- ーみなさんの出会いはそれぞれいつごろのことなんですか?
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大瀧:ぼくと大島さんはすごく前ですね。それこそ、ぼくが「エディフィス」のバイヤーになる前からです。バイヤーになってもう5年経つんですが、個人的にすごく好きなブランドなんです、〈イッティビッティ〉は。
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大島:ぼくと池内くんも前職の時代から知り合ってます。それ以来ずっと付かず離れずの関係をキープしていますね。
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池内:そうですね。で、現在はこの「エディフィス」というショップでお互いのブランドが取り扱われるようになっています。〈イッティビッティ〉はバイヤーの方々の着用率がものすごく高いんですよ。〈アンドワンダー〉の展示会でも着ている人が多い。「それどこのなんですか?」って聞くと、「〈イッティビッティ〉です」と答えられることがよくあります。
左から「エディフィス」ストアMD兼バイヤーの大瀧北斗氏、〈イッティビッティ〉ディレクターの大島隆之氏、〈アンドワンダー〉デザイナーの池内啓太氏。
- ー〈サーティーン イッティビッティ エ エディフィス〉が生まれることになった経緯について教えてください。
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大瀧:昨年の秋に「エディフィス新宿店」が増床リニューアルを行った際に、大島さんに頼んで〈イッティビッティ〉の別注アイテムをつくらせてもらったんです。いまぼくが着ているセットアップがそのアイテムなんですけど。これがものすごく好評で、たくさんのお客さまに加えて社内でも評判がよくて。それで、次のステップに繋がるような新しいものをつくれませんか? と、大島さんにお願いをさせてもらったのがきっかけですね。
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大島:ぼく自身、新しいことに挑戦したいという気持ちがあったなかでのオファーだったので、大瀧さんのお話はすごくうれしい相談でした。ただ、スピードがものすごく早かったんですよ。そもそも「エディフィス」でのお取り扱いがスタートしたのが2016年の秋冬からだったので。
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大瀧:〈イッティビッティ〉のお取り扱いスタートと同時に別注アイテムをつくっていただいて、さらにその次のシーズンからはコラボレートラインまで立ち上げる。これは本当に異例のスピードなんです。
- ー池内さんはこのスピード感に関して、思うことはありますか?
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池内:すごく早いです(笑)。“別注”というのは、何シーズンか取引をしたなかでお互いのいいところを見極めた上で行われるケースが常なんです。“ライン”は、さらにそれよりも難易度が高くなります。別注よりもさらに一歩踏み込んだ理解が必要だからです。それを実現するには長い年月を要するし、よっぽどの信頼関係がないとなかなかできないことだと思いますね。
- ー裏を返せば、短期間の付き合いで別注アイテムやラインをつくるのはリスクが伴うという風にも受け取れます。大島さんはなぜ、極端に付き合いが短いなかでそれを実現させたんですか?
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大島:ひとつは先程も話したように、新しいことにチャレンジしたいという気持ちがあったから。あとは大瀧さんの熱意に押されたのが大きいですね。
- ー熱意?
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大瀧:単純にぼくが〈イッティビッティ〉の大ファンなんです。それこそ「エディフィス」でお取り扱いさせていただく前から個人的に買って着ていて。ずっと「『エディフィス』でもやりたいなぁ」って思いながら、もう何年も見続けていたんですが、お取り扱いできるタイミングがなかなか掴めなかったんです…。
- ーそれはどうしてなんですか?
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大瀧:準備が整ってなかったんです。〈イッティビッティ〉を置くための箱がぼくたちにはなくて。だからずっと大島さんには思わせぶりな態度を取っていたんです。
- ーそして昨年の秋に「エディフィス新宿店」がリニューアルしたことで、ようやく器ができあがったわけですね。
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大瀧:そうですね、満を持して、という感じです。ぼく自身すごく感慨深かったです。本当に大好きなブランドなので。
- ー大瀧さんは〈イッティビッティ〉のどんなところに魅力を感じるんですか?
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大瀧:「エディフィス」はオープンから長いあいだ、フレンチを軸としたベーシックなファッションを提案してきました。そういったコンセプトに〈イッティビッティ〉の服はすごく合うんですよね。デザイン自体はすごくスマートでシンプル。なのに、生地の色のトーンだったり、微妙なシルエットのバランスで独特のニュアンスに仕上げている。ぼくはその考え方に共感するんです。
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池内:人の視線を奪うフォルムのバランスだったり、気の利いた仕掛けがありますよね。キャラクターが強いわけではないんだけど、どこか気になるというか。
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大島:おふたりが話す通り、ぼくのなかでも服の色とフォルムは意識する部分ですね。レディースの服と比べて、メンズはデザインの幅が限られている。そのなかでいかにオリジナリティーを追求するとなると、やっぱりその2つはすごく重要なファクターになるので。
- ー一方で大島さんは、「エディフィス」のことをどんなショップと捉えていますか?
