FEATURE |
Norwegian Rain from Rainy City. 雨降る都市で生まれた、ハイブリッドなレインコート。

1.jpg

PROFILE
日本の繊細な技術と完成度の高い生地・素材にインスパイアされ、メンズの伝統的で革新的なテーラリングを融合させて2009年に誕生した〈ノルウェージャン・レイン〉。100%ウォーター・プルーフで、防風性、通気性を兼ね備えたプレミアムなアウターウェアを提案。デザインは、ビスポークテーラーでもあるデザイナーT-Michaelと、クリエイティブ・ディレクターのAlexander Helleによるデュオ。

パートナーの誘いを何度も断った末、ようやく始動したブランド。

ーマイケルさんの、デザイナーとしてのキャリアについて教えてください。

T-マイケル:3年ほどテーラーの勉強をして、18年前に自分のアトリエをオープンさせました。そこでは自分の名前を冠したブランド〈T-マイケル(T-MICHAEL)〉の活動を行っています。

2.jpg

ーテーラリングに魅了されたのはどうしてなんですか?

T-マイケル:テーラーがすごく建築的な作業だからだと思います。採寸をしてパターンを決め、材料を選び、服をつくる。こういったトラディショナルなモノ作りの方法が、自分の肌に馴染むんです。

ーご自身のブランドを展開する中、どうして〈ノルウェージャン・レイン〉をスタートさせることになったのでしょう?

T-マイケル:ノルウェーのベルゲンは山に囲まれた街で、そこに雲が留まりやすいために3日に1度は雨が降るんです。そこで私は〈T-マイケル〉の活動を行っているんですが、ある日カスタマーのアレクサンダー・ヘレが来店して、「一緒にレインコートのブランドをつくらないか?」と誘われたんです。

3.jpg

ーヘレさんは現在、〈ノルウェージャン・レイン〉のクリエイティブ・ディレクターを務めている方ですよね。彼との出会いは、マイケルさんのアトリエだったんですね。

T-マイケル:そうです。彼の誘いはとても光栄だったのですが、はじめは断ったんです。なぜなら、私自身がレインコートに対してネガティブなイメージを抱いていたから。レインコートといえば、ビニールなどの素材を使用していて、少しチープな感じがするでしょう? 私はそれが嫌だった。しかしアレックスは諦めず、何度も私を説得しにアトリエへ訪れました。

ーそれほどマイケルさんと一緒にモノ作りがしたかったんでしょうね。

T-マイケル:それで、なぜレインコートをつくりたくないのか、説明をしたら、彼は「レインコートではないレインコート、つまりテーラリングを軸としたものをつくろう」と提案してくれたんです。それを聞いたとき、私の心が動いたんです。彼と手を組んだら新しいことができると思い、ようやくブランドをスタートさせることになりました。

4.jpg

〈ノルウェージャン・レイン〉のデザインの秘密。

ー実際に〈ノルウェージャン・レイン〉のクリエーションを行う上で大事にしていることは、どんなことなんですか?

T-マイケル:機能とデザインがバランスよく共存することです。機能に偏ってしまえば、単なるアウトドアウェアになってしまうし、ファッションに偏れば、レインコートというそもそものコンセプトが崩れてしまう。2つのエッセンスがうまく交わることで、従来のブランドにはない新しいレインコートが生まれたと確信しています。

ーデザイン面にフォーカスしてアイテムを眺めると、コンセプト通り全くレインコートには見えませんね。しかしながら、角度を変えてみると全く違うものに変化する。つまり、レインコートに。

T-マイケル:そこが〈ノルウェージャン・レイン〉の最大の特徴ですから。

5.jpg

ーこのように多面的な楽しみ方ができるのは、コートとしてのデザイン性がとても優れているからだと思うのですが、デザインを考える上でどんなことにこだわっているのでしょうか?

T-マイケル:これは〈T-マイケル〉のデザインにも共通することなのですが、私がデザイナーとして心掛けているのは、“トラディショナル”と“コンテンポラリー”、2つのエッセンスをミックスすることなんです。

ーというのは?

T-マイケル:例えば、トラディショナルなジャケットを現代的なシェイプで仕立てたり、そこにスポーティな要素を加えてみたり。古来から受け継がれてきた伝統に、そういった捻りや工夫を与えて新しいものを産み出す。これが私の培ってきたデザインの哲学です。

ー〈ノルウェージャン・レイン〉の場合、その捻りや工夫というのが、生地にも表れているように思います。

6.jpg

T-マイケル:実はこの生地、日本でつくられたリサイクル・ポリエステルなんです。レインコートには防水性というのがあって然り。しかしながら、それをビニールに頼ってしまったら〈ノルウェージャン・レイン〉のコンセプトとは噛み合いません。その前提条件をクリアする生地を探した結果、このファブリックが見つかったんです。

ーつまり、防水性を保持しながらも機能的に見えないファブリックということですね。

T-マイケル:その通り。それに加えて“リサイクル”というところも、この生地に惹かれたポイントです。モノ作りを行なう上で、社会と繋がり貢献することが非常に大切だと考えていて。このようにリサイクル・ファブリックを使用したり、生地を作る際の工程において可能な限りエネルギー消費を抑えたりして、その役割を果たしています。

次のページ

  |