャラリーでの個展で6000人を動員して、ギャラリー前に長蛇の列が出来たと聞いていますが、片桐さんご自身はその反響をどう受けとめましたか?

片桐仁(敬称略/以下片桐): やっと来たか!?って、感じですよね。14年前に連載を始めた時に、これは1年か2年たったら、もう日本が黙ってないだろうな位の妄想を抱いてましたから...。でも、なかなか受けなかった。前回、渋谷のギャラリーにお客さんが6000人来てくださったときに、そうか!実物を見れば、みなさん分かってくれるんだなぁと思いました。舞台もそうですけど、やっぱり実感として、その場所で体感することが大切だと思うんですよね。

-その意味でも、より多くのお客さんに片桐アートに触れてもらう機会として、『感涙の大秘宝展』は大きな意味を持っていると思います。14年間の集大成的な趣もある今回、どんな思いでこの展示に望んでいますか?

片桐: 規模をぐんと大きくして、しかもパルコでやらせてもらうという夢が叶って、今回ほぼ全点、125点位あるんですけど、それが一堂に並んだのを見た時、やっぱり続けてよかったと思いましたね。継続の力って、こんなに凄いのかって思いました。14年間ってダテじゃないなって。基本、毎月やって、舞台の楽屋とかに持ち込んだり、あとは飲み会を断って家に帰って作ってみたいな、なんか付き合いの悪い奴だったんです、僕はね。でも、ほんと続けてよかった。

-現存するすべての作品が見られるだけでなく、『感涙の大秘宝展』ならではの目玉もあると聞いています。まず、片桐さん本人の音声ガイドっていうのは?

片桐: 前半は粘土作品の制作者である片桐斎仁吾郎、後半は粘土秘宝の発掘者であるジンディ・ジョーンズ(前半がジンディエリアで後半が仁吾郎エリアになります。)、2人のキャラクターが生声で解説します。加えて、今回のタイトルにもある通り「粘土と締切と14年」という、もろ片桐仁の現実も出てくるんで、最後は片桐仁本人がレポート。会場内に設置されたQRコードを読み込んで、スマホのイヤホンでお楽しみください。

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-もう1つの目玉が「締切工房」での公開制作ですが、何を土台に何を作るかはもう決まってるんですか?

片桐: 今回は洋式便器です。で、とにかくデカい!最初に粘土とかがこびりつかないように、養生テープというものを貼り込むんですが、その作業だけでも全然終わらない!でも、お客さんに少しでも来て欲しいし、1回だけじゃなく、2回も、3回でも来て欲しいので、ここは大変でも、やるしかない!しかし、いかんせんデカい。 作るのは、やっぱり動物にしたいなと思って、そしたら駄洒落みたいなのが面白い。タイのiPhoneでタイフォンとか、サイのiPhoneでサイフォンとか。そういうのが取っ付きやすいのかなと思って、今もまだ妄想中です。しかし、芝居の稽古もあるし、時間との戦いですね。

-『レミング ~世界の涯までつれてって~』の稽古も重なって、公開制作の時間を作るのも大変だと思うんですが、誰かに演出されるのではなく100%セルフメイドの粘土作品は、片桐さんの中でどういう位置づけですか?たとえば、小林さんが作演出するラーメンズや、色々な監督・演出家の素材となる俳優片桐仁とは違うものですか?

片桐: 粘土のいいところは、僕一人で成立しちゃうところですよね、めんどくさくない。そういう意味で言えば、ストレスはないですよ。見られながら作るっていう、ストレスはありますけど。失敗も成功も別に自分のせいだし、失敗したとしても、最悪、「間に合わなかった写真」っていうのも、ありじゃないかと。締切最終日は休演日ですけど、午後から収録が入っていて、午前中しかやれない。もう、どうしよう!やっても、やっても、終わんないですよ、面がデカくて...。

-公開制作や大量の展示を観て、実際に粘土作品を作りたくなった方へのアドバイスはありますか?

片桐: そういう方が100人でも200人でも、いや、まぁ1人や2人でもいいんですけど(笑)、どんどん出てきて欲しいですよね。僕も最初始めたときは、これは真似されちゃうぞと、僕より上手く出来ちゃったらどうしよう?とか思ったけど、誰もやらないんですよ、実際(笑)。1つ職人的な観点でアドバイスすると、とりあえず何かに粘土を盛ったら、剥がせるようにしておくこと。最初、携帯電話に盛ったときに、ちょうど電話がかかってきちゃった。「ごめんね、今、粘土固まってないから後で...」。その後も、スピーカー部分の穴にパテの粉が詰まっちゃったりして大変。でも、ぜひみなさんも粘土を始めて欲しいです。

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