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大島:ぼく自身、じつはずっと「エディフィス」に通っていたんですよ。〈市松〉のアクセサリーを買ったりしたこともあったし、常にチェックするお店のひとつだったんです。トラッドでも、スポーツでも、ワークでも、どんなスタイルを提案するにしても、しっかりと“フレンチ”という串を通して提案されていて。そんなブレない姿勢が魅力的ですよね。長く取り扱われているブランドさんも多いですし、「ブランドさんといいお付き合いをされるお店なんだな」と感じていました。だからこそ、今回のコラボレートラインが実現できたというのもありますね。
- ーなるほど。〈サーティーン イッティビッティ エ エディフィス〉をやろうと決まったのはいつ頃のことなんですか?
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大瀧:昨年の秋口くらいですね。スタートから立ち上がるまでも非常にスピーディーで(笑)。
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大島:普通なら無理ですよ(笑)。ただ、大瀧さんの想いが伝わってきたので、それを無下にしたくなかった。形にするまでの期間は短いかもしれないですが、大瀧さんは長いこと〈イッティビッティ〉への気持ちを持ち続けていてくれたので。だから、なんとか形にできるようにお互いがんばりました。
- ーおふたりの作業はどんなことからスタートしたんですか?
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大瀧:ぼくがこのラインのコンセプトを考えて、それをベースにふたりでデザインをつくっていった感じですね。今回、「13(サーティーン)」という言葉がひとつの軸になっています。イメージしたのはパリで活躍する日本人クリエーターなんです。東京が23区あるように、パリも街が区切られていて、そのなかで1区と3区にぼくは注目しました。
- ーやはりフランスが軸になっているんですね。
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大瀧:そうです。1区はメゾンブランドのショップが立ち並ぶハイエンドなエリア。一方で3区は、パリで活躍する多くのアーティスたちが拠点にしていたりする感度の高いエリアなんです。この2つのエリアを行き来する日本人クリエーターが着る服。それが〈サーティーン イッティビッティ エ エディフィス〉なんです。実際に1区と3区は自転車で15分ほどの距離しか離れていなくて、ふたつのエリアを生活の拠点にする日本人をテーマにしたいなぁと、ふと思ったんですよ。
- ーなるほど。
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大瀧:あと、「1」というのは〈イッティビッティ〉の頭文字である「I」に似ているし、「3」という数字を裏返すと「エディフィス」の「É」とも取れる。普段とはちがう「エディフィス」という意味でも、この語呂合わせがなんかしっくりきて。それで「13」という名前をつけました。
〈13 ITTY-BITTY et ÉDIFICE〉コート 各¥37,800+TAX(エディフィス 新宿店)
- ー大島さんはこのコンセプトを聞いたとき、どんなことを感じましたか?
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大島:コンセプト自体は、いい意味で思いも寄らないものを考えてくれて、刺激される部分がありました。ただ、ぼくは普段からリアリティのあるモノづくりをしたいと考えているんですが、今回のコンセプトをリアルに落し込むとなったとき、どういった方向に向けてデザインを考えればいいのか、難しそうだなと感じたのも事実で。例えば、「パリらしさ」という言葉を頭のなかでイメージしたときに、ぼくと大瀧さんでは想像するものが違うと思うんです。それを完全一致させるのは無理だとしても、お互いの感覚を限りなく近いものにする必要性を感じました。
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池内:やっぱりそういう擦り合わせは大事ですよね。お互いの意見がバラバラだと、大島さんも大瀧さんも気持ちよく仕事ができない。当たり前ですが、そういった状況でできあがったものがいいものにるはずがないじゃないですか。単品の別注なら話は別かもしれないですけど、今回はラインでのコラボレートですから、その擦り合わせに結構時間がかかったんじゃないですか?
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大島:さっき話した通り、スタートが遅いぶん時間がタイトだったので(笑)、通常の何倍もお互い努力して話し合いをしていきました。それこそ週に何度も会って、LINEでも夜中までやり取りしたりしましたよね。
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大瀧:そうですね。言葉だけじゃなくて写真をお見せしたりして、イメージをどんどん具体化させていったんです。
〈13 ITTY-BITTY et ÉDIFICE〉ブルゾン 各¥37,800+TAX、パンツ 各¥21,600+TAX(エディフィス 新宿店)
- ーこういった作業は、普段の〈イッティビッティ〉のクリエーションのプロセスと重なる部分はあるんですか?
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大島:ありますね。ぼくらはまずやりたいことを決めてから、そこに向かって生地をつくったり、パターンを引いたりしているので、普段も今回もクリエーションのプロセスは似たような感じなんです。今回のアイテムは、〈イッティビッティ〉とおなじ生産背景でモノづくりを行っているので、筋肉の動かし方はほとんどおなじでした。
- ーちなみに、大島さんはどんなことを意識して服のデザインを考えていますか?
