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FEATURE|CORE of SHIPS JET BLUE バイヤー2名の視点で紐解く、SHIPS JET BLUEの核とは?

バイヤー2名の視点で紐解く、SHIPS JET BLUEの核とは?

CORE of SHIPS JET BLUE

バイヤー2名の視点で紐解く、SHIPS JET BLUEの核とは?

セレクトショップ「SHIPS(シップス)」から派生し、よりストリートやモード性を追求したレーベルとして誕生した「SHIPS JET BLUE(シップス ジェットブルー)」。他のショップにはないセレクト、独自の視点でエディットされた別注アイテムなど、このショップの動向が最近なんだか気になるのだ。お店の設計図を描くバイヤーは、いまなにを考えショップのディレクションをしているのだろう? バイヤー2名の視点を通してぼくたちを魅了する“何か”の存在に迫ってみよう。2週目はドメスティックブランドの買い付けを中心に、別注の企画も行なう田中 楽さんが登場。

  • Photo_Kazumasa Takeuchi(STUH)
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Komuta
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複数のものが掛け合わさってつくられたものが好き。

ー先週公開された北畠さんの記事(http://www.houyhnhnm.jp/feature/11156/)でも触れましたが、田中さんは主にドメスティックブランドの買い付けと、別注の企画を担当されているんですよね?

田中:そうですね。海外のブランドとやりとりをすることもあるんですが、基本的には国内のブランドさんの担当ということになります。

ー「シップス」に入社されたのはいつ頃なんですか?

田中:2003年にアルバイトで入社して、はじめは「シップス 池袋パルコ店」で5年ほどショップスタッフとして販売をしていました。その後2008年に原宿店のオープニングスタッフとして異動し、半年ほど働いたあと、「シップス ジェットブルー」のアシスタントバイヤーになったんです。

ーそしてアシスタントという肩書きが抜けて、現在は「シップス ジェットブルー」のバイヤーになったと。

田中:そうですね。アシスタント時代も含めると今年で8年目になります。

ーバイヤーとしてキャリアを重ねるなかで意識に変化はありましたか?

田中:お店のスタンスが変わっていないのでバイイングに関して思っていることは8年前とはなにも変わっていないです。ただ、年月が流れるなかで色んなデザイナーさんと出会い感化されることが多かったので、ぼくの内面には当然変化がありますね。それがバイイングに影響を与えることは少なからずあると思います。

ーなるほど。ファッション的な部分ではどんなものに影響を受けてきたんですか?

田中:中学のときに雑誌の『BOON』を読んでいて。当時は90年代で裏原全盛の頃でした。ぼくはヒップホップのファッションに何故だか惹かれていて、アーティストたちが着ている服などを調べて買っていたりしましたね。それで高校生の頃に裏原も意識するようになり、雑誌を片手に原宿へ行っていました。そこに行けばカッコいい人に会えると思って。

ールーツはヒップホップなんですね。

田中:そうですね。中学のときからずっとヒップホップを聴いています。『BOON』にDJ WATARAIさんの連載ページがあったんですよ。そのなかでデ・ラ・ソウルの『ステークス・イズ・ハイ』と、ア・トライブ・コールド・クエストの『ビーツ、ライムズ・アンド・ライフ』が紹介されていたんです。なんかジャケットがカッコいいなぁと思ってCD屋へ行ってその2枚を買ったのがきっかけですね。中学生の自分の耳には全然理解できなかったんですけど、とりあえず聴き続けていました。その後友人にウータン・クランの『燃えよウータン』を聴かせてもらって、一気にハマっていったという感じです。











ーそうなると、ストリートカルチャーに対してもおのずと興味が湧いていったり?

田中:広い意味で言えばそうですね。でも、基本的には音楽があって、そこに付随するカルチャーとしてスケートなどを知った感じです。映画監督のスパイク・ジョーンズがむかしファーサイドの『ドロップ』という作品のPVを撮っていたんですよ。あれが個人的にすごく好きで。





田中:その流れでスパイク・ジョーンズを掘っていったらスケートのビデオを撮っていることを知って、それでスケートもカルチャーとして好きになっていったという感じです。すべてに前提としてヒップホップがあるんです。

ー今日お持ちいただいた私物もすべてヒップホップのミックステープなんですか?

