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vol.3 ヴィンテージスニーカーはいまどうなっているのか?

Sneaker Journal

vol.3 ヴィンテージスニーカーはいまどうなっているのか?

スニーカーにまつわるさまざまな事象を取り上げ、フイナム的な視点で掘り下げていく連載企画『Sneaker Journal』。今回のテーマは「ヴィンテージスニーカー」。スニーカーは本来、運動するときの足元を支えるスポーツシューズとして開発されたものですが、希少価値が高い昔のものは骨董品のような扱いを受け、ものによってはプレミアム価格がつき、高値で取引されるものも少なくありません。そんなヴィンテージ市場におけるスニーカーの価値はいまどうなっているのでしょうか? ヴィンテージをはじめとするプレミアムスニーカーの品揃えにかけては国内トップクラスを誇る吉祥寺のスニーカーショップ『SKIT』代表の鎌本勝茂さんに、昨今のヴィンテージスニーカーを取り巻く状況を聞いてみました。

  • Phoo_Kazumasa Takeuchi(STUH)
  • Interview & Text_Issey Enomoto
  • Edit_Hiroshi Yamamoto
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鎌本勝茂

1978年生まれ。2001年、スニーカーショップ『SKIT』を吉祥寺にオープン。希少性の高いものからお値打ち品まで豊富なスニーカーを取り揃え、国内はもとより海外のスニーカーフリークからも注目されている。現在は吉祥寺のほか大阪、仙台、福岡と国内に計4店舗を展開。

いまが買い時!? ヴィンテージスニーカーの相場は低下傾向に。

ーまずは最近のヴィンテージスニーカー市場における相場感を教えてください。以前に比べて高くなったのか? あるいは安くなったのか?

鎌本:全体的には低下傾向にあると思います。たとえば、この「エアジョーダン1」の青黒のオリジナル。

鎌本:かつては10万円以上が当たり前でしたが、いまは5万円くらいが相場です。

続いてこちらは1984年にリリースされた「エアシップ」というバスケットボールシューズ。

鎌本:これはボストン・セルティックスの選手が履いていたもので、世の中に数足しか存在しない希少なカラーですが、相場としては3万円くらいです。

そしてこちらはナイキの「ミエカ」。1970年代の日本製のランニングシューズです。

鎌本:これはピーク時に7、8万円ほどしていましたが、現在は2万5000円くらいです。

ーたしかに、かつてに比べるとだいぶ下がった感がありますね。そういったヴィンテージスニーカーの市場価格って何で決まるんですか?

鎌本:かつては各ショップがそれぞれの判断で値段を設定したり釣り上げたりしていました。ゆえにお店によって値段がまちまちだったんです。かつての「エアマックス95」のブームのときなんかは、あるお店では15万円の値段がついているのに、あるお店では30万円の値段がついていたりして。

ー当時のスニーカーファンにとっては、同じスニーカーをいかに安く手に入れるかという楽しみがありました。

鎌本:そうですね。そしてヤフオクやebay の登場以降、ネットオークションにおける価格がヴィンテージスニーカーの相場に大きく影響するようになりました。さらに2010年あたりからはスマートフォンが普及し、それまでパソコンとデジカメがないとできなかったネットオークションが誰でも簡単にできるようになったことで、市場に対する影響力をますます強めていきました。現在もその傾向は続いています。

ー『SKIT』でも値付けする際はネットオークションや海外のマーケットを意識するんですか?

鎌本:いえ、うちではあくまでも自分たちの肌感覚で値付けをしています。たとえばジョーダンなんかは、店に出すよりもebayに出したほうが高く売れることもあるかもしれませんが、僕らとしては無駄に値段を吊り上げるよりも、本当に欲しい人の手元に届いてほしいと思っているので。

ー本当にヴィンテージスニーカーが好きで本当に手に入れたいと思っている人にとっては、価格が下がって手に入りやすくなったいまは、ある意味いい時代が来たということでしょうか。

鎌本:うん、そうかもしれませんね。

ヴィンテージスニーカーは儚い。履けないものは、価値がゼロに。

ースニーカーといえば、経年劣化や加水分解といった問題は避けては通れませんよね。壊れてしまったスニーカーに価値はあるのでしょうか?

