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FEATURE|ヴィンテージファニチャーと、あの頃のアメリカ。アクメが歩んだ35年を振り返る。

ヴィンテージファニチャーと、あの頃のアメリカ。アクメが歩んだ35年を振り返る。

THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE by ACME Furniture

ヴィンテージファニチャーと、あの頃のアメリカ。アクメが歩んだ35年を振り返る。

ヴィンテージファニチャーストアの草分け的存在「アクメファニチャー(ACME FURNITURE)」が来年創業35周年を迎えるにあたり、これまで買い付けてきた希少なヴィンテージファニチャーをまとめたアーカイブブック『THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE』を制作しました。掲載した写真は、アメリカ買い付け時に記録用としてバイヤー自らがフィルムカメラで撮ったもの。そのネガはいまもなお蓄積され、ストック数はじつに1万枚以上にも及ぶそうです。その中から厳選して500点ほど掲載したのが、今回のアーカイブブックの主な内容。そこで今回はディレクターを務める田中さんに、その制作秘話やアメリカンヴィンテージファニチャーの魅力などを色々と聞いてみました。

  • Photo_Junsuke Obi
  • Text_Shuhei Sato
  • Edit_Yosuke Ishii
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田中健一郎 / ACME FURNITURE ディレクター

2003年に「アクメファニチャー(ACME FURNITURE)」に入社。古くから在籍する古参スタッフのひとりで、 同社がベイクルーズグループに加わってからはディレクターを担当。今もアメリカへ買い付けに行っており、オリジナル家具の企画も担当する。

記録用に撮り溜めたヴィンテージファニチャーの写真たちから、アメリカの空気に触れる。

ー「アクメファニチャー」と言えば、日本でいち早くアメリカのヴィンテージファニチャーに目を付けた草分けとして知られますが、そもそもどのように始まったのでしょうか?

田中:創業した当時は、前オーナーの安田さんが日本の米軍基地に出入りして、そこで見つけた放出品を買い付けて売っていました。いわゆる米軍ハウスで使われていた家具も出ていたようで、それがきっかけで家具の取り扱いが始まり、数年後にはアメリカへ家具の買い付けに行くようになりました。

ーなるほど、米軍ハウスで見つけた家具がルーツのひとつなんですね。たしかに今の「アクメファニチャー」にも共通する匂いを感じます。

田中:うちが得意とするのは、ウッドを基調としたアメリカらしいトラディッショナルなディテールを踏襲しながらも直線的でモダンなデザインのものです。アメリカの中流階級の家庭でリアルに使われてきたものですね。いわゆる老舗ファニチャーメーカーにより製造された「ファクトリーブランド」と言いますか。

ー具体的に言うとどのようなファニチャーメーカーでしょうか?

田中:〈レーン(LANE)〉や〈ドレクセルヘリテイジ(DREXEL HERITAGE)〉、〈コナンボール(CONANT BALL)〉あたりが代表的ですね。あとは〈ポール・マッコブ(PAUL McCOBB) 〉も根強い人気です。個人的に好きなのは、〈ブラウンソルトマン(BROWN SALTMAN)〉というカリフォルニアにあった伝説的なメーカー。数はかなり少ないですが、ジョン・キールなどの有名デザイナーを起用していて、クオリティも非常に高いです。どのメーカーも当時のアメリカでは馴染み深いものでした。今回の本でも紹介していますよ。

ーヴィンテージファニチャーを買い付けるときの基準はありますか?

田中:基本的には1950~60年代のミッドセンチュリーに生まれたアメリカのものですね。ミッドセンチュリーと聞くと、イームズやジョージ・ネルソンといったデザイナーをイメージする人が多いかもしれませんが、先に挙げたファクトリーブランドも間違いなく、この時代のものがデザイン、クオリティともに最高だった時代なんです。

ーたしかにこの手のヴィンテージファニチャーが日本に入ってきて、定番として根付き、その発展形として1990年代に「ハーマンミラー」などのミッドセンチュリーモダン、そして2000年代にインダストリアルファニチャーやスカンジナビア系のものが盛り上がったという印象です。なぜこの時代が良いのでしょうか?

