WORK NOT WORK SPECIAL TALK 長谷川踏太×サイモン・テイラー "TOMATO"を巡る2人の対話。
2014.07.10

1990年代の頭角を表し、今もなお世界のクリエイティブシーンを牽引する存在として知られるロンドンを拠点にしたアート集団「TOMATO」。その創設メンバーの1人であるサイモン・テイラーと、W+K TOKYOのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務めながらも「TOMATO」のメンバーに名を連ねる長谷川踏太。2人の対話から紐解いていく「TOMATO」というアイデンティティ。そしてサイモンが手がけるブランド〈ワーク ノット ワーク(WORK NOT WORK)〉について。
Photo_Miri Matsufuji
Edit_Hiroshi Yamamoto
長谷川踏太
1972年東京生まれ。1997年ロイヤルカッレジオブアート(英国王立美術大学大学院)、修士課程修了。その後、 ソニー株式会社デザインセンター、ソニーcslインタラクションラボ勤務などを経て、2000年ロンドンに本拠を置くクリエイティブ集団TOMATOに所属。現在はW+K Tokyoのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務める。
wktokyo.jp
サイモン・テイラー
イギリス出身。バース芸術大学、ロンドンカレッジ・オブ・プリンティングBA グラフィックアート科卒業。創立メンバーとして所属するTOMATOは、グラフィックデザインや映像もとより、ファッション・建築界隈に与えた影響力は計り知れず、いまや世界屈指のクリエイティブ集団として知られている。
www.tomato.co.uk
worknotwork.net
-まずは「TOMATO」結成の経緯から教えてください。
サイモン: TOMATOはもともと溜まり場みたいな感じで始まりました。設立前、僕の周りには音楽、映像、グラフィックにプロダクトデザインまで、あらゆるジャンルのスペシャリストが自然と集まっていた。せっかくなら、この才能溢れるメンバーのクリエイティブ・プロセスをシェアできる場所を作れないかなと考えました。そこで1つのオフィスを借りてシェアしたのがTOMATOの始まりです。1991年のことなので、今から20年以上も前の話ですね。
長谷川: 実際にオフィスに足を運んでみるとわかるんですけど、まるで学校の延長みたいな場所なんですよ。1995年には会社として登記してはいるけど、あまりにも自由で全然会社っぽくない(笑)。ほとんどの人が別の仕事を持っていますし。
-「TOMATO」というユニークなネーミングについて教えてください。
サイモン: 実はまったく意味を持たない単語を繋げただけなんです。「TO」と「MA」と「TO」、1つ1つの言葉の響きと繋げたときの音感が良かったから「TOMATO」と名付けました。残念ながらベジタブルのトマトじゃありません(笑)。
-仲間内が、オフィスを設け、屋号を付け、1つのユニットになったわけですね。
サイモン: そうですね。だからといってメンバーの関係性に大きな変化はありません。そもそも平等な集まりでしたから。一方で、対外的にはとてもミステリアスな印象を与えていたようです。TOMATOという謎の集団が、あらゆるジャンルを巻き込んだ面白いことをやっているぞ、と。
-TOMATOは1996年に公開された映画『トレインスポッティング』のアートワークで一躍脚光を浴びました。それ以前は、どんな仕事をされていたんですか?
サイモン: TOMATOのメンバーが所属しているアンダーワールドのアートワークを手がけたり、ロンドンの地下鉄のグラフィティにフォーカスした映像を作ったり、ジャンルに縛られることなくいろいろやっていました。なかでも反響が大きかったのは、世界最古の文学作品『ギルガメッシュ叙事詩』のエキシビションを計画したとき。結果的には開催することはできなかったんですが、事前告知を雑誌に掲載したら、驚くほどの問合せがありました。
-映像からCDのアートディレクション、はたまた古典文学まで。その時点で、TOMATOという集団はカテゴライズできない活動をしていたんですね。ちなみに『トレインスポッティング』の爆発的なヒットによって、TOMATOにはどんな影響があったのですか?
サイモン: おかげでたくさんの仕事の依頼がありました(笑)。人が増えて、会社の規模が大きくなって。一番多いときで35人くらいいたんじゃないかな。だからといって仕事へのスタンスも変わることなく。むしろ、人が増えたことによって、それまで以上に様々な仕事を受けることができるようになりました。
-一方で大勢のクリエイターをコントロールするのも難しい気もします。
サイモン: そもそもコントロールする気が無いですからね(笑)。僕らはゆるいコミュニティなんです。だからこそコミュニケーションの質が重要になってくる。さすがに35人もいたときは、すべての人と意思疎通のとれたコミュニケーションをとれていたとは言えませんが。
-今は10人弱ですよね?
サイモン: そうですね。家族くらいのサイズ。TOMATOのようなセンシティブな集合体には、これくらいの人数がちょうどよいんです。メンバー同士もお互いを熟知できているので、コミュニケーションもスムーズに取れますし。