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〈メゾン キツネ〉クロキ マサヤが語るクリエイションの現在地。

2011.08.25

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2011秋冬コレクションを解剖。〈メゾン キツネ〉は新たなフェーズへ突入する。

―今秋冬は映画『ブロークバック・マウンテン』をインスピレーションソースに展開したわけですが、アメリカンウェスタンクラシックというスタイルがテーマとしてあると思います。今までの〈キツネ〉のイメージからずいぶんサイドチェンジした印象でした(〈メゾン キツネ〉の2011A/Wコレクションはこちらでチェック)。

マサヤ:やはりすごく男っぽいイメージに映ったと思いますよ。今までの〈キツネ〉のイメージというところについて言及すると、ブランドというのはやはりブランドイメージをまず作らなければならない。日本はどうだか分かりませんが、向こうはアパレルビジネスにおいては、ゲイやストレート、年齢などに関わらず多くの人々に好かれる必要があります。そうしたなかで、なぜ今、自分の洋服が〈ドリス ヴァン ノッテン〉や〈メゾン マルタン マルジェラ〉、〈トム・ブラウン〉の間に置かせてもらって、そこに置けば売れるというポジションを考え売ってもっているか、というところは非常に重要なことだと思うのです。

kitsunecap003.jpg 『ブロークバック・マウンテン』('05)
60〜80年代のアメリカ・ワイオミング州を舞台に、引かれ合う2人の男を描いた映画。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した。主演はヒース・レジャー、監督はアン・リー。

―はい。

マサヤ:つまり、自分はクリエイターというよりは、服づくりそのものに重点を置いている。それはなぜかというと、そういう空間に洋服を置いてお客さんに喜んでもらいたいからなんです。だから、バイヤーにもお店にも、お客さんにも、ゲイにもストレートにも好かれる洋服づくりというのを考えると、テーマ的なもの、いつもロマンチックなストーリーを考えてモノづくりを進めていく必要があったんです。実際、素直な意味を持って、男性の中にあるフェミニズムを少し前に出しつつシンプルな洋服づくりに努めてきたわけです。

―そのようなブランドイメージを構築してきたなかで、今季のようなスタイルがあると。

マサヤ:自分の回りでとくに多いのですが、例えばストリートなものをずっと着ていた人が少し大人になって、そういう彼らも〈キツネ〉の服が好きと言ってくれるんですよ。ただ、少しサイズが合わないとか女の子っぽいとか、もちろん自分はピンクやレモンのオックスフォードが好きなんですけど、それだけでは少しフェミニンすぎてしまうんですよ。そういった中で、濃いマスキュリン、男の洋服みたいなものをそろそろやりたいなと。これもほんと大げさな言い方ですが、重い木こりみたいな人が着るようなワーカージャケットとかを、高級な素材を使ってもっと街向けに作ってみたらどうかなと思ったんです。いつだったか、〈アダム キメル〉が〈カーハート〉とコラボレーションしましたよね?

ca_kimmel_3.jpg 今季より始動し、ファッション業界においても大きなトピックとなった〈アダム キメル カーハート〉。ワークスタイルをスタイリッシュにブラッシュアップしたコレクションが誕生した。すでに各取り扱い店舗でも大好評。

―今シーズンですね。

マサヤ:あれを見たとき、「あー、同じこと考えてるんだなあ」と思いましたね。だから、なんていうかアウトドアのものをみんなが着たがる時期っていうのは必ずあると思うし、自分もそう思ってたんですよね。それは、ちょうどゲイもストレートも喜ぶところだと思うんです。いままでのアイビーとかプレッピーな感じではなく、もう少し重みのある男っていう気分だった。その中で、クラシックあり、オックスフォードありでベーシックというポイントはキープしています。

―少しゲイという話が出ましたが、この映画の内容もカウボーイ同士の禁断の恋愛がストーリーの根幹ですよね?

マサヤ:映画の内容はただ自分が好きなだけで、そこはコレクションに関係ありません(笑)。あの作品はもともと自分が好きな映画のひとつで、実際インスパイアもするし公言もする。俳優もストーリーも最高ですからね。だから、内容というよりも、彼らのいるライフスタイルの中の洋服ですね、テーマとしては。

―アメリカンクラシックというスタイルながらも、実際に手に取ってみると〈キツネ〉が本来持っている普遍性やタイムレスな感覚を受けます。

マサヤ:本当にその通りで、例えばこのジャケットの素材に使用しているハリスツイード。これなんか100周年ですからね、このタグ欲しさに作ったようなものですよ。一生ものです。

kitsunecap005.jpg 今年100周年を迎えるハリスツイードを使用したジャケットに、マサヤ氏も納得の表情。ルックでも存在感を主張し、今季を象徴するアイテムに。

―一生ものという言葉がでましたが、そういった普遍的な〈メゾン キツネ〉らしさを持たせるため、とくに今回気を遣ったところはありますか?

マサヤ:あまり深くは考えないですね。自分にとってカウボーイっていうとやっぱりこんな感じなんですよ。まあ今回の場合、あくまで街の中を歩くカウボーイだから、実際これで冬山とか森とか行ったら寒くて死んじゃいますよ(笑)。あくまで街の中で着る洋服という点ですかね。ただ、なんでしょうね、なるべくシンプルでまとめたいっていうのはありますよ。というのも、そういうところで着る洋服ってすごく複雑なんですよ。〈カーハート〉見てもそうだし、ワーカーの洋服は複雑。縫い目とかすごく強くできているし、生地も何度も何度も織ってそれをまた縫うという感じだから、すごく痛いんですよ。さらにそれを洗濯するとなると大変。今回は、ベースは昔からある古着のワーカーの洋服をベースに作り直した一方、なるべく機能性は抑えてますね。全部が全部機能的な洋服だと同じになってしまうから。

―機能的すぎずリアルに着られるということに関して、今日の日本のストリートでも"アウトドア"というのはひとつのキーワードでもあると思います。若い人たちが今季の〈キツネ〉の洋服をどのように着るかという点で、何か期待している部分というのはありますか?

マサヤ:いや、あまりそういうことは考えてないですね。逆にいえば、先ほども言ったようにプロダクトありきのブランドだから、気に入ってもらえたら自分でアレンジできる洋服だと思いますね。着こなし方とかは特別にあったりするわけではないですし。クリエイターというよりは、もっとカジュアルなタッチの、素材はすごく良いけれどアティチュードはすごくカジュアルでいたいですね。着るのにそんなに難しい洋服ではないと思うし、むしろ着やすいと思いますよ。

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