東京・神保町にある美術・音楽・メディア表現を学ぶ学校「美學校」。オルタナティブなアートスクールとして世界的にも知られる同校が2015年より新設した教程「外道ノスゝメ」の特別講座の講師としてバンド・どついたるねんが登壇。これまで先生と呼ぶにはほど遠い破天荒なスタイルを売りにしてきた彼らが、美學校の生徒に対して何を伝えようとしたのか。ハチャメチャな授業の模様を追うなかで垣間見られた、彼らが本当に伝えたい”スラム”の真意。
Photo_Motoyuki Daifu
Text_Yuho Nomura
Edit_Hiroshi Yamamoto
どついたるねん
2007年に先輩、ワトソン、山ちゃん、うーちゃかを中心に結成したバンドチーム。2004年からDaBass、浜公氣、ファック松本、小林4000が加わり、現体制となる。2011年のファーストアルバム発表後から、通算7枚のアルバムをこれまでにリリース。3ヶ月間毎日PVを制作しYouTubeにアップし続けたり、99曲入りアルバムを発表した直後に198曲入りのアルバムを発表、極めつけは6008曲入りの『grandmother’s milk』を発表して業界内外の度肝を抜く規格外な制作が話題となる。音楽活動以外でもBEAMSのカタログでのモデル出演や演劇、映画、写真集の発表など、活動は多岐にわたる。現在最新アルバムの「ミュージック」が発売中!
dotsuitarunen.com
一限目 どついたるねんのライブ。
最初の授業は、古びた狭い教室を舞台にどついたるねんがライブを披露。ライブ会場と変わらぬ全力投球のパフォーマンスで、参加している生徒たちも、日々は学びの場である教室とは思えないほどのはしゃぎっぷり。
名曲「such a sweet lady」を投下すると、オーディエンス(生徒)はさらにヒートアップ。授業であることを忘れさせる圧巻のライブを繰り広げた。とはいえ、あくまでもライブは授業の一環。まずはライブを通して、生徒たちの既成概念を壊しにかかります。
二限目 どついたるねんができるまで。
続いて二限目は、「外道ノスゝメ」の講師を務める古藤さんを司会に、どついたるねんメンバーの先輩、ワトソン、山ちゃん、うーちゃかによる結成秘話講義。彼らがどのような経緯で現在のどついたるねんへと変貌を遂げていったのかを、幾度となく脱線を繰り返しながらも解説していきました。
モニターには屋上でファック松本がキムチまみれになる様子を実況中継。一方で濃密な結成秘話を語り、一方で意味もなくキムチまみれになる。噛みあうところのない両者をシンクロさせることに頭をひねる学生はいながらも、あくまでも淡々と授業は進んでいきます。摩訶不思議な授業に身を委ねるなかで、学生の思考は徐々にどついたるねんモードに溶け込んでいきます。
三限目 「食って出すそれが全て」これが“スラム”。
三限目は、どついたるねんの作品なども手掛ける映像作家の岩淵弘樹監督によるムービー編集の講義。実際にこの日撮影した動画素材をもとにリアルタイムでその作業工程が見られるのは、学生のみんなにとってはまたとない絶好の機会。作業しながら岩淵監督自ら解説もあり、もっとも授業らしい光景に。
四限目 どつと一緒につくろう!
学生たちがどっぷりとどついたるねんモードに漬かった四限目。これまでの講義を総括し、ワトソン、山ちゃん、うーちゃかの3チームそれぞれにランダムで講義を受けていた学生たちを振り分け、チーム別による作品発表大会(ワークショップ)を開催することに。30分という決して長くはない時間を使って、自由にアイデアを出し合い、表現として形にしていきます。
振り付けダンスと自己紹介を組み合わせてパフォーマンスしてくれたワトソンチームに、うーちゃかチームはギターを使ったライブを披露。山ちゃんチームは、メンバーの持ち物を使ったストリートでの固形物アートを作成。リーダーの個性と学生たちのアイデアが織り交ざったプレゼン発表はこの日最高の盛り上がりを見せました。
そして最後は、岩淵監督による動画作品の公開。その日撮った映像をリアルタイムで編集する、このスピード感こそがどついたるねんの作品には欠かせないキーワードの一つといえます。こうしてどついたるねんとの濃い夏休み特別講座の一日が無事終了しました。
岩淵弘樹
1983年生まれ。宮城県仙台市出身。ドキュメンタリー映画監督。主な監督作は「遭難フリーター」「サマーセール」「サンタクロースをつかまえて」など。現在はカンパニー松尾を中心とするAVメーカーHMJMの制作部所属。
「美学校ラップ」Trailer
https://www.youtube.com/watch?v=5jIvHAX_Pls