＿＿使い込むことで、本物の良さがわかるということでしょうか？

いや、実際にはブランド品をそこまで使い込むってことがなかなかないんです。よく「ブランド物は一生モノです」っていう人がいるけど、僕には絶対に無理。ブランド物も所詮ファッションなんだから移り変わるものです。結局ブランド品も消耗品も同じで、両者の間にヒエラルキーはないと思います。でもその2つを一緒くたにしてしまうと、身も蓋もないんですが......。だからその大きな違いを突き詰めていくと、さっき言いましたが〈エルメス〉の紙はキレイに消えるっていうことであったり、〈ロレックス〉の時計は置きっぱなしでも3日間は針が止まらないっていうことに行き着くのではないでしょうか。そういうふとしたときに気づく良さというのが、本物の証なんだなと思います。

＿＿小沢さんの心に残るブランド品はありますか？

90年代の前半に「メイド イン ワールド」の仕事で行ったニューヨークの「ティファニー本店」に置いてあった〈カルティエ〉×〈ティファニー〉の時計ですかね。これは本当に欲しいなと思いました。その頃〈ティファニー〉では〈ロレックス〉の時計や〈モンブラン〉のペンなどなどダブルネームものがいろいろあった時代でした。〈モンブラン〉はごくごくシンプルに「ティファニー」ネームが刻印されているだけなんですが、シャーペン、ボールペン、ラインマーカーと色々買い揃えましたね。でも今ではすべて紛失してしまい、手元に１つも残っていないです......。

＿＿最近一番お気に入りの逸品は何ですか？

最近、気に入ってよく付けているのは〈カルティエ〉のロープブレスですね。購入すると何%かが「ユニセフ」などに寄付されるといったチャリティ物です。あとは〈リンクス オブ ロンドン〉というカフスのブランドが作った、アフリカ調のブレスレットですかね。これもどうやらチャリティ品みたいです。でも僕的にはチャリティ品というより、あくまでファッションアイテムとして見ている感じです。このポップでカラフルな感じがいいんですよね。なんだか遅過ぎた派手さというか。とにかく最近よくしていますね。

＿＿最後にブランド品を自然に着こなすためのアドバイスをいただけますか？

1つには経験値じゃないですか。初めて〈ルイ・ヴィトン〉の財布を買った時は大切に使いますよね。それこそ意味もなく拭いてみるとか、週に一回しか使わないとか。でも、そんな使い方をしていると、結局ブランド品と自分の関係っていつまでも平行で変わらない。それが3個目、5個目となってくると、ブランド品だろうが、日常品だろうが扱いがそんなに変わらなくなると思うんですよね。だからやっぱり、いっぱい買って使うことが一番の近道なんじゃないでしょうか。それは例えば〈エルメス〉のシャツを家でジャバジャバ洗うことだったり、〈ルイ・ヴィトン〉のバッグを雨の日でも持ち歩くことだったりするのかもしれません。あのジェーン・バーキンが、〈エルメス〉のケリーバッグにステッカーを貼っていたのも決してパンク的な意味ではなく、あくまでも日常品感覚で使っていたからだと思うんです。要するにブランドを崇め奉らないことなんじゃないでしょうか。