田中:ベースはヒップホップですね。でも他ジャンルの音楽もミックスされてたり、このなかのアーティストは現在ハウスのDJになっていたりしているんです。そのクロスオーバーしている感じがぼくは好きなんですよ。

ーヒップホップも、いろんなジャンルの音をサンプリングして構成されていますもんね。

田中:そうですね。ひとつの素材で構成されたものよりは、何かと何かをかけ算してつくられたものになんだか惹かれるんです。

ーそのアート作品はどなたのものなんですか?

田中

ー 

田中:これは河村康輔さんというアーティストの作品なんですが、これも写真のコラージュで構成されていて。河村さんの作品はミックスアップして制作されたものが多くて、やっぱり自分の感性に響くんですよ。一度「シップス 広島店」でライブコラージュをやってもらったんですけど、これはそのときに購入しました。アート好きというわけではないんですが、これはなんだか欲しくなってしまったんです。

なにか引っ掛かりを感じるデザイナーと別注の企画をしたい。

ーやはり、バイイングにおいても“ミックスアップ”ということを意識していたりするんですか?

田中:そうですね。ぼく、ひねくれ者なんですよ(笑)。だから展示会でもブランドが提案しているルックをそのままピックアップすることはしたくないんです。「シップス ジェットブルー」というお店のなかにそのアイテムが入ったときに、ひとつのピースとしてそれが機能するように買い付けを行なっていますね。

ーお店の提案としてもブランドでワンコーデを組むんではなく、ブランドとブランドをミックスすると。

田中:そうです。展示会に行ったときも「このアイテム、さっきのブランドのパンツと組み合わせたらかっこよさそう」とか、そういうことを考えながら洋服を見ています。

ーブランド単位で見たときに、取り扱う、取り扱わない、というのはどんな基準で考えているんですか?

田中:アイテムがいいというのはもちろんですが、ぼくの場合はデザイナーさんを見ますね。その人がカッコいいかどうか。取り扱っていないブランドにも当然カッコいい人はたくさんいるんですが、コミュニケーションを取る上でなにか引っ掛かりを感じるデザイナーさんのブランドはやっぱりいいんですよ。

ー「シップス ジェットブルー」のバイヤーとしてはもちろん、田中さん個人としてもなにか惹かれるものを感じるブランドがいいと。当たり前と言えばそれまでなのですが、個人の考えが強くなったりはしないのでしょうか?

田中:そうなったりもしますね。ただ、それが悪いことだとは思っていないんです。ある程度腹を割ってコミュニケーションを取らないと、別注アイテムに関してもいいものをつくれないですから。単なる“色替え”や“生地替え”とかではお客さまの心に響くアイテムをお届けできないと思うんです。

ーじつは今回「シップス ジェットブルー」で別注アイテムを展開しているブランドのデザイナーさんに、田中さんやお店に対するコメントを頂戴しているんです。田中さんご自身も、それぞれのどんな部分をリスペクトしているのか教えていただけますか?

田中

VAINL ARCHIVE / 大北幸平さん
たくさんの情報が勝手に手に入ってしまう時代。おなじ商材を違う見せ方で勝負しなくてはならない昨今を見て、「シップス ジェットブルー」は独自の展開や見せ方をしていると思います。田中さんとはもう5年近くお付き合いをしているのですが、つねに冷静なバイイングをしているなぁ、と。その一方で、変わらない姿勢を持ちながら新しいことにも貪欲。つまり“黙々としながら虎視眈々”というのが田中さんの魅力なのかもしれないですね。

ー 

田中:大北さんはぼくが通ってきた裏原やヒップホップのことをなんでも知っているだけじゃなくて、さらに広い知識を持ち合わせているんです。だから話していてもすごく知恵がつくし、ご自身では「VIDEOBOYZ」というアート活動もされていて、多岐に渡って発信されているところにすごく感銘を受けています。

ALLEGE / 山口 亮さん
毎シーズン、ベーシックかついい意味でいまっぽいムードがあるところが「シップス ジェットブルー」の強味だと思います。田中さんは同世代ということもあって、洋服だけじゃなくてパーソナルな話ができるところが魅力的ですね。別注をつくるときはいつも特別感を出せるように考えながらデザインをしています。

