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渡辺謙が語る、映画『シャンハイ』について。

2011.08.30

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今や日本を代表する俳優である。様々な作品で見せる抜群の存在感は、同じ日本人として実に誇らしい。流暢な英語を操り、ハリウッド俳優に引けを取らない演技に、大手携帯キャリアのCMではコミカルな役柄までこなしてしまう。それでいて、愛する阪神タイガースへの苦言も忘れない。格好良くてお茶目でユニークな男、渡辺謙。自身の最新作『シャンハイ』について、渡辺謙は何を思うのか。

「何でもやればいい」ということではなく、「何を届けられるか」が大事。

―まず、本作をご覧になって何を思いましたか。率直な感想を教えてください。

渡辺謙(以下渡辺):震災前に目を通してはいたんですが、震災後に改めて見直したんですよね。なぜなら、こういった状況で発表するべき価値のある作品なのか、という不安な気持ちになってしまい。ただ、この作品は自分では選べない時代や状況のなかでも人は精一杯命を紡いでいく、というストーリー。震災後の今だからこそ、この作品を通じて何かを感じとってもらいたいですね。

―今回、演じたタナカ大佐については、どんな思いがあるのでしょうか。

渡辺:国際情勢や軍事情勢において、日本の劣勢を理解しながらも真珠湾攻撃のバックアップをしなければいけない。そんななか、苦渋の決断を迫られてしまうんです。こういった状況を現在の日本にフィードバックして考えたときに、自分が抗えるかどうか。今の僕の中のテーマともなっているんですよね。人としての綺麗事をなぎ倒してしまうような状況のなかで、はたして何ができるのか。フィクションとはいえ、そういったことを考えることができたのは、この役を頂けたおかげなのかなと思っています。

―役作りをすることと、お客さまに伝えていく作業、この2つをどのように捉えているのですか。

渡辺:個人的な意見としては、どちらも軸が一緒です。役を作り、役の中に思いを詰め込み、それを体現する。お客様に伝えるため、というよりもそういったプロセスを辿った結果、より多くのお客さまに思いを伝えることができる、そう思っています。

―以前、出演作品のなかで「『硫黄島からの手紙』が一番印象に残る」というお話をしていましたが、『シャンハイ』は作品として共通する部分があるように感じるのですが。

渡辺:どちらも時代背景に戦争がありますからね。ただ、作品を選ぶうえで重要なのは、結局のところ自分の根っこと繋がっているか、ということです。そういった意味で共通する部分は、どんな作品、どんな役に置いてもあるかもしれません。

―ちなみに『硫黄島からの手紙』での経験が、今回の役柄に与えた影響はあるのでしょうか。

渡辺:硫黄島のときには、その背景をかなり調べたんですよ。調べれば調べるほど、心苦しくなって、落ち込んだ時期もあるほど。これまでの役作りでは、落ち込むことなんて無かったんですけどね。そういった経験は、演じるうえで何かしらの影響を与えているとは思います。

どんな状況でも人は必死に命を紡いでいくんです。
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―近年の戦争映画は、被害者だけではなく、加害者の心情なども描かれることが多いと思うのですが。

渡辺:そういった流れはとても大事だと思います。以前から涙を誘うだけの戦争映画には違和感を感じていましたし、被害者目線の映画やドラマを描くと「本当にそれだけなの?」と疑問に思うこともありましたからね。日本も狂気をはらんだ時期があったからこそ、戦争に突き進んでしまった。国民全部が戦争したくなければ、起こるわけがないですから。そういったことはちゃんと受け止めたうえで、未来に向かわなければいけない。震災が起こり、社会情勢が不安な今だからこそ、そういったことも含めて足もとから見直すべきなのかなと。

―震災後の日本において、何を表現していくべきなのかを考えたりはされますか。

渡辺:もちろん、考えます。結局、僕らは「何でもやればいい」ということではなく、「何を届けられるか」が大事。そういう思いを持ちながら作品と向き合わないと、仕事へのモチベーションが上がらないんですよ。3年前に撮った映画が、こういう大変な時期に公開されるのは、ある意味この作品の持っている運命なのかなあと感じています。

―フイナム的には、渡辺謙さんのファッションにも興味があるのですが。普段はどういった服装をされているのですか。

渡辺:ロスにいるときは、今日のようなスーツ着ることはほとんどないですね。ジーンズにTシャツという感じで、非常にラフなスタイルが多いです。今回の撮影をしていたロンドンは、オシャレをしたくなる街なんですよね。夏だけど少し肌寒かったので、パンツにこじゃれたシャツを着て、ハーフコートを重ねたり、カーディガンを羽織ったり。割とオシャレをしてましたよ(笑)。

―なるほど。街に合わせて、コーディネイトしているんですね。それでは最後にメッセージをお願いします。

渡辺:『シャンハイ』は戦争映画というよりも、どんな状況でも人は必死になって命を紡いでいくヒューマンドラマ。そのなかで男と女が絡んでいくラブストーリーは、男性はもちろん、女性の方にも楽しんで頂けると思います。是非、劇場でご覧になってください。

kenwatanabe_p3.jpg 『シャンハイ』
監督:ミカエル・ハフストローム
キャスト:ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、菊地凛子、渡辺謙
製作国:2010年アメリカ・中国合作映画
配給:ギャガ
上映時間: 104分
映倫区分: PG12
shanghai.gaga.ne.jp
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