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服の求道者たち ~「É」の系譜〜 第二回:COMOLI デザイナー 小森啓二郎

2013.02.27

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コモさんの服って、生地感とかなんかいい"ふわつき方"なんです。(中室)

中室: で、また話戻っちゃうんですけど、コモさんなんで「É」辞めたんですか?

小森: そうねー。やっぱり世の中に〈ディオール オム(DIOR Homme)〉が出てきたからかな。

中室: あっ! やっぱり!(笑)

小森: 別珍と黒、ダメージデニムっていうか。

中室: とにかく大流行しましたもんね。

小森: そう。で、そのとき俺初めて「あ、自分は企業デザイナーなんだ」って思ったもんね。

中室: ハハハハ(笑)!

小森: それまでは、やっぱり好きなことをやってたんだなって。

中室: まぁ、そういう世の中の流れ、背景がありながらの今回の三人ってことですよね。あ、でも板井(編集部注:〈ザ・フランクリンテーラード(The FRANKLIN TAILORED)〉デザイナー、板井秀司氏)はずいぶん後の方か。コモさん、直接板井と絡んでないんじゃないですか?

小森: そうだね。札幌のスタッフっていうイメージかなぁ。

中室: ですよね。板井は、そういう変革の時期の中、まさに入ってきた人間だから、またちょっと違う話が聞けるかもしれないですね。あと、これは尾崎にも聞いたんですけど、なんで「É」は色々動きがあって、「J」の方はそんなにないんですかね?

小森: やっぱり「アメリカ」ってブレようがないんじゃないの? フレンチっていうのはある種自由というか、やってる人によっていかようにも解釈できるというか。

中室: なるほど。そう言われてみると「É」も、ドレスクロージングの方はあんまり変わってないですもんね。尾崎は、そもそもあの時代の「É」に入ってくること自体が変態なんだよって言ってましたけどね。

小森: いや、ホントにそうだと思うよ。「BEAMS」でもなく、「UA(UNITED ARROWS)」でもなく、デザイナーズでもなく、「É」っていう選択肢を選ぶ時点で変わり者だよ。

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中室: ちなみにコモさん、普段は自分の服を着ることが多いですか?

小森: そうだね、〈コモリ〉を始めてからは。

中室: ていうか、そもそも、コモさんの服のルーツってどういうところにあるんですか?

小森: そうだね、、まず自分が高校生のときって、渋カジとかデルカジ、キレカジとか、カテゴリーがはっきりしてたのね。でも、自分はそれのどこにもピンとこなくて。そんなとき、並木橋に「EM」っていう、今思えば、裏原の流行の原点になるようなお店があって、

中室: へぇ...。

小森: そこに高校生のときに行ったんだけど、そこにいた人はスメドレー〈ジョン スメドレー〉のニットをゆったり着て、66のデニムをオーバーサイズで穿いて、足下はスーパースター。で、スケボーを持ってっていう。そういうスタイルがめちゃめちゃかっこよくて。周りには、いわゆるスケーターブランドを着てるような人しかいなかったのに、なんて洗練されたスケーターなんだろうって思ったんだよね。

中室: すごいかっこいいじゃないですか。

小森: いや、めちゃくちゃかっこよかったんだよ。この集団はなんなんだろう?みたいな。〈ジョン ピアース(JOHN PEARSE)〉とか〈ジョゼレヴィ(Jose Levy)〉とかのデザイナーものも着てたね。でも、ボトムはスケートをするから、ルーズなチノパンとか、デニムで。

中室: はいはい。

小森: そういう組み合わせがとにかく洗練されてるなあと。なんかこれ「東京」だなって思ったんだよね。(笑)

中室: それ、何歳のときですか?

小森: 高一か、高二ぐらいかな。

中室: あー、そうなると、確かに裏原の前ですね。

小森: そう。そういう名前で、パッケージングされる前だね。で、それから「É」に入るまでは、アメリカものを中心に、ときどきイギリスっていう感じで。でも、「É」に入ってからはイタリアものの洋服を知るようになって。もともとストリート的なものが好きだった自分は、イタリア人の作るもののクオリティの高さにびっくりしてしまって。ものとしての完成度が高いものは、美しいなって思うようになったんだよね。そういうのが、自分の物作りの根本かな。