ー 

田中:山口さんはもともと音楽業界に身を置いていたこともあって、音楽への造詣がとにかく深いんです。話すときはいつも音楽の話題ですね。自分の好きな90年代から2000年代のブラックミュージックの話をしてくれて、いつも勉強になってます。

Photo_HITOMI HOZUMI Son of the Cheese / 山本カイトさん
ぼくらのブランドを“ファッションブランド”として見てくれる「シップス ジェットブルー」にはいつも感謝しています。田中さんは自分たちだけでは思いつかないような別注の企画を考えてくれるので、常にワクワクしながら取り組ませてもらっていますね。淡々としていながらもときに漢(オトコ)らしく、打ち合わせ時はいつも勉強させてもらっています。

ー 

田中:山本さんはぼくにとっていい意味で異次元の人なんですよ。通ってきた道も違うし、いままで会ったことないタイプの人。だからこそ刺激を受ける部分が多いし、行動力やバイタリティーにあふれているのですごく尊敬しています。

tone / 前出卓久さん
ストリートとモードの境界線を持たず独自のラインナップでファッションを発信しているとこが「シップス ジェットブルー」の魅力だと思います。歴史あるお店に自分のブランドのアイテムを展開してもらえるのは、ひとつの水準を表し、信頼の意味をもつことなので本当に光栄です。田中さんは洋服そのものだけでなく、それに付随するカルチャーや歴史を重んじる人。そして、現在進行形で生まれているカルチャーも上手に混ぜながら独自のバイイングをされているところに魅力を感じます。あと、会って話をしているときにでてくるシニカルなコメントも好きですね(笑)。

ー 

田中:前出さんはすごくフラットな人なんですよね、人間性もファッションに関しても。バランス感覚に優れているというか、いろんなところを横断しながらいい部分をピックアップするのが上手なんです。もともとストリートブランドにいたのにいきなりニットブランドをはじめたりとか、オールラウンダーで守備範囲が広い。生意気なぼくの話をよくきいてくれるところも、前出さんの懐の深さというか、本当にいつもお世話になってます。

Hombre Niño / 江川芳文さん、関 正史さん
「シップス ジェットブルー」はぼくたちがブランドをスタートさせたときから取り扱ってくれているお店です。別注の企画をするとき、田中さんはいつも“簡単なお題”をくれて、それをもとにアイテムのデザインをしています。田中さんは常に独自の視点でものを見ているので、そこが魅力的だと思いますね。

ー 

田中:江川さんは存在がレジェンドなので、魅力はそこにつきますね。自分が裏原を追いかけていたこともあるんですが、雲の上の存在だった人とこうして仕事できるのは本当にありがたいことです。食事をご一緒させてもらったこともあるんですが、いまだに緊張してうまく喋れません(笑)。

別注をするときはデザイナーへ「お題」を投げる。

ーデザイナーさんに惹かれるブランドに別注の依頼をするという話でしたが、オーダーをするときはどんなことを意識しているんですか?

田中:ブランドのよさが表現されるものでなければ意味がないと思うので、「シップス ジェットブルー」のカラーを出すというよりは、ブランドの魅力を広げるような意識でオーダーしています。そのブランドのインラインのアイテムを買っている人が別注にも手を出したくなるようなアイテムをつくりたい、というのが個人的な想いです。

ーとはいえ、お店となんの関係もないオーダーはできないですよね?

田中:〈オンブレニーニョ〉の江川さん、関さんのコメントにもありましたけど、ぼくはデザイナーさんに「シップス ジェットブルー」に関連するキーワードを使ってお題を投げるんです。そのブランドの特徴やシーズンのクリーエーションに合わせて、こちらもお題を練るようにはしていますね。そして光るものができればな、と。

ー今シーズン「シップス ジェットブルー」で展開する別注アイテムにはどんなお題をだしたんですか? まずは〈サノバチーズ × シップス ジェットブルー〉のジャケットと〈トーン × シップス ジェットブルー〉のポンチョから。

田中

〈サノバチーズ × シップス ジェットブルー〉ジャケット ¥28,000+TAX

ー 

田中:渋谷店が今年の10月で30周年を迎えるんですが、渋谷店限定の別注アイテムをつくろうと思ってオーダーしたのがこの2つです。〈サノバチーズ × シップス ジェットブルー〉のジャケットのお題はズバリ「渋谷」(笑)。渋谷の並木橋あるブランドのショップが入っているビルがモチーフになっています。グラフィックはナイジェルグラフさんに描いてもらっていました。チーズが落ちていてそこにネズミがたかっているという、渋谷のダーティな景色をポップに表現した一着ですね。

