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SOPH.清永さんが福岡にプライベートショップを作った理由。

SOPH.清永さんが福岡にプライベートショップを作った理由。

〈ソフ(SOPH.)〉のデザイナーである清永浩文さんが新しいお店を福岡にオープン。「KIYONAGA&CO.」という名のそのお店は、白い木床、白い壁で、清潔感のある空間に仕上がり、店内には清永さんの趣味趣向を反映させた実験的なアプローチを行っている。20年近く〈ソフ〉を育ててきた清永さんが、自身の名を冠したお店をいまどうして福岡につくったのか? その気持ちを知るために、「KIYONAGA&CO.」を訪れた。

  • Photo_Kozi Hayakawa
  • Edit_Masaki Hirano
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「これが自分です」というお店をつくってもいいかもしれない。

ー店内に置かれている服を見ると、すごくシンプルというか、普段の清永さんのワードローブをそのまま置いた感じがしました。

清永:そうですね。ぼくは〈ソフ〉というブランドを20年近くやってきて、そちらではコレクションを展開しているんですけど、こっちのお店はまったく違うアプローチでやっています。厳密に言うといまは3つの品番しかありません。シャツとデニムとソックス。徐々に自分が着たい品番を増やして行こうかなと思ってます。ぼくはここ数年、ほとんど自分のスタイルが変わっていないんです(笑)。いつも似た服を着ている。そういう意味でも、ガラリとラインナップを変えるよりは、ゆっくりと自分のワードローブを育てるような感覚でアイテムを増やしていければと。今後人生で必要になってくるものを地道にね。

ー究極にシンプルなコンセプトですね。

清永:うん、そうですね。ぼくは今年で50歳になるんです。半世紀生きてきたなかで、「これが自分です」というようなお店をつくってみてもいいかなと思って。

ー構想はいつ頃からあったんですか?

清永:ここ数年、九州に来る機会が多かったんです。実家が大分にあったり、自分の親の地元も九州なので、その流れで福岡と東京の2拠点生活をしていました。具体的にいつ? と問われると難しいんだけど、ゆっくりと福岡に惹かれていって、そのなかでふと「お店をつくるのもいいかもしれない」と思ったんです。

ー例えば、東京でオープンするのはダメだったんですか?

清永:なんとなく福岡に縁を感じたから。それにいま、東京は飽和状態でしょう? 流れも速いし、その流れに飲まれたくないんですよね。情報量も多いし、いまはすごくお腹がいっぱい。自分のペースでゆっくりやるという意味でも、福岡ならやれそうな気がしました。今回、置いている商品などはメディアに出していないんですよね。なぜかと言うとお店に来て欲しいから。「このお店にはなにがあるんだろう?」みたいなワクワクする感じを思い出させたいというのもありました。

ーお店は福岡の赤坂という街にあります。偶然にも〈ソフ〉の直営店から徒歩30秒ほどの場所です。これは意図したことなんですか?

清永:偶然ですね。5坪程の小さな物件でもいいなぁというのが頭のなかにあって。そしたら去年の夏くらいかな? この物件をみつけて。〈ソフ〉にも近いし、いいかもしれないと思って借りました。実は、ここの箱を見つけてから「さぁ、なにをしよう?」と考えたんです。本当は2月に内装ができあがっていたんですが、すぐにオープンせずに4月1日にしました。それは単なる区切りの問題で、新年度が始まるし、自分にとっての半世紀の始まりでもある。そこから先程話したコンセプトに繋がっていくんです。

ーお店の名前を「KIYONAGA&CO.」としたのにはなにか特別な想いがあるんですか?

