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赤司竜彦が語る、メディコム・トイの真実。

2011.08.19

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トイマニアも納得の精巧なフィギュアの数々に加え、KUBRICKやBE@RBRICKといった幅広い層に愛されるフィギュアも作り出し、アーティストのKAWSとはアパレルブランドも展開する、トイメーカーという枠に縛られない様々な事業を展開するメディコム・トイ。設立から15年という節目を迎えた今、代表取締役社長を務める赤司竜彦氏が思うこととは。

オモチャ作りというのは、クラシックやフュージョンに近いんです。

―15周年おめでとうございます

赤司竜彦(以下赤司):ありがとうございます。

―まずは、15周年を迎えて率直な感想を伺えますか。

赤司:ここまでよく頑張ってこれたな、というのが素直な気持ちですね。「自分たちが作りたい物を作る」、その一心で突っ走ってきましたから。だから、思想やポリシーといった部分では、設立当初と変わっていないんですよね。もちろん会社は規模も大きくなりましたし、製品の量も格段に増えてはいるんですけど、意識の変化が無いというか。

―製品の量は格段に増えていると思うのですが、管理はどうされているのですか。

赤司:設立当初は年間で数10個だったのが、今は600個近く作っているんですよね。それでもすべてに目は通してますよ。なかには「こんなの作ったっけなぁ」というのもありますけど(笑)。

―600個もあるとさすがにそうなりますよね(笑)。そもそもメディコム・トイを設立するキッカケはなんだったのですか。

赤司:実はメディコム・トイは僕が設立する前に働いていた会社のオモチャ部門としてスタートしたんですよ。当時の会社の社長に「おまえはオモチャのことしか頭に無いから」と言われながら事業部を設立して、強い起業意欲があったわけではないんですけど、あれよあれよとメディコム・トイを設立することになりまして。

―そんな経緯があったんですね。ちなみに社名にはどういった意味が込められているのでしょうか?

赤司:実は前の会社名を引き継いで、トイメーカーらしく「トイ」としました。特別な意味を込めてはいません。むしろ、お客様やクライアントの方々、問屋さんなどに名前を変えることで混乱させないために、必然的に選んだ名前なんです。

―なるほど。それでは15年を経過した今、その社名に対して何を思っているのでしょうか。

赤司:結果的にメディコム・トイという名前で良かったと思うことは多いです。特定のジャンルに縛られないニュートラルな言葉なので、業務として幅広いことに挑戦できますからね。それと「メディア」と「コミュニケーション」をする「オモチャ」という意味も、まさにその通りだったのかなと。設立直後は強い思い入れがあったわけではありませんが、徐々に会社が社名に近づいていった、そんな印象ですね。

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最新コレクションとなる松田優作の作品群。表情や服の素材感まで忠実に再現されている。

―15年間、着実に成長を続けてきたので、とても順風満帆に見えますが、苦労したことなどはあるんですか。

赤司:もちろんありますよ(笑)。なかでも大変だったのが生産拠点を日本から中国に移したときですね。設立して4年目の頃に、オモチャ業界で生産拠点を中国に移していこうというムーブメントが起こったんです。それならウチの会社もと動き出したんですけど、とにかく大変でした。一般常識はもちろん、文化や生活習慣、様々な部分が違うので簡単な意思疎通さえもできませんでした。そのうえでオモチャを作ってもらうとなると......。

―想像するだけでも大変そうですね(笑)。しかも、オモチャは趣味嗜好の世界。生活必需品よりも理解するのに時間がかかりそう。

赤司:そうなんですよね。プロダクツに対しての意識とか意味が、微妙に違うので伝えるのも難しいんです。ただ、こういったことはお互いのコミュニケーションを重ねながら、価値観を擦り合わせていくことが重要で、今ではあうんの呼吸で理解できるようになってきました。そう考えると工場との関係は、親子や恋愛関係に近い感覚かもしれないですね。

―熟年夫婦のような関係になってきているわけですね。実際、今回のエキシビションでは昔の作品も展示されていましたが、クオリティの差が歴然とありました。

赤司:見比べてしまうと、お粗末だったなとは思いますね。でも、当時の僕らにとっては、巧くできた自信作として売り出してはいたんですよ。

―今後も精巧な物作りにおける進化はあるのでしょうか。

赤司:技術的な話となると、どういった部分を、どこまで突き詰めるのか、という問題になってきます。オモチャ作りというのは、音楽のジャンルで言うとクラシックやフュージョンに近いんです。テクニック至上主義というか。そういった部分はきちんと伸ばしていく必要はあります。ただ、僕個人のマインドはパンクスなので、細かな部分ばかりを追求していると次第にイライラしてくるんですよね(笑)。こんな細かい部分は、気にする必要ないだろって(笑)。

―そういった意味でBE@RBRICKは良い息抜きになっていたのでしょうか。

赤司:まさにそうですね。特殊部隊とか、複雑な商品を作っていると、仕様書が電話帳みたいな分厚さになりますからね。さらにその仕様書を見て、0.05ミリ削るとか0.3ミリずらすとか、指示を出さなければいけない。そんな細かい作業の反動で生まれたのがBE@RBRICKなんですよ。

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