〈トーン × シップス ジェットブルー〉スエットポンチョ ¥23,000+TAX

ー 

田中:〈トーン × シップス ジェットブルー〉のアイテムのお題は「ポンチョ」。じつは去年おなじポンチョで別注をしているんですよ。それが好評で渋谷店のスタッフから「またあれをやって欲しい」という要望があったので、そのアップグレード版としてリリースします。フードのデザインと、スラッシュポケットを追加しているところ、あとカラーも今年はカーキとブラックに変更しています。

ーつづいて〈プリミティボ × シップス ジェットブルー〉はいかがでしょうか?

田中

〈プリミティボ × シップス ジェットブルー〉スウェット ¥13,000+TAX

ー 

田中:このブランドはサイケデリックなグラフィックが特徴のアメリカのブランドなんです。これに関してはお題はとくにないですね…(笑)。とはいえ、グラフィックは今回のために描き下ろしてもらって、ボディにチャンピオンスエットを使用しているのがウチらしいポイントです。

ーでは〈ヴァイナル アーカイブ × シップス ジェットブルー〉と〈サノバチーズ × シップス ジェットブルー〉のセットアップはどうでしょうか。

田中

〈ヴァイナル アーカイブ × シップス ジェットブルー〉ジャケット ¥42,000+TAX、パンツ ¥26,000+TAX

〈サノバチーズ × シップス ジェットブルー〉ジャケット ¥32,000+ TAX、パンツ ¥22,000+TAX

ー 

田中:自分自身、年齢を重ねてセットアップを着たくなってきたんですよ。だから「セットアップ」をお題に作ってもらいました。緻密な服作りをする〈ヴァイナル アーカイブ〉と、カルチャーを重視してクリエーションを展開する〈サノバチーズ〉。この両者がセットアップをつくったらどんなものができあがるんだろう? と。対極なモノづくりをしているブランドにあえて同じお題を出すことで、デザインの相違やおもしろさを感じたかったんです。

対極にあるものをあえて取り入れて、自分の個性を浮き出して欲しい。

ー今シーズンの「シップス ジェットブルー」についても話を聞きたいんですが、見どころはどんなところにありますか?

田中:新しく〈エトス(ETHOS)〉を取り扱っているところですね。従来はクリーンなイメージのブランドが多かったんですけど、そこに新しい風を吹かせようということで仕入れました。〈エトス〉の洋服には現代の空気感と、東京の不良たちが着ているような“毒っぽさ”を感じたんです。

ETHOS 16FW シーズンルックより。

SHIPS JET BLUE 16FW シーズンルックより。

ーいままではデザイナー重視だったところに変化があったということですか?

田中:いえ、そんなことはまったくないです。むかしから展示会にはお邪魔させてもらっていて、デザイナーである柳内さんと池田さんとはよくコミュニケーションを取っていました。そういったなかで、このブランドなら差別化が図れるし、なによりこの人たちがつくったアイテムなら信頼できるな、と。だからこれまでの考えに変化があったというわけではないんです。

ーでは最後に、今シーズンの「シップス ジェットブルー」には「ジェンダーレス」というキーワードでスタイルを提案していますが、お客さまにはどんなところに注目してほしいですか?

田中

SHIPS JET BLUE 16FW シーズンルックより。

SHIPS JET BLUE 16FW シーズンルックより。

ー 

田中:このルックを見ればわかるんですが、女の子がダメージ感のあるスエットシャツを着ているんですよね。でもなぜだか汚い印象にならない。それは女性のもつ可憐さがスエットによって際立っているからだと思うんです。その絶妙なバランス感を感じてもらえればと。

ーそのバランス感を表現するのに、「ジェンダーレス」という言葉がうまくはまったわけですね。

田中:そうですね。型通りの着こなしをするのではなくて、あえて対極にあるものを取り入れて自分の個性を浮き出す。そういったスタイルをお客さまに楽しんで欲しいです。そういうアプローチで洋服を着るとすごくカッコいいんだぞ、ということを知ってもらえたらうれしいですね。

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