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小西康陽×坂本慎太郎 対談"音楽のはなし"--前編

2013.01.09

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普段付けないランプをバチッと付けた時に、あのアルバムができた。(小西)

小西:坂本さんが作曲を始めたのっていつ頃からですか?

坂本:20歳くらいですね。最初に組んだバンドがゆらゆら帝国なんですけど、自分でバンド組もうと思ってそのために曲を作り始めた感じです。

小西:その時は大学生?

坂本:大学生です。

小西:就職しようとは思わず、音楽をやろうと?

坂本:そうですね。

小西:同じですね。人には言えませんでしたが。

坂本:僕は音楽でメジャーデビューしようとすら思ってなかったんですよ。絶対無理だと思ってたから。何の根拠があって就職しなかったのか分からないんですけどね。何の展望もなく、ただバンドを続けるってことしか考えてなかったですね。今は正確には思い出せないんですけど、なんとかなるみたいな考えが当時はあったんでしょうかね。

小西:今の歳になるまでギターを弾いてるなんて思ってましたか?

坂本:いや、思ってないですね。バンドもこんなにやるとも思ってなかったし。僕は中学生でギターを始めたんですけど、絵を描く方が好きだったし得意だったんですよね。そっちの方で何かやりたいと思ってたんですけど、大学生でバンド組んだら音楽と逆転しちゃって。それで今に至るって感じになっちゃって。もともとは、人前に出て何かやるとか、人の前で歌を唄うっていうのは一番やりたくないことだったんですけど、いつの間にかこうなっちゃったんですよね。今も自分でミュージシャンと名乗るのが恥ずかしいというのがあって、例えばギター一本渡されて何かやってみろと言われても、僕は何もできない。バンドで、ワーッと出て行ったから唄ってましたけど、一人で何かやれと言われても何の芸もないというか。昔、外国の友達の家に行った時、ホームパーティみたいな感じになって、みんなギターとかで唄ったりとかするわけですよ。そこで、「日本のミュージシャンです」って紹介されると、「なんかちょっとやってよ」ってなるんですけど、何もできなくて場をしらけさせたトラウマがありまして。

小西:すごい分かる。

坂本:でも、やる人もいるじゃないですか? 例えば、結婚パーティで何かやってくれって言われたら、打ち合せもしてないのに即興で一曲唄える人とか。そういうのがミュージシャンだなと。

小西:そういうタイプのいちばん偉い人はムッシュかまやつさんですね。もうね、本当にうまい。その場でギター渡されて唄っちゃったりするのが、本当に。

坂本:小西さん、そういうのできます?

小西:僕も苦手ですね。今でも憶えてるのが、確かあれは2000年くらいだったかな、「ジョン・レノン スーパーライブ」というチャリティか何かのイヴェントがあって、某音楽プロデューサーの方から出演オファーがあったんです。一も二もなく断ったんですけど、その時に「僕が出て行って何ができるんだろう?」って考えたんですよ。何もできないだろうな、と思ったんですが、ふと自分でジョンの「イマジン」をカバーするとしたらこういうアレンジでやるなと思い付いたのが、ピチカート・ワンのアルバムに収録されてる「イマジン」なんです。

坂本:へえ〜、すごいですね。

小西:その瞬間にスゴく鮮明にイメージできたのですが、ピチカート・ファイヴで、野宮さんの声でそれをやるという気はしなかったし、どこで発表する気もなかったからずっと忘れてたんです。それを2010年、ソロ・アルバムを作ってくださいと言われた時に、家に帰って寝室の普段付けないランプをバチッと付けた時に思い出したんです。それで、あのアルバムができたんです。

坂本:ってことは、◯◯さん(某音楽プロデューサー)なんですね、(ピチカート・ワンの)元は。

小西:名プロデューサーですね。

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