Extreme対談 vol. 2 フランク・リーダー×リュウ・イタダニ(前編)
2012.03.05
―スペースが存分にあるということ、しかもその家賃が安いといったこと以外で、クリエイティブな面での刺激は何かありましたか?
リュウ:僕の場合は、日常生活の中にあるものをインスピレーションとするんですよ。2007年というと東京に戻ってから数年経った頃だったので、自分の日常を変えたいという欲求はあったかもしれませんね。外国での生活をまたしてみてもいいと。ベルリンで見た何かを描きたいといった直接的なインスピレーションは特にありませんでしたが、ベルリンでの生活が魅力的に感じられました。でも、その時点ですぐに引っ越すことを考えたわけではなかったんです。
―リュウさんの場合は、生活環境が創作にとって重要ということになりますか?
リュウ:そうなんです。とても重要です。僕は家にこもるタイプなんで、その家がどんな家かが重要です。
フランク:はっはっは。
リュウ:あまり外を出歩くタイプではないので、住環境は大事ですね。でも、あまり家から出ないからといって、全く周りに何もない田舎は苦手なんですよ。家にいるなら一緒じゃないかと言われるかもしれませんが、ちょっと外に出ると人が騒いでる、くらいの場所がいい(笑)。だからベルリンはちょうどいいですね。ちょっと何か見たいな、と思ったときにコンサートや映画や展覧会など、すぐ見に行けますからね。
―では、リュウさんがベルリンに引っ越すことを決めたきっかけは何だったんですか?
リュウ:やはりフランクのこの家を見たことですかね(笑)。こんなところに住めるんだったらいいな、と思って。それで、ちょうどポーラ美術振興財団の在外研修助成のことを聞いて、ドイツのもの作りにも興味があったのでフランクに受け入れ先になってもらったんです。実はそれほど深い理由はなくて、イギリスに住んだし、北米も住んだから、今度はヨーロッパの大陸に住んでみたいなと。フランクが居たっていうのもかなり大きな理由ですね。何かあれば助けてくれるので。
―ドイツのものづくりに興味があったというのは、どんな部分でですか?
リュウ:日本にいたときに、周りが中国製のものばかりになっていって、人のモノに対する関心が低くなっていっているような感じがして。日本にも古くて魅力的なモノはたくさんありますが、外国でいいモノを作っているところはどこかなと考えたときに、やはりドイツが思い浮かんだんですよ。フランクがまさにそういう服作りをしていたし。あとは、やはりスペースの感覚が全然違いますね。ロンドンとも全然違う。この前日本人の友達が言ってたんだけど、日本だと銀行のATMをスペースを有効活用するために壁沿いに並べるじゃないですか? それが、こっちの銀行はボンボンッと店舗の中心に置く。ああいうところがベルリンだよね、って。僕も大きい作品作りたいと思っていたところだったので、大きいスペースが本当に欲しかったんです。
―なるほど。
リュウ:あ、あと重要なこと思い出しました。日本って「かわいい」モノをすごく評価する文化だと思うんですけど、ドイツって「かわいい」要素がほとんどないんですよ(笑)。そういうところで作品を作ってみたいな、自分がどういう風に変わるかな、ということが見てみたかったんです。
―それは面白いポイントですね。本当にないですよね、ドイツ、特にベルリンにはかわいいモノが!
リュウ:ないですよね。とくに排除しようとしている感じ。かわいいモノに興味がない街。ドイツのモノって繊細さはないんだけど、落としても壊れなさそうな強さがありますね。遊びもないし、素っ気なくて媚がない。だから逆にかわいさがないんでしょうけど。日本では「かわいい」を売りにしているものってたくさんありますよね? 美術の世界でも。だから、それが通用しないところでやってみようかと。
―実際にこちらで作業していて、変わったところはありますか?
リュウ:日本で作業するときは、外国の音楽をかけていましたが、こっちに来てからは日本の音楽ばかり聞きながらやってますね。もっぱら荒井由美(笑)。荒井由美とくるりです。