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〈メゾン キツネ〉クロキ マサヤが語るクリエイションの現在地。

2011.08.25

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一足早く、2012春夏コレクションについて。

―さて、続いては来年の春夏についてのお話を聴かせてください。テーマはアメリカの小説を原作にした映画『華麗なるギャッツビー』ということで、1920年代ニューヨークに住む上流階級の若者のイメージを表現しました。広義ではこちらもアメリカンクラシックということですが?

マサヤ:これに関しても、ほんと単純に好きな本なんですよ。やっぱり、彼らっていうのはすごいスタイリッシュで、生活のエンジョイの仕方がカラフルだったんです。これが例えばヨーロッパになると、コテコテな感じがしてあまり好きではないんです。となるとアメリカ、とくにイーストサイドの遊び人ですね。ギャンブル、お酒、女、車に魅了されてね。そういう場所にいる男たちっていうのは、すごくカラフルなパステル調のものを着ている人が多くて、そういうアティチュードを取り入れたかったんです。春夏ではそういった色を意識することが好きなんです。意外にみんな濃い色のものを作ってますしね。

kitsunecap008.jpg 『華麗なるギャッツビー』
アメリカの作家、F・スコット・フィッツジェラルドの小説が原作の映画。1920年代のアメリカ・ニューヨークの郊外にある高級住宅地ロングアイランドが舞台。2012年春夏のテーマはそこで生活したり休暇を過ごす人々のワードローブがテーマとなっている。

―素材感もすごくライトですね。

マサヤ:今回は日本の生地屋さんにもお願いしているし、すごく面白いと思いますよ。

―映画や小説にインスピレーションを受けることは、単純にそれが好きという理由からだけでしょうか?

マサヤ:そうですね。やっぱり素直に僕が好きでやっていて、それを世の中もしっかり認めてくれている。自分の好きなことをクリエイションに繋げて、そこに喜んでくれる人がいるから、だからそれでいいと思います。逆にそれっていうのは一番難しいところでもあるのですが(笑)。でも、それを続けていきたいから。メッセージとまでは言わないけど、言いたいことがあったらもっと言えと。みんなできることだと思います、それは。

―好きなことを常にクオリティを保ちながら続けていってるなあと、つくづく感じますね。とりわけ来年の春夏に関しては、上品さや小綺麗さみたいなところに目が行きがちですが、決してフェミニンな雰囲気というわけではないですよね。

マサヤ:ブルジョワ的なところはあると思います。でも、まだまだ男の洋服だと思いますよ。悪ガキっぽいイメージがありますよね。スタイリングをシンプルにまとめたっていうところもあると思います。でも、こういう格好して高い車乗ってギャンブルしてるいいとこの息子さんとか、けっこういますよ。自分はどっちかっていうとストリート育ちだから、そういう人とは仕事を通じてしか出会ってないけど、そういうところからもインスパイアされるのも良いと思いますけどね。まあ、相変わらずみんな〈ラルフローレン〉着てますね。そろそろ〈メゾン キツネ〉を着ろ、と(笑)。

―参考にしたりするんですか?

マサヤ:しょっちゅう行きますよ、お店は。やっぱり行くといっぱいアイデア出てくるし、インスパイアされますよ、すごく。〈ラルフローレン〉と〈ブルックスブラザース〉はずっと見てます。3ヶ月に1回は必ず行きたくなりますね。あの雰囲気好きですから。店員さん可愛いし。

―(笑)

マサヤ:とくに〈ブルックス ブラザーズ〉は色気もありますよね、洋服だけでなく店員さんも。表現しにくいんですけど、あまり言うと変態って言われるからここでは深くは言わないですけど(笑)。でも、ほんと〈トム・ブラウン〉の洋服着て色気を感じる人っていると思うんですよね。それと同じで、〈ブルックス ブラザーズ〉も、特に〈ブラックフリース バイ ブルックス ブラザーズ〉なんか、ああいうのを見ていて、とても色気を感じる洋服だなあと。

―〈キツネ〉で色気を意識したりする部分っていうのはあるんですか?