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大島:先程話したようにリアリティは大事にしています。それは、時代との適合性や機能の部分ですね。例えば、セットアップって一日着ているとシワがついてしまうアイテムが世の中には多いと思うんです。でも、ぼくがそれをつくるなら、シワがつかない素材でつくります。ニットひとつにしても、洗濯のケアがラクなものでつくったりとか。〈イッティビッティ〉のアイテムは、着る人の生活のなかでリアルなものにしたいんです。
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池内:そういった考えは大事ですよね。どれだけランウェイでかっこよく見えても、お店でどれだけクールに置かれていても、それはひとつの通過点でしかなくてゴールではない。やっぱり服は人が着るものだから、お客さんに袖を通してもらうことがいちばん大事だと思うんです。そこでいかに輝くかが重要で。ぼくらも服をつくるときは、そういったことを念頭に置きながら、実際に自分たちで着て試して改良を重ねてますね。
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大島:やっぱりそうですよね。〈アンドワンダー〉のアイテムはぼくもいくつか持っているんですが、着ていると実際に便利な機能があるんです。アウトドアというフィールドに向けてつくられているものだからこそ、なおさら実用性が大事なんだと感じるし、池内さんの服を着ると、自分の考えは間違ってないんだなと再確認できるんですよね。
- ー〈サーティーン イッティビッティ エ エディフィス〉も先程のコンセプトを踏まえた上で、そういったリアリティを考えているんですか?
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大瀧:そうですね。とくにこのコートなんかは、すごくリアルなんですよ。パリに住む人って雨が降っても傘をささずにブルゾンのフードをかぶるんです。だからこのアイテムも、フードを少し大きくつくってもらったりしていて。
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池内:ポケットが大きいのには理由があるんですか?
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大瀧:これは、手ぶらでもちょっとだけなら荷物が入るようにしているんです。タブレットなどの大きなガジェット類もスポッと入る大きさで。
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大島:あとはこのコートに限らず“軽さ”という部分にも注力してますね。春なので、やっぱり軽さって欲しいんですよ。それは見た目としても、着用感としても。このコートは内ポケットを省いているぶん、軽量化につながっているんです。だからフロントのポケットも大きくして、荷物を多く入れられるようにしています。
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大瀧:ポケットの絶妙な大きさが〈イッティビッティ〉らしいですよね。
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池内:フォルムもそうなんですが、とくに色使いが独特ですね。本当に〈イッティビッティ〉らしさがあるというか。ベージュのコートにしても、上品な色使いをしているから、カジュアルでもきれいにまとまっているように思います。縫製も大人っぽくてソリッドな方法が採用されていますし。
- ー色に関して、大島さんが思うことはあるんですか?
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大島:そうですね。いまお話されたベージュでも、いろんなトーンがあると思うんです。で、ぼくらが思う理想の色を実現するために、糸からこだわって生地を開発していて。手間はかかるんですけど、やりたいことをやるためにはそうするしかないというか。
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大瀧:そのトーンへのこだわりはやっぱりすごいですよ。本当に些細な部分かもしれないんですけど、見え方が全然変わりますから。だから、「この色持っていないから欲しいなぁ」って思うんです。実際、ぼくもそれで買ってますから(笑)。
- ー一緒にお店に置かれている〈アンドワンダー〉のリュックとも合いそうです。
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大瀧:実際にパリでこういうスタイルの人がいるんですよ。フード付きのブルゾンを着て、“ギア”とも呼べるようなバックパックを背負っている人が。それがファッション関係者に多くて、すごくスタイリッシュなんですよ。しかも、みなさん自転車に乗っている。パリではレンタルサイクルが普及していて、そういった街の空気感もここで表現したかったんです。
- ー一見すると明らかに〈イッティビッティ〉なんだけど、そういった編集も含めて、やっぱり“エディフィスらしさ”も感じるものになってますね。
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大島:スタートの段階で大瀧さんと密に話すことができたのがよかったんだと思います。アイテムをつくる上での目的や、理由をふたりでどんどんクリアにしていったので、ブレずに作業を進めることがきました。〈サーティーン イッティビッティ エ エディフィス〉は、〈イッティビッティ〉ではないし、「エディフィス」のオリジナルでもない。そこらへんの位置づけを、これからももっと明確にしていきたいと思っています。そうすれば、お客さんに伝えたいことがもっと増えていくと思うし、その伝達力も増してくると思うので。
- ーということは、今後も継続して〈サーティーン イッティビッティ エ エディフィス〉のアイテムが見れるということですね。
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大瀧:ぼくは次のシーズンもお願いしたいと思ってます。
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大島:こんどは早めに進行できるといいですね(笑)。