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Lawrence Jenkin × 荒岡俊行 伝説の眼鏡デザイナー、 ローレンス・ジェンキンが復活! 積年の想いを荒岡俊行が激白。

2014.07.18

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「この取り組みは今後もずっと続けていきたいですね」

-今回は5型からのリリースになるんですね。

荒岡: はい。この5型を作るのにも何度もミーティングを重ねました。ローレンスは〈アングロ アメリカン オプティカル〉時代に、ベストセラーになった名品といわれるモデルを数多く生み出しています。ただ、彼がぽつっと「Design is never finished. (デザインに終わりは無い)」みたいなことを言ったんです。71歳のおじいちゃんが言うセリフか!?ということで感銘を受けまして。だったら、もう完全に新しいデザインを起こしてもらおうと思ったんです。

-実際に仕上がったモデルは、古くて、そして新しいという感じですね。

荒岡: はい。誰しもそうだと思うのですが、当時デザインをしている中で、色々な心の葛藤があったと思うんです。その悩みの中で出てきたデザインが、結果名作として世に残っていますが、30~40年経った今では、色々な人生経験も積んでますし、その葛藤がまた違った選択肢を生むはずなんです。

-それはそうかもしれません。

荒岡: 本当に微妙なニュアンスの話だと思うんですが、それをもう一度表現してくれ、とお願いをしました。それが今回の5型ですね。多くのデザイナーが70年代に作られた名作モデルにインスパイアされて、ものづくりをしています。ローレンスの場合は、当時のデザインそのものを作っていた人が、今新たにものづくりをしているという点において決定的に違いますね。昔風ではなくて、昔そのものなんです。

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Quadra:フレームの上リムのデザインは、上下のアップダウンを少なめにし、"ややフラットめ"を狙ったラインのさじ加減が憎いです。¥42,000+税
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Quadra 着用の荒岡氏。

-なるほど。

荒岡: だから、今回のこの5型もパッと見、なんでもないんですよね。とくに機能的に優れているとかは全然ないですし。しかもいわゆるクラシック風にとか、計算しているわけではないんです。だからどこかに野暮ったさがあるんですけど、それがとにかくセンスがいいんですよね。ちょっとしたラインの引き方とかそういう本当に細かい部分、感覚的な点なんですけど。

-ということは、両者がディスカッションしながら作っていったというか、イメージをこちらから伝えて、ローレンスがそれに応えてずばっと作ってきたという感じなんですね。

荒岡: そうですね。それが去年の秋の話です。ロンドンで会ったんですけど、その時はデザイン画で僕にプレゼンしてくれるものだと思っていたら、もうすでにサンプルができていて。。僕はそれを見て、感極まって泣いてしまったんです。ホテルのバーで42歳の男が号泣して、となりには70歳のおじいちゃんがいるという(笑)。やはり9年前からの話があったので、こみ上げるものがあったんですよね。

-まずは「blinc」「blinc vase」での販売になるんですよね?

荒岡: そうですね。最初はやはりあまり数を作れないので、どうしてもそうなりますね。海外の有名な眼鏡屋さんでやりたいと言ってきているところはあるんですが、まず量産できないという点をどうするかなと。

-話を聞けば聞くほど、今回のプロジェクトは唯一無二というか。やはりデザイナー本人が手を動かしてという点だけ見ても、かなり特異なケースですよね。

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Rectangle:フロントの四隅の角を残し、ほんの少しだけプロポーションを横長にすることにより、よりシャープな印象に仕上げるところにデザインの深みを感じます。¥42,000+税
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Round:緩やかに丸みを増した全体のフォルムに対し、ブリッジを少しキュッと意図的に上げてみた洒落感にグッと惹かれます。¥42,000+税

荒岡: 洋服の世界でもなかなかないですよね。それこそオートクチュールになってしまうというか。本当、なんとか形になってよかったです。この取り組みは、今後もずっと続けていきたいと思っているので、この先どうしていこうかなというのを、今考えています。今はローレンスがフレーム自体を作っているので、次のデザインに取りかかれていないみたいなんです。このプロジェクトに関しては、ビジネスとしてというよりも「ローレンス・ジェンキン」という名前を広めていくということがまず大切なのかな、と思っています。ローレンスとしては、機械を整えて若い人を入れて、"メイド イン イングランド"という生産体制を残していきたいんだと思います。一度ダメになった産業をもう一度復活させること、それに残りの人生を懸けているというか。

-そんな「ローレンス・ジェンキン」を、どのように提案していきましょうか?

荒岡: これはローレンスだけに限らないのですが、ウチはデザイナー自身と距離が近いので、密にコミュニケーションをとれるんです。その中で聞いた思い、こだわりというのをお客さんに伝えるようにはしています。でも、一度アメリカ人のお客さんに怒られましたね。「そんなストーリーなんてどうでもいいんだよ! 自分に似合えばいいんだ!」って(笑)。でも、僕はそうではないかなと思っていて。やっぱりどういう背景で、ものが作られたのかが伝わった方が、眼鏡に対して愛着がわくし、親しみが持てるのかなって。「blinc」のコンセプトは"眼鏡の向こう側"なんです。形だけではなくその先を伝えたいなと。あまり押し売りになってもいけないとは思うんですが。

-きっとその思いはお客さんに伝わると思います。そういった想いを聞けることこそが、お店で買い物をすることの醍醐味ですから。ローレンス・ジェンキンとこのプロジェクトには、これからも注視していきたいと思います。今回の5モデルは8月末に発売予定です。

blinc
住所:東京都港区南青山2-27-20 植村ビル1F
電話:03-5775-7525
営業:11:00~20:00
定休日:月曜日 (月曜日が祝日の場合は、翌火曜日休み。)

blinc vase
住所:東京都港区北青山3-5-16豊栄ビル1F
電話:03-3401-2835
営業:11:00~20:00
定休日:月曜日 (月曜日が祝日の場合は、翌火曜日休み。)
http://blinc.co.jp/

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