鎌本:資料的価値はあるかもしれませんが、履けなくなってしまったものは、売買の対象としての価値はゼロです。たとえばこれは1995年に発売された「エアマックス95」のオリジナルなのですが……。

鎌本:エアが経年劣化で破損しているため、ヴィンテージとしての価値はゼロです。かつてのブームのときは30万円の値段がついたものなのですが。

あと、この「エアプレスト」も当時のオリジナルの新品で、見た目はきれいなのですが……、アウトソールが壊れてしまっているので、価値はゼロです。

ーそもそも、スニーカーにおけるヴィンテージとは、具体的にどのあたりの年代のものを指すのでしょうか? 僕の世代の感覚からすると、1970〜80年代のものがそうなのかな、と思うのですが。

鎌本:何をもってヴィンテージとするか、一概には言えませんが、1990年代〜2000年代でも捉え方次第ではヴィンテージであり、ものによっては2000年代のものでも経年劣化や加水分解などで壊れてしまうものも少なくありません。

ーそう考えると、儚いですね、スニーカーって。

鎌本:ちなみに、“スワップ”って知っていますか? “スワップ”とは、古いスニーカーのアッパーに新しいソールをくっつけて再生する手法のことで、最近海外でちょっとしたブームになっています。

ーそれもまたヴィンテージの新しい楽しみ方なんでしょうか?

鎌本:うーん、どうなんでしょう。個人的にはあまり良くないことだと思っています。日本でもだいぶ前に、エアフォース1のスウッシュの部分にルイヴィトンのモノグラムを貼るようなカスタムが流行りましたが、それって良く言えばカスタムですが、悪く言えばフェイク、偽物ですよね。スワップはそれと変わらないと僕は思っています。

ヴィンテージ好きにとって、復刻はアリ? ナシ?

ーかつてヴィンテージだったスニーカーが続々と復刻されていますが、その状況についてはどう思いますか?

鎌本:良い面も悪い面もあると思います。たとえば、ナイキの「アウトブレイク」というモデル。

鎌本:これは1987年頃に発売されたオリジナルで、特に古着好きな人からの人気が高く、3万円前後の高値で取り引きされていました。そして2007年に復刻されたのですが、あまり人気を得られず、投げ売り状態になってしまいました。と同時に、ヴィンテージの価格も暴落してしまったんです。その状況を見ると、復刻しないほうが価値があったのかな、と思ってしまいます。

ーファンとしては、好きなモデルが復刻されると、純粋にうれしいですけどね。

鎌本:それはもちろんそうだと思いますが、ブランドとしては復刻って諸刃の剣でもあり、復刻が熱望されていると見込んで復刻したものの、いざ市場に出してみたら、それほど売れなかったというケースは少なくないんです。

その代表例が、ユーイング。

鎌本:ユーイングはヴィンテージ市場でも人気で、復刻を待ち望む声が多かったのですが、いざ復刻されると、それほど人気にならず、ヴィンテージにおける価値も下がってしまいました。

また、1997年にリリースされたナイキの「エアシェイク インデストラクト」なんかも根強いファンの多いモデルで、近々復刻されると噂されていますが……。

鎌本:実際に復刻されたらどれほど売れるのかは未知数なのが正直なところです。

あと、ACGの名作と言われている「エアマーダ」も、復刻を熱望しているファンは多いと思いますが……。

鎌本:これも今のマーケットに受け入れられるかどうかは微妙なところですね。

ヴィンテージスニーカーシーンは、今後どこへ向かうのか?

ー最後にお聞きしますが、ヴィンテージスニーカーシーンは今後どういった方向に向かっていくと思いますか?

鎌本:マーケットとしては縮小していくと思います。世代によってスニーカーに対する価値観がまったく違っていて、僕らを含む30代、40代の世代はモノへのこだわりが強く、その背景や薀蓄を理解しようとしますが、10代、20代の若い世代はそういったこだわりがほとんどありません。人気があるから、流行っているからという理由で買って、飽きたらメルカリやインスタで売る。“広く浅く”の時代なんだなあと思います。

なかには、本当に好きで履きたいからではなく、SNSで見せびらかしたいから、「いいね」が欲しいから、という理由でスニーカーを買う人もいます。正直、いかがなものかなと思いますよ。もっとちゃんと考えてお金を使ったほうがいい。

そんな今の若い世代が30代、40代になっても、大きな傾向は変わらないでしょう。僕らショップとしては、そういった世代にスニーカーの楽しさをもっと知ってもらいたいと思っているんですけどね。スニーカーは深い知識があったほうが絶対に楽しいですから。

スニーカーショップSKIT 東京・吉祥寺店
東京都武蔵野市吉祥寺南町1-18-1 D-ASSET吉祥寺1F
0422-47-6671
www.k-skit.com
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