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中室: ふんふん。それにしても、当時の「É」の何とも言えない空気感って、この〈コモリ〉の洋服に凝縮されてるんですよね。仕様がどうとか、そういうことじゃなくて、これを着たときのイメージを想像すると、すごく懐かしいスタイリングがよみがえってくるっていうか。コモさんの洋服って、そういう不思議な力があるんですよね。生地感とか、なんかこういい"ふわつき方"なんですよね。

小森: そうだね。わかる気がする。

中室: オーバーサイズのテロテロのトレンチに、よれよれのTシャツを合わせて、ダブルで仕上げた〈インコテックス(INCOTEX)〉とかのスラックスをオーバーサイズで穿いて、〈アディダス(adidas)〉のカントリーを合わせちゃうようなゆるさというか。色んな人に、2000年代初頭の「É」にどんなイメージを持ってますか?って聞いたら、たぶん「ネイビーのジャケットに、ロンドンストライプのシャツ、で、ピケのパンツか何かで、足下は革靴」みたいなスタイルって答えると思うんですけど、当時本当に提案していたのは、もっと洗練された、パリとかに実際いそうな若者の格好というか。

小森: うんうん。

中室: もっとハードルの高いカジュアル? ちょっとエッジが立ちながら、ロンドンのいいところとイタリアのいいところを、うまーく混ぜたようなパリ独特のスタイル。で、〈コモリ〉を見ると、そのときの「É」のことをすごく思い出すんですよね。...ていうか、俺的には「コモリ」って言うのが、すごくおこがましいんですよね。ブランド名なんで、しょーがないんですけど。先輩の名前を呼び捨てにするっていう。。

小森: いやいや、連呼してくださいよ(笑)。

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中室: そういえば〈コモリ〉ってブランドが始まるときって尾崎が絡んでるんですよね?

小森: そうなんだよ。彼が〈フィルメランジェ(FilMelange)〉を離れてフリーになったときに、まだ表に出てないような日本の良いものを紹介していきたい、という考えがあって。そんなときに、丁度自分がブランド始めたいって相談したことがあって、じゃぁ自分がセールスやりますよって引き受けてくれたんだよね。

中室: 尾崎、万能ですからね。作るし、売るし、喋るし。

小森: うん。だから彼がいなかったら、〈コモリ〉は世に出てないですね、間違いなく。ずっと企画をやっていて、やっぱり外の世界というか、知らない部分がすごく多かったので。今現在は一緒にはやってないんだけど。

中室: あ、そうなんですね!? 今は全部自分でやってるんですか? え? コモさんセールスできるんですか?

小森: そう。なんとかやってますよ。

中室: えー、だってコモさん、昔ヘルプでお店に来てくれたとき全然売れなかったじゃないですか(笑)。

小森: そうそう。お客さんを避けるように動くっていう。。(笑)

中室: 磁石のS極とN極みたいなね(笑)。へー! でも、今は接客もしてると。

小森: まぁ、自分が100%おすすめできるものしか作ってないので。

中室: あー確かにね。ヘルプの時も自分が作ってる洋服については、すごいところまで説明してましたしね。そんなとこまで話しちゃう?みたいな(笑)。ていうか、今回こうして対談させてもらってますけど、今まであんまりメディアに露出してなかったんじゃないですか?

小森: 今までは全く出てない。

中室: 「COMOLI」って検索すると、今も尾崎がディレクションして、っていう情報がたくさん出てきますもんね。でも、今後は色々と自分で出て行くってことですかね。

小森: そうだね。自分で出て話す以上は本当に嘘のない、自信を持っておすすめできるものしか作らないっていう大前提があるけどね。そこは本当に大事な部分だと思う。

中室: なるほど。じゃぁ、これからコモさんをメディアで見る機会も増えるかもしれないですね。

小森: ただずっと思ってるのは、自分が服を買う上で、作ってる人の顔が見えすぎる服って避けてしまうとこがあるのね。だから自分もついつい作者が前に出すぎる表現の仕方はしたくないな、って思ってしまうんだよね。

中室: まぁそういうのは人によりますよね。ものすごいアクの強いものを作ってる人は出るだろうし、もっとプレーンなブランドであれば、デザイナーの人が出ようが出まいが変わらないっていうか。

小森: そうだね。できるだけ服だけで見てもらえたらって思うけどね。でも、買って頂いているお客さんに対して、よりよく見えるためなら、出るし、喋るしっていう感じだね。

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