書と音を携えて街へ出よう。
―社外活動も盛んに行われてますが、最近ではどんな事柄に関わっているのでしょう?
青野:この前は渋谷でイベントをしました。本を30冊選んで、それに合うCDをセレクトするというトークショーですね。それとは別の媒体で渋谷にあるスポット20カ所に対し、それに合う本とCDをチョイスするするという内容の誌面作りもしました。例えば109ならこの本と音で......みたいなアプローチです。かつて寺山修司が「書を捨てよ、町へ出よう」と言いましたが、今では「書と音を携えて街へ出よう」といったところでしょうか。街によって匂いや見合う音楽などといったアイデアは変わってきますから、それらを考える作業は叙情的というかワクワクするものでした。
―ビームス以外でのコネクションというのも、実に上手く機能しているんですね。
青野:もちろん、ビームスでも気付きの部分というものを喚起するように心がけています。現代アートを日常的なフィルターを通すことで、馴染みの薄い方にも接点を持ってもらえるようにしたいと。その一環が昨年から行っている「BEAMING ARTS」プロジェクトです。所謂アートのプレゼント的な活動ですね。第二弾となる今回は写真家の津田直さんの作品をフィーチャーします。ショッピングバッグや店舗のディスプレイなどを通してクリスマス気分を盛り上げつつ、アートに触れてもらえればと思います。会社や組織といっても所詮は個の集合体ですから、そこがエモーショナルに動けるかどうかは重要ですよね。ちょうど津田さんの作品は森がテーマになっているんですが、明確に森とは記してないんです。
―といいますと?
青野:樹が集まると林になります。それがもっと集合体となると森になるじゃないですか。人も同じではないかと思うんです。1つの作品から色々な受け取り方ができるのも芸術の奥深い部分ですしね。
―最後に読者へのメッセージをいただきたいと思います。
青野:そんなに偉そうなことを言えるもんじゃないんですが、楽しいことは自分の周囲に転がってますよと。それらを見失わないように、少し気を遣っておくと人生が楽しくなると思います。一足飛びに上手くいくことって実はそんなに多くないですから、個々のペースでハッピーになっていければいいですよね。あとは日常の一手間を面白がれると豊かになれると思います。例えばペットボトルの水をそのまま飲むのではなく、グラスに入れて氷を入れてといった行程を加えるのも悪くないんです。そこで新たな発見なんかも見出せるので、些細なことを変えていくと豊かになれていくのではないでしょうか。
店内のディスプレイと共に幅広く展開する「BEAMING ARTS」はショッピングバッグにも採用されています。
様々な分野に造詣が深いので、話を伺っていても感心することしきりでした。各方面へアンテナを広げられているのと、ご自身でも言われてたように社外活動の活発さがビームスへのフィードバックになっているのだと感じました。