マサヤ:自分はまだそういう洋服を作りたいって思ってないから、あまりそこに集中してないです。もしかすると、そのうちそういう時期が出てくるかもしれない。でも今のところはまだデイリーな洋服、昼間の洋服ですね。夜の色っぽい部分を出したくなったら出てくると思いますよ。

―そういった見せ方の部分で言うと、〈キツネ〉のルックというのはすごく単純明快でシンプルな表現の仕方を取っている。意図しているところがスッと伝わってくるなあと思います。そういうルックブックって意外に少なかったりするんですよね。

マサヤ:なるべく毎日の、月曜日から日曜日を意識した作りにしてます。実際、自分自身もそういう格好してるから、自然とそうなるんでしょうね。でもそれはすごく大事なことで、デザイナー自身が自分に素直なプレゼンの方法を取っているブランドっていうのはいい結果を残していると思うし、そこにコンフュージョンが出てくると、別のダイレクションを取ってしまうことになるから難しい。スタイリングで別のアティチュードが出てしまう場合というのはたくさんありますからね。

―春夏のアイテムでは、太めのボーダーポロ、あとは太めのパンツっていうのも印象的でした。

マサヤ:そろそろ太くてもいいんじゃないかな。こういうスタイルも大好きですね。うーん、あとはオリジナルの生地を使っているこのジャケットですかね。リネンの。

―この生地はどちらで?

マサヤ:イタリアですね。〈スーブラッティーノ〉と〈ソルビアッティ〉という、どちらもイタリアの歴史あるメーカーにオリジナルの重さとパターンのものを作ってもらったんですよ。もともとはもっと薄くて、色も違ったものだったんですけど、パターンをそのままに色をトリコロールに、リネンはもっと軽くしてくれって頼んだんです。染めは濃く、重さは軽く。他にも、もしかしたらこっちの方が分かりやすいと思うのですが、初めてウォッシュをかけたジャケットなんかも作りました。ストリート系のアティチュードなんかも入れて、それでも色使いはドレスなパステル調を意識しましたね。すごい良いんじゃないでしょうか(笑)。

kitsunecap009.jpg こちらがこだわりのオリジナル生地を使用したリネンジャケット。もともと生地屋の持っていたパターンをベースに、カラーをトリコロール、重さを軽くしてイメージ通りの1枚に。

今後のクリエイションを見据える。

―なるほど。最後に、まあ何度も何度も言われていることとは思いますが、オンリーショップを期待しています。

マサヤ:はい、開けます(笑)。はい、頑張ります。来年くらいかな? 待っててください。

―今後のクリエイションについて、どのように展開していくのか教えてください。

マサヤ:うーん、今後はもっとレディースをプッシュしたいですね。楽しいんですよ。レディースのクリエイションにもっと時間を費やしたいですし、もっと勉強して服づくりをしたいですね。メンズはもう行き先が分かっているというか、見えてるんですよ、はっきりと。自然で素直な服づくりをスムーズに出来る。メンズは先ほども挙げたように、夜の服というか、色気の部分ですね。

―具体的にレディースの服づくりの魅力っていうのは?

マサヤ:今までは両方のデザインしている時間っていうのは一緒だったんですよ。メンズコレクションのガールフレンドっていうかね。逆にこれからは別々で、もっとスタイリッシュな、どちらかというと特別な機会に着る大切なドレスの一枚だったりっていうのを作りたいですね。まあ、シャツとか、メンズライクな落とし込み方っていうのはある程度続けていくとは思うんですけど、着方によってはマスキュリンな味の出る、そういうレディースを作っていきたいですね。女の子っぽいというよりは、緊張感のある服を。

―楽しみが広がりますね。今後も期待がもてます。どうもありがとうございました。

kitsuneprof.jpg クロキ マサヤ
12歳で渡仏し、建築を専攻。2002年に〈キツネ(KITSUNÉ)〉を結成し、音楽を中心に活動を開始。2005年よりアパレルコレクションをスタートさせ、以来コレットや10コルソ・コモなどの世界的な一流ショップにセレクトされる。2008年3月、パリに直営店をオープン。

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