My First Luxury Experience Vol.2

小沢宏

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こだわりも 思い出も 心に残る「本物=ブランド」との出会い

ブランド、それは人生に豊かな彩りを与えてくれる刺激的なスパイスの一つ。簡単に手に入るものではないだけに、それとの出会い、共に過ごした年月には極めてパーソナルなストーリーが宿るものです。そういったブランドへの想いをWEBマガジン「フイナム」がセレクトした各界のクリエイターに訊きました。 様々な著名人の方々にとってのMy First Luxury Experience....

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ブランド品を楽しむには、
いっぱい買って、いっぱい使うこと。

__小沢さんがファッションを意識したのはいつ頃ですか?

小学五年生くらいですね。それまでは当然のように親に買ってもらった物を着ていたのですが、その頃に初めて自分で選ぶことの楽しさに目覚めた感じです。当時はよく「ポパイ」を読んでいたので、そこに載っていた〈VAN〉とかのアイビーブランドやアイテムを参考にしていましたね。その頃の「ポパイ」って、アイビーやトラッドが根幹にあったので、アイビーのルールを守りながらも、そこに遊びを入れるといった着こなしにすごく影響を受けましたね。それからは今も昔も自分のファッションの軸にさほど変わりはありませんね。もちろん、その過程の中で当時の旬であったブランドはピックアップしたりしていましたね。

__例えば、どんなブランドの物ですか?

う~ん、それこそ、〈ヘルムート・ラング〉や〈コム デ ギャルソンオムプリュス〉とかも着てた時代もあります。でも不思議なことに、僕が着ると〈ヘルムート・ラング〉や〈ギャルソン〉の服に思われることがないんですよ。「それどこのですか?」って聞かれて、「〈プリュス〉なんだけど......」って答えると、「そんなアイテム今シーズンありましたっけ?」って言われる感じ。別に僕は天の邪鬼的に物を選んでいる訳じゃないし、自分の中では自然な物選びをしているつもりなんですけどね。そこは結局、自分なりのモノ選びのルールに則っているからかもしれませんね。だから、僕にとっては、ラグジュアリーブランドも一般のブランドも同じような感覚ですね。

__「ブランド」というキーワードで何か思い出深い出来事はありますか?

20代半ばくらいのロンドンで、ラグジュアリーブランドのロゴをサンプリングしてブートレグを作っていたムーブメントがあって、それこそ、UKのファッション雑誌「FACE」とか「i-D」でも大々的に取り上げられていたんですけどね。例えばGUCCIのロゴをサンプリングしたTシャツとか好んで身につけていた時代がありましたね。そういうアイテムに見られるブランドを弄ぶというか、ブランドが持つ権威をわざとストリートに引きずり下ろす感覚が新鮮でしたね。今僕がやっている〈coffee and milk〉でもそういった遊び心を出すことはあります。もちろん本物も持つし、本物をもっているからこその遊びというのはあるんですけどね。なるべく、その権威に引きずられないようにしようとは常々思っています。

__そんな本物が持っている良さとは何でしょうか?

〈エルメス〉の手帳をずっと使っているんですが、革のカバーはもちろんなんですが、スケジュール帳に使われているレフィールの紙がすごくいいんです。僕はスケジュールって常に書き換えることができるように、絶対鉛筆で書くんですね。普通の物だと、シャーペンで書いたりすると消しても少し跡が残ったり、グレーっぽくなってしまうんですが、〈エルメス〉の紙って完璧に消えるんですよ。紙質が極端に良いのかはわからないですが、お札を洗ってもちぎれないっていうのと一緒なんですかね。そういうところに本物が持っている良さ、クオリティの高さを感じますね。

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モノ選びには自分の筋をしっかりと通すことが大事。それが自分の審美眼になるわけです。

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