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ceroとその周辺。『Obscure Ride』と共鳴するもの。聞き手:九龍ジョー

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ライブを重ねることで感じる『Obscure Ride』の深み

※ここから先は、12月のLPリリースに際して行われたインタビューです。(聞き手:編集部)

ーフジロックをはじめとした全国各地、韓国などアルバムリリース後の精力的なライブ活動の中で、思い出深いライブはありますか?

髙城:どれも印象深いですが、なかでもビルボードライブ東京と大阪での全4公演を共にした黒田卓也※7さんとのライブが実り多かったように思います。日本特有の歌モノが持つ制約や縛りをいかにして突破していくか、着席しているお客さんをどのように昂揚させるか、といったことを黒田さんから学んだような気がします。

※7 日本人としてアメリカの名門レーベル「ブルーノート」と初めて契約したジャズトランペット奏者。2014年にリリースした『Rising Son』にはceroも刺激を受けた。

ー幾多ものライブを経て、感じた変化はありますか?

橋本:『Wayang Park Banquet』(『Obscure Ride』収録)という複雑なリズムの曲があるのですが、ライブを重ねることで組木細工のようにピース(個々の音)がだんだんと馴染んでいって、やがて境界が曖昧になり一つの塊になるような感覚がありました。

荒内:逆に変化を感じなかったというか、改めて再認識したというところでは、『Obscure Ride』はやっぱりいいアルバムだなということです。というのもライブをやっていくと曲に関する新しいアイデアがわいて「音源でこうすればよかった」となってくるものなんですが、このアルバムに関してはそういうものを感じなかったんです。

ーそのほか、音楽以外でも今年のツアーで印象深かったことは?

髙城:人生で初めて鍼治療を体験してみて、歌声に少なからず影響を感じられたことが興味深かったですね。

荒内:『Obscure Ride』のツアー以降、男性客が増えたのがうれしいですね(笑)。

橋本:ライブ前のリハであだち君(あだ麗)がいつも変わった発声方法(「うにょ〜ん」とか「にぃぇあー」とか宇宙人みたいな声)でマイクチェックをしていたことですね。今度出るceroのライブDVDにその模様が収められているはずです。

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ー12月16日に『Obscure Ride』のLPがリリースされましたが、LPでわざわざ出すのはなぜですか?

髙城:『Obscure Ride』に関して言えば、個人的にはアナログで聴くのがベストな再生方法だという印象を持ちました。しかし、どの音楽もアナログで再生するのが理想的かといえば、そうとも限らないのですが、リスナー一人ひとりがその音楽に見合うメディアを選択して楽しむ。その選択肢のひとつとしてLP盤を出し続けるということが重要だと思います。

ー実際にceroのメンバーはどんな風に生活の中で、レコードを聴きますか?

髙城:最近は子育ての合間に音楽を聴くので、A面B面と区切りをつけやすいところが今のライフスタイルに合ってるなぁと感じました。

荒内:特に強い拘りはないですが、選択肢の一つとして普通に聴きます。

橋本:ぼくは部屋の壁に飾って眺めるのが好きです。

ー先述のように6月のインタビュー時点では、まんがや映画、アニメのお話などお聞きしました。あれからそういったエンタメ作品などで思い出深いものがあれば教えてください。

荒内:ツアー中は『百年の孤独』※8を読んでいました。現実と非現実、生と死の境界が限りなく曖昧な話で、お話しした映画『バードマン』のことをよく思い出していました。

橋本:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を初めて見たのですが、本当にすばらしかったです。

※8 ノーベル文学賞受賞者のガルシア=マルケスによる、1967年刊行のベストセラー小説。ラテンアメリカ文学ブームのきっかけとなった。

さて、6月と12月の二度にわたってのインタビューに快く答えてくれたceroの面々。2015年を代表するアルバムとなった『Obscure Ride』に加えて、精力的なライブ活動もファンにとってはうれしい限り。また、インタビューでもわかるとおり、カルチャーに対する独特の視点もじつにceroというバンドを表現しているのではないでしょうか。FM802で高城さんのレギュラーラジオが始まるなど、2016年もその活動に注目していきたいバンドです。

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『Obscure Ride』cero(カクバリズム)
形式:CD、LP
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