田中:この時代は第二次世界大戦に勝利したアメリカが空前の好景気を迎えます。家具に限らず車などもそうですが、プロダクトデザインをリードしていたのは確実にアメリカでした。

ー1950~60年代のアメリカは確かに輝いていましたよね。

田中:実際に1950~60年代につくられたものは非常に手間暇の掛かった意匠が多く、デザインも面白いんです。使っている木材のクオリティもいいし、贅沢な素材使いにより頑丈な構造で作られています。また、いまでは条約で規制のかかっているブラジリアンローズウッドといった希少な質の良い木材を使っているのも、この頃の家具の興味深いところです。その後ベトナム戦争に入ってからは景気が悪くなり、家具に関しても生産効率を求めて、デザインや素材のクオリティが落ちてしまった印象です。

ーよく「昔のアメリカものは良い」なんていう常套句がありますが、そういった理由があるんですね。

田中:例えば実際に当時のものと今のものを比べると、突き板の厚みですら全然違うんですよ。昔のものは厚い分、表面を削ることでキズがない状態に何度も戻すことができます。うちはリペア工房を常備しているのが自慢のひとつでもあるのですが、私たちの手に掛かれば、新品同様、またはそれ以上の付加価値ある家具に生まれ変わってくれます。ゴールデンエイジに作られたものは、しっかりとメンテナンスさえすれば、この先何世代も使い続けられるポテンシャルがあるんです。

ー今回、本を制作するにあたって、当時を振り返るいい機会になったのではないでしょうか。昔と今を比べてなにか変わったことはありますか?

田中:掲載している写真は、買い付けたものをデータベース用として撮ったものなんです。だから一つひとつに当時の価格や仕入れ値を記載しているんですが、今と比べて値段が全然違いますよね。それと、今となっては希少なもや珍しいものが当時はまだ買えていました。改めて振り返ってみましたが、いいヴィンテージファニチャーは年々減っていることを実感します。

ー写真を見ていると昔のことを思い出されるんじゃないですか。

田中:そうですね。それこそ初めてアメリカに行かせてもらった時は衝撃でしたね。そもそも買い付けというものをわかっていなくて。優雅にホテルで朝ごはんを食べてから、じっくりと商品を吟味するなんて勝手にイメージしていたのですが、実情はまったく違いました(苦笑)

ー実情はどうでしたか?

田中:とにかくハードでした。家具を大量に積むので、日本では運転できないような大きいトラックを借りて、長時間ひたすら運転し、荷物がいっぱいになったら倉庫に戻って荷下ろししてを延々と繰り返して。当然寝る場所は安いモーテルですしね。また、「アクメ」は伝統としてカーナビを使わず、ロードマップを使って地理を頭の中に叩き込め!という教訓があるので、アメリカを楽しむという余裕は少しもなかったですよ。

ー具体的にはどういったところを回るんですか?

田中:アメリカ中にあるスリフトショップやフリーマーケット、アンティークモールを片っ端から回ります。実際に西海岸、中央、東海岸で出てくるヴィンテージファニチャーの種類がまったく違うので、おもしろいんですよ。

ーそれは興味深いですね。実際にどのような違いがあるんですか?

田中:「アクメファニチャー」の買い付けは西海岸がメインで、ここでは1950~60年代のアメリカンデニッシュスタイルのファクトリーブランドものがよく出てきます。一方で東海岸はそれよりも旧い1930~40年代ものやインダストリアルアイテムが多く出てきますし、中部地方なんかはカントリー調の家具が多かったりします。

ーでは最後に、実際に本を作ってみた感想をお聞かせください。

田中:製作期間に半年以上の時間を費やしました。これまで買い付けてきた写真をじっくりと見ましたが、私も知らないものや未見のものが色々とあり、改めてヴィンテージファニチャーの奥深さを再認識しました。また、実際に「アクメファニチャー」のオリジナルで作っている家具のイメージソースになったものも多く、それを理解してもらえると、より家具のおもしろさをわかってもらえると思います。本の中には、当時買い付けてきた場所などの希少な写真も掲載していますので、本を通してリアルなアメリカの原風景を感じ取ってもらえると思います。これからも先輩バイヤーたちから受け継いだ伝統を守りつつ、この本のように新しい提案をしていきたいので、ご期待下さい!

アクメファニチャー35年の記録を一冊に綴じたアーカイブブック。

THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE ¥10,000+TAX

1983年に創業した「アクメファニチャー」の35周年を記念したアーカイブブック。歴代のバイヤーたちがアメリカでの買い付け時に記録用として撮り溜めてきた膨大な写真の中から、約500点を厳選して紹介しています。資料的価値も高いうえ、写真を通してアメリカの空気を感じることができる一冊に仕上がっています。カバーは3種類を用意。限定1000部。

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