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FEATURE|Sneaker Journal vol.5 シューズクリエイター、今井タカシの現在。

シューズクリエイター、今井タカシの現在。

Sneaker Journal vol.5

シューズクリエイター、今井タカシの現在。

スニーカーにまつわるさまざまな事象を取り上げ、フイナム的な視点で掘り下げていく連載企画『Sneaker Journal』。今回は、シューズブランド〈TIMAI〉を手掛ける今井タカシさんにインタビュー。かつてはスニーカーショップ〈アトモス〉のディレクターを務め、後に〈MADFOOT!〉で一世を風靡したスニーカー界の奇才は、昨今のスニーカーシーンをどう捉え、いまどのような思いでシューズ作りに取り組んでいるのでしょうか?

  • Photo_Osamu Matsuo
  • Interview & Text_Issey Enomoto
  • Edit_Hiroshi Yamamoto
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今井タカシ / TIMAI ディレクター

1970年生まれ。1990年代は上野のスニーカーショップ『カネオカ』『ミタスニーカーズ』に勤務する傍ら、伝説のラップグループ「ガスボーイズ」のMCとしても活躍。その後、スニーカーショップ『アトモス』のディレクターを経て、2001年にスニーカーブランド〈MADFOOT!〉を設立。2012年に同ブランドを離れ、同年、コンフォート性を重視したフットウェアブランド〈TIMAI〉をスタート。

卸しをやめて、目の届く範囲で商売する。

ー今井さんが自身のシューズブランド〈TIMAI〉を立ち上げてから5年が経ちますが、スタート当初と現在で何か変わったことはありますか?

今井:大きな変革は、この秋冬から卸しをやめたことです。卸しをすると、それなりに数は出て、売り上げにはつながります。けれども、ブランドとしては、どうしても存在感が薄くなってしまうのは否めない。卸先のショップには、〈ナイキ〉、〈アディダス〉、〈プーマ〉、〈リーボック〉といった並み居る競合他社のシューズが並んでいます。そのなかで埋もれることなく、存在感を出していくというのは、とてもハードルが高いことです。

ー卸しをやめるというのは、思い切った決断ですよね。

今井:〈TIMAI〉って、きちんと接客して、履いてもらって、説明しないと、良さがなかなか伝わりづらいブランドだと思います。そういう意味では、2014年に京都にオープンしたオンリーショップは、5坪くらいの小さい店だけど、接客を通じて〈TIMAI〉の良さをしっかりとお客さんに伝えられる。売り上げも順調です。そのように、規模は小さくても、自分たちの目の届く範囲でやっていくことが大切なのかなと。

ー今井さんがかつて手がけていた〈MADFOOT!〉は全国の量販店で取り扱われていましたが、それとは正反対のアプローチですね。

今井:そうですね。〈MADFOOT!〉の時代は結局、お客さんの顔が見えなくなっちゃったんですよね。それに対する自分なりの反省もあります。

すごいスニーカーを持ってる俺ってすごい? 全然すごくないから(笑)

ー昨今のスニーカーシーンを見ていて思うことはありますか?

今井:以前に比べてマーケットは飛躍的に広がったし、カルチャーとしても成熟したと思います。ただ、その分、若い人が新しく参入しようと思う感じにはならない状況になっていますよね。昔の裏原宿の黎明期みたいに、Tシャツつくったんでお店出します、みたいに気軽に参入できるといいんだけど……難しいですね。

あと、各ブランドからリリースされる新作の数が、あまりにも多すぎる。そのシーズン、どのメーカーが、何を出しているのか、自分みたいなスニーカーを職業にしている人間でさえ、全部を網羅できないほど。実際、それに辟易している人は結構いて、昔はよくスニーカーを買っていたけど、もう疲れちゃったという声をお客さんからもよく聞きます。

ースニーカーシーンに影響を及ぼすインフルエンサーのなかには、最近は若い世代もちらほらと出てきつつありますが、それについてはどう思いますか?

今井:新しい人が出てくるのはいいことだと思うけど、自分たちとは価値観がまるで違うし、あまり共感できない人たちも、なかにはいますね。彼らにとって市場価格が高いスニーカーこそが偉くて、「それを持ってるおれってすごいでしょ」というロジックなんだろうけど、いやいや、それ全然すごくないから(笑)。なんだかな〜って思いますね。

“ファッション”ではなく“コモディティ”でありたい。

ー〈TIMAI〉の今季の新作のなかで、特に注目してほしいモデルについて教えてもらえますか。

今井:まずは「JUDO」。くるぶし丈のチャッカブーツタイプで、アッパーはフルグレインレザーとナイロンキャンバスの切り替えになっています。

「JUDO」¥17,000+tax

今井:このシューズの特徴は、アウトソールにIPR(インジェクションプロセスラバー)を用いていること。このソール、めちゃくちゃ履き心地が良くて、長時間履いても疲れ知らず。自分も立ち仕事だけど、足が全然疲れないんですよ。こういうカジュアルシューズで、ここまで履き心地にこだわったシューズって、あまりないんじゃないかな。

続いて「CHOSEI」。これからの季節にぴったりのサイドゴアブーツです。

「CHOSEI」¥16,500+tax

今井:これは2016年秋冬にリリースしてとても好評だったので、同モデルで素材を変えて作ってみました。

ーどれもシンプルなデザインで、色使いもシックですね。

今井:かつて〈MADFOOT!〉でいろんな色をやりすぎて、色に関しては飽きちゃったところがあって(笑)。人は靴にいろんな色を求めてないってこともわかったし。デザインに関しては、年齢的なものもあるかもしれないけれど、究極なまでシンプルにすることを意識しています。トレンドに流されることなく、普遍的に愛されるものをしっかり作っていきたいなと。

もっと言うと、年2回新作をリリースするという既存のサイクルも超越して、自分が作りたいタイミングで作りたいものを作れるのが理想的なんですけどね。春夏と秋冬に新作を発表するのがファッションなのかもしれないけど、そういう意味では、自分が作りたい靴は、ファッションよりもコモディティに近いのかも。流行り廃りは関係なく、常に同じスタンスで履き続けられるものを作れたほうが、作り手冥利に尽きるというのが気持ちとしてあるんです。

今井タカシ、ランニングにハマる。

ー最後に、話は変わりますが、今井さんは最近ランニングに夢中になっているそうですが、始めたきっかけはなんだったんですか?

今井:きっかけは特にないんですが、去年の6月くらいかな。なんとなく走りたいなと思って、走り始めて。最初は5kmくらい、だいたい週1ペースで走り始めて、そのうち10kmを余裕で走れるようになったあたりから、どんどん面白くなっていきました。

ー走るときはどんな靴を履いていますか?

今井:いろいろですね。〈ナイキ〉とか、〈アディダス〉とか、〈ホカ オネオネ〉とか。あれこれ履き比べるのも楽しいです。あと、試しに〈TIMAI〉の靴を履いて走ってみたところ、思いのほかいけました(笑)。

ーランニングにおける目標は?

今井:父親が年間10本くらいフルマラソンに出るような熱心な市民ランナーだったのですが、50歳を過ぎてからサブ3(フルマラソン3時間切り)を達成したらしいんです。正直、サブ3は難しいと思うけど、自分自身も中学時代は陸上部だったので、50歳までに、どこまでいけるのか、いけるところまでいってみたいなと。とりあえず、今年の12月、湘南国際マラソンに出ます。自分にとって初めてのフルマラソン、とても楽しみです。とりあえず4時間は切りたいですね。

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