vol.54

2011SS PARIS COLLECTION REPORT

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もっとも暑い夏のパリで行なわれた
2011年春夏パリ・メンズ・コレクションをレポート!

コレクション期間中は、連日30℃超え。冷房が完備されていない(通常なら必要ない気候なので)パリでは、れっきとした猛暑。建物の中は蒸し風呂状態......。そんな暑ささえ忘れさせてくれた迫力あるコレクションと展示会を紹介していきます。特に話題となったのは、発表の場をニューヨークからパリに移したトム ブラウン。さらに、デビュー15周年を迎えたラフ・シモンズにも一層注目が集まりました。また、毎回ユニークなプレゼンテーションを見せるメゾン マルタン マルジェラは、今回はどう見せたのか? 
Text_Akiko Jimbo

Maison Martin Margiela メゾン マルタン マルジェラ

 コレクション期間中、ランウェー以外にプレゼンテーション形式で披露するブランドもあります。メゾン マルタン マルジェラは、毎回趣向をこらしたユニークなプレゼンテーションが楽しみなブランドのひとつです。今回は、映画を投影するためのスクリーンを設置した室内がその舞台。暗い室内に着席してから、一体何が始まるのかと待っている間もわくわくして楽しいのです。そして始まったのは、パリの街角に白布を垂らして、モデルの撮影風景の上映。久しぶりのショートムービーかと思ったら、舞台のそでから映像と同じスタイリングの本物のモデルが登場。カメラマン(とおぼしき)の声に反応してポーズを取ったりします。室内にはフラッシュが光り、シャッター音が聞こえている。映像の中の風景とモデルが変わると、実際に現れるモデルも入れ替わる。フィルムと現実とが交錯した、ある意味3Dよりインパクトある、見事な演出です。次々と場所を変えて撮影をする風景が流れる中、強風が吹きつける川沿いで、必死に布を引っ張る白衣のスタッフの姿には(その場所じゃなくてもいいんじゃないかと思ったり)、思わず笑ってしまいました。洋服はというと、ラインやシェイプが独特なトップスは、マルジェラらしい構築的なデザイン。今回注目なのは、珍しいルーズシルエットのパンツ。メリハリあるスタイルがとても洗練された印象です。カラーは、グレー、ベージュ、カーキなど。より制限された感があり、大人なムードが色濃く出ています。
www.martinmargiela.co.jp


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ほとんどがフィルムと同じモデルが実際に登場したが、中にはヒゲを剃ってしまったモデルもいて、間違い探し的な要素もあって勝手に楽しみました。


Thom Browne トム ブラウン

 コレクション披露の場をニューヨークからパリへ移して初めてとなるランウェー。ニューヨークでも、その斬新な演出に話題が絶えなかった彼のショー。はたして、パリではどんなデビューを飾るのか? その注目のショーが行なわれたのは、フランス共産党本部の建物。以前、ドリスヴァンノッテンのショーで入ったことがありますが、円形のフォルムといい、グリーンの絨毯が敷かれた床は微妙に波打っていたりと(歩くと体が斜めになる)、不思議な設計をした異空間。『美しき青きドナウ』のBGMとともに出てきたのは、宇宙服を着たモデルたち! まるで『2001年宇宙の旅』の世界です。宇宙服を着たまま観客が待つ円形の会議場を行進した後、廊下に整列して一斉に宇宙服を脱いでいきます。そして新作コレクションに身を包んだモデルが現れてキャットウォーク、という演出。この不思議な建物の空気感との相乗効果で、一気にスペイシーな世界へと連れていかれました。すべてショーツのスーツ+ハイソックスのみで統一され、さまざまな柄やディテールをポップに散りばめた、トムらしさ満載のトラッド・スタイル。スピード感のあるキャットウォークもカッコいい演出なんですが、目で追いかけるのにひと苦労。ともあれ、さすがトム・ブラウン。五感で楽しむショーにおいては、右に出るものはなし! パリでもその存在は圧倒的でした。
www.thombrowne.com/


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©Dan and Corina Lecca
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整列したモデルたちが号令とともに宇宙服を脱ぎ、縦に首を振る合図で一人ずつキャットウォークの旅へ出る。一番右の無表情で「行け!」と合図を送る号令係は、トム・ブラウンのスタッフだとか。


Adam Kimmel アダム キメル

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 アダム・キメルのプレゼンテーションは、そのインスピレーション源が一目でわかる演出がおもしろい。今回は、ズバリ、「スヌープ・ドッグ」がテーマです。中庭に置かれたキャデラックのクラシックカーの周りを、ラッパースタイルのモデルたちが囲んでいます。大音量のヒップホップをBGMに、酒を飲んだり談笑したり、というLAの日常をそのまま持ち込んだような風景が出来上がっていました。モデルたちが着ている服をよく見ると、ヒップホップスタイルを象徴するようなアイテムながらも、コットンシルクやカシミヤなど高級素材がふんだんに使われています。気品をたたえたスタイルは、やっぱりアダム・キメルらしい。
www.adamkimmel.com/


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パリらしい中庭が、この晩LAのダウンタウンに一変! 昼のような明るさですが、すでに夜8時を回っています。 

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クラシックカーを囲むモデルたち。着用アイテムは全てアダム キメルの新作です。

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すぐ外の路地に横づけされたクラシックカー。アダム・キメルの友人がこれに乗って会場に駆けつけたらしい。展示物じゃなかった!

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