清永:実は〈ソフ〉を始めるときも、ブランド名は最後につけたんです。そのとき自分の名前を入れるのは、なんだか恥ずかしさがありました。でもブランドを約20年やってきて自信がついたというのと、自分もちょうど50歳になるということで「そろそろいいかもしれない」という気持ちになってきたのが理由ですね。

自ら“実験的”と語るポップアップ。

ー店内ではウェアを置く一方で、デザイナー家具などを展開する「ギャラリー サイン」とのポップアップも行っていますね。

清永:ぼくはアートや音楽が好きで、それとおなじようにして家具も好きなんです。自分の世界観を表現する上で、ビジュアル的にも体感的にも上手に伝えるにはサインと組んでやるのがいいかなと思いました。自分自身もサインで家具を買っていましたし。それで今回お声がけしたら快諾してくれました。サインは前に広島でエキシビジョンを実施したばかりで、今回その延長線上で、ということでうちのお店でやっています。

4月23日(日)まで、インド・チャンディガール都市計画のためにデザインされたル・コルビジエとピエール・ジャンヌレによる家具と、
写真家のホンマタカシさんが撮影したチャンディガールの写真などが展示販売されている。

ーなるほど。

清永:展示してあるもののコンセプトは広島開催時のものとほぼおなじ。中身はちょっと変えてもらっています。見せるだけでは意味がないから、買えるものを用意してもらっているんです。とはいえ、見るだけでも全然違うと思うので、お店に足を運んで欲しいと思いますけどね。

ーこういったポップアップは今後も継続して行う予定ですか?

清永:2、3ヶ月に一回くらいのペースでやりたいと思ってます。とはいえ切れ目もあると思うので、そこらへんは色々試しながら実験的にやろうかなと。

ープレスリリースにも「実験的」という言葉が書かれていました。

清永:長い間〈ソフ〉で服作りをしてきて、スタッフたちとの呼吸も阿吽なんですよね。それはそれでキープしつつ、一方こちらではまたイチからのスタートを切りたい。自分でお店に立とうかな、という気持ちもありますし。

ーなんとなくお店づくりを楽しんでいる感じですね。

清永:うん、それは間違いないです。半世紀生きてきて、やっぱり自分がやりたいことってこういうことなんだろうなっていう。もう一度原点に立ち返って、奮起しようという気持ちはありますね。

ーこの先にお店でやってみたいこと、ぼんやりと考えていることなどはありますか?

清永:さっきも話したように、ぼくは音楽やアートも好きだし、そういう人にこのスペースを使って欲しいという気持ちがありますね。例えば九州の人材を発掘して紹介するのも楽しそうだし。なんとなく育てたいという気持ちがあるんです。それは街であり、人でもあるんですけど。福岡に来て、街自体はすごく成熟しているように感じるんです。とはいえ、いい意味で足りないものもある。ぼくの好きなコンテンポラリーアートを置くギャラリーとかがないし美術館もない。だからその部分を自分が担って伝えていきたいという気持ちがあります。

東京ではなく、地方がいまおもしろい。

ー福岡の魅力はどんなところにあると思いますか?

清永:うーん…いろんな部分で魅力的だと思います。街が空港から近いし、ご飯もおいしい。街が成熟していますね。すごく住みやすい街で、転勤で福岡に来た人が帰りたくないと言うらしいんです。ファッション関係者も、出張を理由に何かと福岡に来たがる人がいるでしょう? それがすべてを物語っていると思いますね。

ーたしかに、福岡に対してポジティブなイメージを抱いている人は多いように感じます。むしろその反対の人に会ったことがないですね。

清永:東京よりも地方都市のほうが最近なんだかおもしろく感じるんです。いまって時代的にも、“個”に興味の対象が寄っているでしょう? インターネットの時代だから、どこにいても情報発信は可能で、東京が絶対ではないですよね。

ーなるほど。

清永:ファッションで言えば、大阪には〈THE UNION〉の牧田耕平くんがいるし、福岡には〈FUJITO〉の藤戸 剛くんがいる。アメリカだって、ニューヨーク、サンフランシスコ、ポートランド、ロサンゼルスなど、それぞれ個性があるように、今後日本もそういう多様な魅力を持つようになるんじゃないかと思いますね。

KIYONAGA&CO.(キヨナガアンドコー)

住所:福岡県福岡市中央区赤坂1-12-6
電話:092-791-5100
営業時間:12:00~20:00
www.instagram.com/kiyonaga_and_co/
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