フィット感への追求えお怠ればNBではなくなる

―歴史のある〈ニューバランス〉が題材なだけに、特に留意された部分というのがあったと思います。ここは譲れないといった線引きというか、実現可能か不可能かといった鬩ぎ合いがあったのではないでしょうか?

アンソニー:まずはフィット感にこだわりました。NBは他のどのブランドよりも真摯に足の健康にフォーカスしていると思うので。限定になってしまったモデルもありますが、より多くの人に試してもらいたいです。コレクターズアイテムとして飾るのではなく、実際に履いてもらったほうが999の素晴らしさを感じてもらえるに違いありません。

国井:中でもタタミインソールの出来には満足していますね。決して和風のテイストを味付けするためだけに取り入れたものではなく、かなり技術的な部分も追求しました。こういったディテールにこだわるのが日本人ならではと思って妥協しませんでしたしね。

アンソニー:あとは3D素材の使用も見逃せないと思います。これは今回のキモとして是非とも確認してもらいたいです。ファーなどの立体的な素材は写真では全てが伝わらないと思うので店頭で実際に見て欲しいポイントですね。ここまで個性的なNBは前代未聞じゃないでしょうか。

―タタミインソールを実装するのは、想像以上に大変だったんじゃないでしょうか?

正能:難産でしたね。あくまでも一般流通させる商品として作るのには様々なハードルがありました。単なるカラー変更や素材変更ではなく、技術的にも品質的にも追求している部分が多かったですから。国井さんもアンソニーさんにも完成のイメージがありましたから、そういったものを具現化するためには意見のキャッチボールは非常に綿密にできてきたと思います。

アンソニー:このタタミインソールを見ることによって、日本とシンガポールのリレーションシップを感じてもらえると思います。実はシンガポールにもタタミのようなものがあるんですよ。それは竹で作られていて、年配の人が使っているケースが多いものなんですが。日本の方が思うより、我々にとっては高価なものという認識もあります。タタミをインソールにすることで、足を入れた時にアジアを感じることができるのもポイントです。履き物ですから、足で感じて欲しいという思いがあるんです。

―殊更ジャパン色を出すのではなく、普段は見えないインソールにそこまでこだわることも日本人の粋というか、奥ゆかしさを感じることができますね。

国井:その部分を意識的にやったわけじゃないのですが、結果的にそう思っていただけたということは、日本やシンガポールの気質というものが投影できたのかも知れませんね。 


今回のイメージビジュアルそろい踏み。躍動感のあるイラストレーションで999の世界観を表現しています。

今回のイメージビジュアルそろい踏み。躍動感のあるイラストレーションで999の世界観を表現しています。

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