中国の精神病院を追いかけた門外不出のドキュメンタリー
2014.06.10 18:00
見終わって一晩たっても、まだあの鉄格子の中にいるような気がする。中庭を取り囲む3階建ての四角の建物で、廊下はつながっているが、各階は閉鎖されている。廊下の鉄格子越しに1階や中庭を見る人々。絶えず、話し声や祈りの声やテレビの音に鉄格子の金属音が混じりあって聞こえてくる。
カメラは、その建物の3階の男性病棟に住む人々を追いかける。夜中に突然廊下を走り出す若い男、部屋の中の洗面器におしっこをする男、イスラム教のお祈りをする男、手錠をかけられて騒ぐ男、すぐに裸になる男、スリッパで蚊をたたく仕草を繰り返す男、退院して両親の待つ家に帰る男、毎日薬を飲まされる男たち、1階で立ちながら丼をすする男たち。
でも多くの人たちはおとなしく、とてもじゃないけど精神病には見えない。少しでも目立つ行動をする者を、カメラは執拗に追いかける。患者たちにはカメラは見えているはずだが、気にするふうではない。むしろカメラがあることで、感情が高ぶっているのかもしれない。監督ワン・ビンのカメラは、リアルな情景を周囲の空気と共に見事に写し取っている。
本作『収容病棟』は、上映時間が約4時間と長編ではありますが、一見の価値はあります。是非会場でご覧下さい。
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『収容病棟』
監督：王兵（ワン・ビン）
製作：Y.プロダクション、ムヴィオラ
2013年／香港、フランス、日本
上映時間：前編 122分／後編 115分（全237分）
日本配給：ムヴィオラ
6月28日（土）、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
© Wang Bing and Y. Production
http://moviola.jp/shuuyou/